29人目 君は誰?…えっ暗殺者じゃないでしょ?私の旦那でしょ?


暗殺者…それは心を無にしなければ行えない仕事。


少しでも一緒にいた時間をすべて裏切り笑いあった仲間を殺す。


何を言われようとも心を鬼にし…


そんなことは何十回も行うと慣れてくるものだ。


俺はこの職業を始めてまだ2年…


俺が19の時に始めたから…今は21なった。


最初はばれたら…とは考えてはいたが今になってくるとばれてもいいような気がしてきた。


多分心の底ではこの仕事を止めたいのかもしれない…


まぁそんなことはさておき…さて…暗殺者とはなにか…


先ほどはつらいとか言ってしまったがやることは基本単純。


敵の国やアジトに入って情報を入手しそれを依頼者に送る。


もちろん依頼者からの依頼があるなら特定のものを殺すことなんてざらにある。


仕事によってはスパイにも近いがほとんどは殺しの依頼だ。


俺の今の仕事はとある王女様を暗殺してこい…ということだった。


目的はなにあれ依頼は依頼だ。


今回は普通に侵入して隠密したまま目標のお命を頂戴する…そういう作戦にしよう。


そして今は目標がいる城へと向かっている。


地味に遠いからその分心の余裕が増えるってもんだ。


この向かっている時間で意識を高める。


ここで俺がなぜこんな職業を始めたのか...


それはただ単にそれしか仕事がなかったからだ。


俺は頭が悪いわけではないが特段良いわけでもなくこんな学歴社会だから入れる職業も無く…っていうのもあるしそもそも稼ぐ量が多いのもある。


別に職業になにか所以があるわけでもなく…という感じだろうか。


「この仕事終わったらどこ行こうか…」


そんなことをつぶやきながら目的地に足を進める。



……


………


「あった…」


緑が豊かな土地にそびえたつ一つの大きい城。


闇の中に包まれながらもなお存在感を出し続けている。


とりあえずは侵入経路を探す。


もちろん真正面からなんてのはない。


入れそうな窓などが一番ジャストだ。


…え?


そこで俺は目を丸くした。


よく観察していると目標が見つけられたんだがその目標の部屋の窓が開いている。


「これは罠か?」


とりあえずいったん考える。


飛び道具の使用もありだが俺は苦手だし、万が一外した時の代償がそこそこある。


指紋をつけないようにはしているがもしかしたら指紋が付いていてばれる…ってこともざらにある。


だから今回は斬り捨て御免の覚悟で行こうと思う。


偶然目標も寝ているし…


…ということなんだがあの窓から入ろうか…


それ以外の窓は閉まっていて壊すと音で警戒されるだろう。


ならあそこから侵入するしかないと思う。


「さてっと…」


最終確認もすんで中に入ったその瞬間


がしんっ!


入った窓がシャッターみたいなので閉められた。


「う、嘘だろ?…っち罠だったのか…」


でもとりあえずは目標を仕留めようとした瞬間


「あら…あなた…来たのね…」


彼女は最初から起きていたかのような態度でこっちに向かってきた。


普通だったらこの瞬間で仕留められるが恐怖で体が動かなかった。


なんでか…それは


そいつは不気味な笑みを浮かべながらこっちに向かってきたからだ。


俺もこんな仕事をしていてここまで狂っていると直感で感じたことなんて一回もなかった。


「や、やめろ…」


彼女は何かをもってこっちに向かってくる。


3m…2m…1m…


距離が縮まっていく。


「ねぇ?…おかしいと思わなかった?…目標の私の部屋だけが開いていたなんて。」


やはり罠だったのか…わかっていたのに…


「このまま捕まえてもいいけど一杯お茶でもしない?」


「は?」


何言ってるんだ?こいつ…俺が何かもわかっておいてお茶?


「ほら…そこに座って。」


とりあえず座らないと叫ばれなんかされたときにはたまったもんじゃない。


「あ、あぁ…」


おとなしく座る。


「はい…お茶…」


そこに出されたのは明らかに高そうなお茶…紅茶ってやつか?


「…まぁ飲みましょ」


そして彼女は一口飲んだ。


俺も一口飲む。


ごくん…


喉元を過ぎた瞬間彼女はとんでもないカミングアウトをした。


「君に私を殺すように依頼したのはぁ」


「は?」


そう思った瞬間体が動かなく…頭がぼぉっとする。


「ねぇ…どうしてだと思う?」


彼女はこっちによると耳元で囁いてくる。


「それはね…君のことがだぁい好きだからだよ。」


内心は驚きでいっぱいだった。


「びっくりしたでしょ?…でも本当❤…なんでか…うーん昔君に助けられたときに一瞬で惚れちゃったのかな...」


助けた…?…そんな記憶は……あった。


スパイを始める前の年にとある女の子をゲス汚いおっさんども5人から救ったことがある。


「ま、まさか…」


そういうと


「ありがとね…お兄ちゃん」


そうだ…この声…この言い方…すべてがあの記憶と合致している…


優しい言い方…そしてこの美麗な顔…透き通るような声…


今も昔も変わってなかった。


「あの日から私はお兄ちゃんのことしか考えられなくなったんだよ…寝るときも職務をする時も…」


黙って聞いていつしかなった。


「だからお兄ちゃんを調べたの…どんな手段を選んでも。…お兄ちゃんが暗殺関係の仕事についている…裏社会の仕事についているって聞いた時はより一層興奮したなぁ…私のお兄ちゃんがそんなことしているなんて…でも今日でそれは終わらせよう…私がずっと養ってあげる…だからさ…私と一緒に過ごそうよ❤」


急すぎて何も言えない。


「沈黙は肯定ととればいいの?…でもその顔だとまだわかっていなさそうね…まぁ紅茶に仕掛けたお薬が効いているのもあるけど…」


彼女の言う通り紅茶に仕掛けられたもののせいで頭が回らなくなり何も考えられなくなっている。


「お兄ちゃんは私と一緒にいるべきなんだよ…私と結婚して一緒に暮らすべきなの…それがお兄ちゃんに課された運命…絶対に裏切れない定め…だから受け入れようよ!」


あぁ…そう…なの?


「あぁ…」


「ふふふ…もう何も考えられなくなってるね?…もう身体を楽にして私を受け入れて…」


彼女の声が身体にスゥっと入って行く。


彼女を受け入れよう。


なにも変なことなんてない。


今わかっているのは彼女と一緒に居なければならない…ということだけだった。


「あ…あぁ…」


そういうと


「やっと…やっとお兄ちゃんを手に入れた…長かった…あぁ…幸せ…一生放さないからね!!」


そうして抱き着かれる。


「はぁ…お兄ちゃんの匂い…しゅき…お兄ちゃんを抱きしめてると…こう…なんていうんだろう…幸せみたいなのが溜まっていって…もう…最高だよ…お兄ちゃん…一緒に寝よう…お兄ちゃんと一緒に寝るの待ってたんだぁ…」


彼女に誘われるがまま俺はベットに横になる。


「あぁ…お兄ちゃんの鼓動の音…お兄ちゃんの温もり…お兄ちゃんの香り…幸せ…」


彼女は顔を蕩けさせながらいった。


「一緒にいようね…私の旦那様❤」


______________________________________


「…ん?」


目が覚める。


そこはさっきいた部屋だった。


「んん…あ…おはよう…お兄ちゃん…あぁ間違えた…あなた❤」


「あぁ…おはよう」


「ねぇ…ご飯にする?…お風呂にする?…それとも…あ・た・し?」


彼女はとても可愛らしく聞いてきた。


言うべきは一つだろう。


「全部もらう!」


そうして俺たちの生活が始まった。


俺が彼女を殺そうとしていたなんて…なんて馬鹿な話だったと思うよ…全く。


「はぁ…お兄ちゃんはちゃぁんと堕ちてくれた…幸せだなぁ…」


______________________________________


来週の月曜が私立入試なんで多分日曜日は更新できないかもしれないです…


頑張り時なんで許してください…公立も終わったらその時は100人目投稿まで頑張りたいなと思います!


ではっ!

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