良い子

良い子を辞めた。良い子で居続けるのは難しいことだったけど、良い子をやめるのは簡単だった。今までやりたかったこと全部やればいい。学校をさぼって遊びに行ったり。怒られるようなことをしてみたり。そんなことを全部したい。



「最近鈴音学校真面目に来てないじゃん、!!どうしたの?なんかあった?」

「別になんもないよーwwそーゆー気分なだけ!」

そう言う鈴音の制服の袖から見える細く白い腕には無数の赤い傷がある。

「ほんとにーw?」

他愛のない話をしながら私の視線は鈴音の腕に行ってしまう。

少し前まではリストカットなんてなかったのに、、どうしてだろう。

何も言わないほうがいいのかな、、でも。

「ねぇ鈴音。ちょっと来て、」

「え?急に何、?」

戸惑う鈴音を連れて人気のない階段に行く。

「最近さ、元気ないよね。腕も、、リストカット、、だよね。それ。」

「大丈夫だよ、私は元気。」

「そんなわけない!だって、学校だって毎日来ないし、、腕だって傷だらけじゃん!前はそんなんじゃなかったのに。なんかあったんでしょ??ねぇ、鈴音。」

「なんもないって、!元気だから、もうほっといて」

「ちょ、鈴音!!待ってよ!」

行っちゃった..。鈴音、大丈夫かな。


はぁ、でも私が言えることじゃない、か。

私の腕にもあの傷はある。もう今はやっていないけど、昔の傷が消えずに残っている。鈴音がリストカットをするぐらい辛かったなんて知らなかった。

でもなんで?成績はいいはずだし、、友達も、私とか他にもたくさんいる。家庭環境だって悪いなんて話は聞かない。理由がない。

まさか、、心配してほしいだけ?いや鈴音がそんなことするわけない。

でももしほんとに心配してほしいだけだったら?

だとしたら半袖を着て隠していないことにも説明がつく。

ほんとに辛くて苦しくてリストカットしてる人だっているのに。ひどい。

鈴音に言ってやらなきゃ。辛くもないのに、リストカットなんかして意味わかんないよって。ほんとに辛い人に申し訳ないと思わないのって。





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優等生の私と劣等生の私 琥珀糖の欠片 @miffy1225

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