一人目の結末。
あの日から3~4年経った現在。
僕は急に思い出した。
自分がされた苦痛。
それをしてきた人。
そんな人を神様と崇める壊れた僕。
目が覚めた気がした。
《何をしていたのだろう?》
《なぜ僕はあいつに誓っていたのだろう?》
そんな疑問が頭を駆け巡る。
《これから僕に自由はないのか?》
そんな恐怖が体を支配する。
《でも早く逃げないと...》
《自分はあんな人といたら自分が自分じゃなくなる...》
自分というものがどんどん消えていく。
そんなことは避けなければならない。
そこで考え付いたのは“逃亡”だった。
3~4年間この家(豪邸)に住んできて逃げる方法や家の構造は大体覚えた。
だからいつでも出れるのだ...しかしここには何人かあいつの手下もいる。
しかしそいつらは夜中にはいなくなるのだ。
そこを狙えば完璧に逃げられるであろう。
とりあえず今日の夜までに大体は決めておこう。
今日に逃げよう...そうしないともう自分を見失ってしまうのかもしれない。
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彼の顔を見たとき、私はぞくぞくしてしまった。
やっと自我を思い出してくれた。
催眠で思い出せなかったらどうしようかと思ったが彼の顔を見たとき彼はもう逃げる気でいるのだろう。
彼にはここの玄関や私の執事がいつ帰るのかも教えた。
狙うとしたら深夜帯だろう。
はぁ...ぞくぞくする...また
どう洗脳しようか...そんなことで頭がいっぱいになった。
あの洗脳した後の顔や仕草がもうたまらないのである。
好きな人が従順なペットみたいになる瞬間がもう気持ちよすぎるのだ。
恋愛シュミレーションゲームでは絶対に味わえない感覚。
洗脳することの楽しさを一度味わってしまったらもう告白なんていらない。
壊してズタボロにして拾う。
...そんなことは今はいい。
どう洗脳するか...
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もう夜だ...考えた結果とりあえず逃げたら自分の家を目指すことに決めた。
ここがどこだかわからないがやつとは同じ学校だから何とか帰れるだろう。
彼女は俺の横で寝ている...音を立てずに寝返りを打つように起きてそのまま部屋を後にした。
廊下に出たが相変わらずここの廊下は長いな...
歩き疲れるよ全く...
玄関に向かって歩いていく。
だんだん扉が見えてきたとき...一人の人影があった。
「えっ...」
そこには気味の悪い笑みを浮かべたやつがいた。
「嘘...だ...」
寝てなかったのか?!
焦る自分を落ち着かせた。
女一人が男を抑えれるわけがない。
そう思ったとき。
「堕ちる」
「ぁぁ...」
あ、あれ?体が動かない...しかも自分の意識がどんどん離れていく。
でもうっすらと言葉だけが聞こえてくる。
「あなたは自分の気持ちに素直になる。」
頭の横で鳴った指の音で目が覚める。
「お前は不気味な奴だった...もう二度と来ない。じゃあな」
そういって足を動かそうとする。
「えっ?」
動かない。
体が石化したかのように動かない。
「嘘...だろ...?......どうして動かない!...お前...何か俺にしたのか?」
そうにらみつけると奴は言った。
「私はただ『自分の気持ちに従順になる』催眠をかけただけ...それ以外は何もしてないわ。」
嘘だ...ということは自分はここから出たくないということか?
ありえない...ありえない...
「あら?...出ないの?ここには私一人だけ。出ようと思ったら出れるわよ?」
「ぐっ...」
足が地面にくっついて離れない。
そうすると彼女はこっちに近づいてきた
「い、いや...く...くるな...」
言ってもどんどん近づいてくる50センチ...40センチ...30センチ...20センチ...10センチ...
もう恵理は顔がすれすれでお互いの息が当たるところまで近づいた。
「あぁ足を動かせない自分がみじめだねぇ...出ようと思ったら出れるのにねえ...なんてみじめなんだ...だから君は孤独で無力でみじめで雑魚くて誰からも必要とされないごみなんだよ?」
「あ...いやぁ......あっ...うっ...や、やだっ...うぅ...」
「やだ?...君がどんなに嫌でもごみには変わらないよ?誰からも必要とされない...そんな存在。そんな君に生きる意味なんてあるのかな?」
「......」
「あぁ...放心状態だと話し進まないな...堕ちる」
また意識が遠くなる...でもこの感覚が心地よかった。
「あなたは私の話を聞いててどんなにつらくてもずっと意識を保ち続ける」
パチンっ...
そんな音の中で現実に戻された...つらい。
「ごみ。どうしてそこまで生きれるの?」
「...」
もうだめだ...つらい...
「何もない君に生きる意味なんてあるの?」
「.........」
「きみにh「ああぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああぁあぁああぁ」
もうだめだ...しゃがんで言葉を聞かないように叫ぶ。
「これで完璧に壊れたね...ここだけでももうぞくぞくする...」
「あぁあぁぁ...」
「疲れちゃったか...でもこれで最後だから頑張って...」
楽になりたい...
「でもね...そんな君にも生きる意味を与えてあげる。」
「えっ...?」
「私と一緒にいよう。いくら周りから必要とされてなくても私がいるよ。あなたの横にずっといる。一生離れないから。」
「ほ...ほんと?」
「本当だよ...」
そういって恵理は僕に抱き着いた。
なんだろう...この幸福感は...体の中からぽかぽかして気持ちいい。
もう放したくない。
恵理が僕の生きる意味であり僕は彼女のためにあるのかもしれない...
「うぅ...ぐすっ...」
涙が出てきた...
彼女は天使のような笑顔で微笑むと耳元で囁いた。
「もう離れないよね?ダーリン?」
「う...ん」
そこから僕は二度と恵理から離れないと決意した。
「ふふっ...堕ちた❤」
何と言っているのかわからなかったが僕はそのまま安心感で彼女にもたれこんだまま寝た。
彼の体と彼女の体には透明で細くて強い糸が絡まった。
その糸はもう二度とほずれてバラバラになることはなかった。
Fin~
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