新作フルダイブ型MMORPGが完全放置ゲーだった件?!

黒野 夢融

新作フルダイブ型MMORPGが……

 2065年12月25日

 今日はなんと、世界初のフルダイブ型MMORPG「Dark Dreamダーク ドリームOnlineオンライン」(DDO)の発売日だ。

「わぁ、最悪だーこれ並ぶのかぁ。まじで予約しとけば良かったなぁ」

 予約するのを忘れた、オタクでゲーマーな俺はゲーム販売店に開店3時間前に行った。しかし既に数百人ほど並んでいた。もう完全に冬の朝早い時間なのでかなり寒く、凍え死にそうだったが、新年の目標「絶対DDOをプレイする!」という目標をたて、数ヶ月間お小遣いを使わずに貯め続けた俺はここで引くことができず、待つことにした。


 1時間ほど経ち雪が降ってきた。

「うぅ…寒い…今日雪降るって天気予報で言ってなかったのに…」

手の感覚がなくなり、耳が痛く、体は震えていた。それでも俺は待ち続けた。

「あと2時間……」


 さらに1時間経った。

しんしんと降っていた雪は強くなり、風も強くなってきた。もう正直帰りたかった。しかし俺は諦めずに待った。

「あと1時間……」


 またさらに30分が経った。

 風はビュービュー吹き荒れ、雪はまた更に強くなり、周りが見えなく、完全に吹雪だ。俺より後ろの方の人は諦め、去っていく人が多いのに、何故か俺より前の人は誰も去ってかない。俺の意識は吹雪の風に舞う雪と一緒に吹っ飛んで行きそうだった。しかし既に2時間半待ってる。俺は待ち続けた。

「あ…あと…30分……」


 ついに店が開店した。俺は待ちきった達成感で泣きそうだった。前の方の人からぞろぞろ店の中に入っていく……と思った。しばらく前の方へ進んでると、前の人にぶつかった。

「あ、すみません…」

俺は前の人に謝りつつ、前の方を見た。列の動きが止まってた。

「なっ、」

何故だ?なぜ止まっている?早く進めよ?おい!は!そういえば…

俺はポケットからスマホを取りだしゲーム販売店のホームページを見た。

 や、やはりか、やはり入場制限がある。

 俺は家に引きこもってゲームばっかやっていたので忘れてたが、今年の5月くらいから新型ウイルスの感染が拡大し、25年前の新型コロナウイルス以来の大流行が起きた。

 くそっ!なくなれよ新型ウイルス!

俺はまた、さらに待ち続けた。


 さっきとは違い、いつまで待てばいいのか分からず、俺のメンタルが砕けそうだった。

 うぅ……早く家に帰って温まりたい……だがDDOは諦めれない……

そんな調子で俺はさらに1時間ほど待った。


 やっと店に入れて俺はついにDDMを買うことができた。奇跡的に最後の1個を買い俺は泣きそうになった。

 「よっしゃー!手に入れたぞー!残念だな!俺より後ろの人達!」


 家に帰って早速DDMを開封した。そして俺はゲームの本体の電源を入れ、DDOのカセットを本体に読み込ませてゲームを始めた。

あまりの嬉しさに

「リン〇スタート!」

と30年以上前のラノベのセリフを言っていた。


まだサービス開始前だったので少し待った。


「えっと…名前は「OREおれ」と…職業か何にしよう」

ゲーム内での名前を入力した俺は操作するキャラの職業を選んだ。どうやら、素早さ重視の剣姫、体力重視のガーディアン、回復重視の僧侶、そして火力重視の戦士の中から選べるようだ。

「俺はボッチで守る人とかいないからガーディアンと僧侶はないとして…剣姫か戦士なんだよなぁ…剣姫で敵の攻撃をササッと回避しながら連撃しまくるのもいいし、戦士で強烈な一撃を敵に食らわせるのもかっこいいんだよなぁ…よし!決めた!」

 職業を決めたのでついにゲーム開始だ!!


国王の前にスポーンした。

「勇者よ」

 お、始まった!

「このデュランダル王国は今魔王軍に侵攻されつつある。どうか魔王を倒し、魔王軍の侵攻を止めてくれ!」

 フルダイブ型ってどう返事をするんだろう?普通に喋ればいいのかなぁ?とりあえず断って見よう…

!!」

 あれ?

わたくしが必ず、魔王を倒して見せます。」

 思ってもないことを言っちゃう…思ったことが話せない…チュートリアルかな?

『幼なじみのリリアの所に行こう。』

 うわぁ!ビビった。

急に目の前に文字が出てきた。そして、

 わぉ、身体が勝手に動く。

勝手に体が動き、リリア(?)のところまで歩いていく。

 歩き方まで教えてくれるチュートリアルか?


リリア(?)の所についた。

「あ、ORE君!!」

 ORE君って草

「魔王を倒しに行くの?いいなぁ……私も連れてって?」

 や、危険だからダメだろ……

「うん!いいよ!一緒に行こう!」

 また思ってもないことを話してしまった。

「やったー!」

『リリアがパーティーに入った。』

 勝手に話が進んでく…

『平原の怪獣を10体倒そう!』

 お、ついに戦闘か……

って思いながら身体が勝手に動いていくのであった。


 平原についた。平原には無駄に強そうなドラゴン型のモンスターがいた。

「ORE君、あれ倒せる?」

 倒せるでしょ…

「倒せるよ!」

  お、初めて思っているようなことが言えた。

と思ったら身体が勝手に動きモンスターに近づいてく。モンスターは攻撃態勢になり、火のブレスを浴びせてきた。

 お、おい、身体が言うことを聞いてくれない、やばい食らっちゃう。

俺は思いっきりドラゴンのブレスを浴びた。ゲーム内なので熱くはなかったが、HPは減っていた。少しキレていたら急に身体が勝手に動きモンスターに勢いよく近づいたと思ったらモンスターの頭が空を飛んでいた。

 そして他のモンスターの所へ行き、またモンスターの頭を飛ばした。


 正直俺は勝手に身体が動いた時から薄々気づいていた。気づいていたが認めたくはなかった。だが、もう、認めた。

 これは、このゲームは、俺が頑張って待ったこのゲームは…


完全放置ゲーだぁぁぁー!!

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