二人目 魔女の気まぐれ
ここはどこだろう?
昨日バイトから帰って晩飯を食べてそのまま寝て起きたら...とある森にいた。
夢だろうと思ってほっぺをつねっても辺りは何も変わらない。
変わったのはほっぺがひりひりするだけ。
辺りを散策すると見たことない植物や動物がたくさんいた。
ここは元居た場所からかなり離れているかそもそも地球ですらないところなのか...
とりあえず家を探してたくさん歩く。
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「なんだ?」
数十分歩くと小さくて古そうな家を見つけた。
「ごめんくださーい!誰かいませんかぁ~?」
戸をトントンとたたくと僕と年齢が近そうな少女が出た。
少女は何かしゃべっているが何を言っているのかわからない。
頑張ってわからない仕草をすると少女は杖を僕に向けて何かつぶやいた。
するとほわぁ...と体が光に包まれると同時に言っていることが分かるようになってきた。
「こんにちは...あなたは誰?ここの人ではないね。」
「こんにちは。なんかいろいろあって気づいたらここにいました。」
「いろいろという部分が気になるけどとりあえずここで話すのもなんだし中に入って。」
「ありがとうございます。」
「でもさっきの語源魔法は言葉が話せない子供向けに使う魔法だけどそこまでペラペラとしゃべれるものじゃないのよ?...でも一瞬でそこまでしゃべれるようになったね...謎だわ...」
「ぼ、僕もわからないけど...まぁコミュニケーションとれるならいいな...」
「コミュニケーション?...何それ?」
「言葉とかで相手にいいたいことが伝えれられる能力みたいな?...それをコミュニケーションっていうんだけど...そんなことはいいよ。ここはどこ?」
「えっと...ここはリーシャ村の外れだよ。」
「え、どこ?...」
思わず声に出てしまった。
「君もしかして異世界から来た感じ?」
「そうかもね...急なことで理解が追いつかないけど...」
「そっか...とりあえずは帰れるまではここにいなよ。」
「えっ...いいの?!」
「いいよ...私も一人だし...」
「ちなみにあなたは...?」
「あぁ...私はナーリャ。魔女さ。」
「魔女...すごい!!初めて見た!魔女なんておとぎ話だけだと思った!!」
「ほぉ?君の世界にも魔女なんているのかい?」
「見たことはないというかおとぎ話の世界でね?」
「なるほどねぇ...あ、そうだ君の名前はなんていうんだい?」
「伊藤
「これからずっとよろしくね!」
「あ、そうだリューヤ...疲れてるだろうしお風呂入ってきなよ!」
「いいの?!...ならお借りしようかな...」
「いいよぉ...家族みたいなものだし...」
「なんか申し訳ないねぇ...」
「いいよいいよ!ほら入ってきな!!」
「うーす」
ナーリャが悪の魔女の笑みを浮かべていることに僕は気づけなかった。
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湯舟に入る
ゆずに似た柑橘系の果物が湯舟に浮かんでいてとてもさわやかなにおいがしていた。
「ふぁぁぁぁあ...」
情けない声が出てしまった。
でもいろいろあったせいで疲れていた体にはとても沁みた。
「おーい...君の着替え置いといたよ~」
「えっ?着替えなんてあるの?」
「お兄ちゃんのでいい?」
「あ、ありがたい...」
「じゃあごゆっくりぃ...」
足音が聞こえなくなっていく。
「ふぅあぁぁぁ...気持ちいなあ...この湯舟...」
そうして2~3分...このままいるとのぼせそうだから出ることにした。
「気持ちよかったぁ...これに着替えるね...おぉなんか体にぴったりだ...てか着心地いいなこれ...」
とりあえずおいてあったものを着てさっきいたところに戻る。
「お風呂ありがとぉ~」
「ん...ってお兄ちゃんに似てるなぁ...」
「そうなの?」
「うん...事故で死んじゃったけどね...」
「そっか...ごめんね...」
「大丈夫。君がいるからね!」
「それってどういうこと?」
彼女は何か決心した表情になると
「君がここに来た理由は私があの世界から連れてきたんだ!!」
「えっ?」
信じられないことを笑顔で言うナーリャ。
「ど、どういうこと?」
「私魔女の中でトップクラスに強くてさ...しかも特別で異世界の様子を覗いて一年に一回気になった人を連れてくることができるんだ。」
「えっ...え?......嘘だよね?」
「なんで嘘つくの?...本当だよ!」
「え...んな...え?...な、なんで呼んできたの?」
「それは君が私の兄にとてもそっくりで...異世界でも人に親切そうだったから...初めて君を見てからあなたのことばかりしか考えられなくて...君が欲しくなっちゃって...あっ!言っておくけどもうここから二度と出れないからね!」
「えっ...な、んで?」
「あらあら...泣きそうになってる...いくらうれしいからって泣かなくても...」
話は聞かないまま震える体のまま扉の方へ走った。
「あ、開かない...なんで!?」
「一応のために鍵はかけといたけど...はぁ......逃げようとしたね?」
さっきより声が冷たく鋭くなっていた。
「い、いや...いやぁ...」
「...君は私を受け入れてくれないの?」
「......」
無言で首をゆっくり横に振る。
「嫌だけど...はぁ...使うしかないのか...自分から惚れてほしかったな...」
彼女は杖を僕の前に向ける。
「大丈夫だよ❤...君には何にも危害は加えない...なんなら君に大切なことを教えてあげるよ!優しいね私!!」
「い、や...いや...やめて...やだ...」
「今の私にそんな可愛い声で言ってももう無駄なのだよ!」
そういって何かを唱えると体の周りに青色の光が現れるとどんどん鼻や耳から体の中に入って行く。
「うぁあぁがぁぁぁぁ...」
怖いけど気持ちがいい...光が入って行けばいくほど考えることができなくなっていく。
「あらあら...目がとろーんってなってそんな気持ちい?」
「あ...うあぁ...」
頭が塗り替えられていく感覚。
そうして意識が失われていく。
僕は今何がしたくて目の前にいる彼女はどういう関係なのだろうか...さっきまでわかっていたことが分からなくなっていく。
____________
しばらくして
「はい...目を開けて。」
そう囁かれて目を開ける。
さっきまでの記憶は曖昧になっている...でも今僕が分かるのは。
「ナーリャ...僕...は...」
「僕は?」
「ナーリャのものでナーリャのためなら何でもできてナーリャが大好きで愛していてもうナーリャ以外の女なんて考えられないほど愛していて...ナーリャのことを考えてると体がポカポカして気持ちよくて、ナーリャがいない空間なんて僕のいる意味なんてないしナーリャのそばにいるのは僕で僕だけがナーリャの横にいて...」
ずっとナーリャへの愛の言葉を言う。
「あはっ...堕ちた...かわいいなぁ...リューヤ...ずっとそばにいてね❤」
「ナーリャ!!ぎゅー!!」
そういってナーリャに抱き着く。
「よしよし...りゅーやは可愛いねぇ...」
「ナーリャも可愛いよ!!僕のお姫様だもん!」
今になって思う。
ナーリャに教えてもらったことは全部正しいのだと。
もし僕がナーリャ以外の人と出会っていたら...もう考えるだけで恐ろしい...これからずっとナーリャと一緒に生きよう。
そう決心することに何か不思議なことはあるのだろうか?
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