No.18:豪華リゾートホテル


 全員食べ物を取って席に戻って食べ始める。

 皆和洋中、満遍なく取っている。

 ひなのお皿はてんこ盛りだ。

 ただ葵のお皿だけ、趣向が違った。


「葵はアジアンフードが好きなのか?」


 俺は聞いてみた。

 葵の皿には、パッタイ、ナシゴレン、サテーが乗っていたからだ。


「うん。辛いもの好きやし、なかなか食べる機会もないからね」


 気がつけば俺たちは夢中で食べていた。

 お腹が空いていたからな。

 さすがは一流ホテル、どれもこれも本当に美味しい。


「浩介君、デザートコーナー見た?」

 雪奈はすでにデザートが気になるようだ。


「ああ、なんかいろいろあったな」


「ひとくちケーキが何種類もあるの。もう目移りしちゃって」


「ひなはマンゴプリン! あれ、絶対美味しいヤツだよ!」


「その横にあったのって、何でしたか? プリンですかね?」


「パンナコッタやないかな?」


 やはり女性陣は甘いものは別腹なのか。

 聞いてるだけで胸やけがしそうだが。


 ようやく食べ終えて腹がおさまった。

 俺たちはデザートとコーヒー・紅茶を飲みながら、今日の予定をどうするか話している。


「お天気もいいし風もないから、シーカヤックとかどう?」

 葵は提案する。


「あ、あたしやりたいです!」

 なっちゃんは、すかさず乗っかった。


「でも……日に焼けないかな? 水もまだ冷たそうだし」

 雪奈はちょっと尻込みしている。


 確かに沖縄とはいえ、3月の海の水は冷たいだろう。


「多分大丈夫や。長袖のウエットスーツ貸してくれるから。日焼けも、帽子かぶって日焼け止めクリームを塗れば、大丈夫やないかな」


 なるほど、それなら大丈夫そうだ。

 話はまとまった。

 1時間後にロビーで集合ということになった。


 俺たちは全員エレベーターに乗った。

 部屋は8階のフロアに、3部屋続きでとってくれたようだ。

 各自部屋の中へ入っていった。


「うわ、広いな」

 俺の第一声だ。


 多分俺のマンションのリビングより広いぞ。

 そこに広いベッドが2つ。

 窓際に籐の椅子とガラステーブルが置いてある。

 そのテーブルの上には、ウエルカムフルーツまで置いてあった。

 これ、VIP待遇じゃないのか?


「浩介、見てよ!」


 窓際に立っていた慎吾が声を上げる。

 窓からの景色が素晴らしい。

 エメラルドグリーンの色を湛えた海。

 素晴らしいシービューだ。


「海側の部屋でしかも8階って……これ普通に泊まったら、いくらするんだろうな?」


「とりあえず高校生のグループ旅行で泊まれる金額じゃないと思うよ」


 俺たちは改めて葵に感謝した。


 部屋で少しくつろいでから、俺たちは1階に降りた。

 しばらくすると女性陣が降りてきた。

 全員水着の上から、パーカーや長袖シャツを羽織っている。


 俺達はシーカヤックのブースまで歩いて行った。

 全員紺色のウエットスーツを着て、シーカヤックをレンタルする。

 カヤックは1人乗りと2人乗りがあったが、結局2人乗りを3台レンタルした。


 ビーチで簡単なパドリングのレクチャーを受けて、俺達はカヤックに乗り込んだ。

 俺と雪奈、慎吾と葵、ひなとなっちゃんのペアだ。


 幸いプライベートビーチは完全な入り江で、波はほとんどない。

 風もなく、完璧なコンディションだ。


 最初はなかなかパドリングが合わなくて、俺と雪奈のパドルがぶつかったりした。

 それでも声を掛け合ってやっていくうちに、すぐに上手く進むようになった。


「気持ちいいねー!」


 後ろから雪奈のはしゃいだ声が聞こえる。


「そうだな。最高だ」


 首を後ろに向けると、ポニーテールでキャップをかぶった雪奈の笑顔がはじけた。

 お天気がいいので、海の色が本当に綺麗だ。

 淡いミルキーなエメラルドグリーン。

 俺の好きな色だ。


 他の連中も、上手にカヤックを乗りこなしていた。

 驚いたのは、ひなとなっちゃんのペアだ。

 ひなはツインテールを揺らしながら、グングンと進んでいく。

 なっちゃんと息もぴったりで、かなりのスピードだ。

 慎吾と葵のチームもゆっくりだけど、息が合っている。


 小一時間ほど楽しんだだろうか。

 俺たちはビーチに戻って、カヤックを返却した。


「楽しかったね」

「海めっちゃ綺麗やったわー」

「わたしカヤック初めてだったんです」

「ひな、お腹すいたー」


 俺たちは葵の先導についていった。

 驚いたことに、その先には室内プールがあった。

 これなら冬の間でも入ることができる。


 シャワーで砂をしっかり落として、皆プールに飛び込んだ。

 プールの水の温度も冷たすぎず、ちょうどいい。


 少し水遊びをしたあと、俺たちはプールを出た。

 プールサイドにはバーがあって、そこでタオルを貸してもらえる。

 全員タオルで体を拭いた後、バーで飲み物を注文した。

 リストバンドを見せれば、全て無料らしい。


「水着どう? 可愛い?」


 雪奈が俺の前に立って、聞いてくる。

 雪奈はあのウォーターパラダイスでのポロリ事件のあと、水着を新調した。

 今着ているのは、俺と一緒に買いに行った水着だ。


 紺色のビキニで、縁取りとヒモの部分が白くなっている。

 前の水着より、布の面積は大きくなった。

 それでも雪奈の豊かな胸を覆うには、心もとないぐらいだ。

 胸元の谷間をしっかりと形成している。

 シンプルゆえに、結構エロかったりするのだ。


 しかしこの水着を買いに行ったときは、俺もちょっと戸惑った。

 試着室で水着を何着も着替えては、いちいち俺に見せるのだ。

 それも全てビキニだ。

 眼福ではあるが、さすがに恥ずかしかった。


「可愛いよ。似合ってる」


「ちゃんと見てよぉ……」


「顔赤くして言わなくてもいいだろ」


「恥ずかしいけど……見て欲しいんだもん」


 頬を紅潮させた雪奈を、俺は抱きしめたかった。


 葵とひなは、ウォーターパラダイスの時と同じ水着。

 相変わらずひなの胸は、暴力的だった。


 なっちゃんはグレーの生地に白のドットが入ったおとなしめのワンピース。

 胸元のフリルが可愛らしい。

 なっちゃん自身が細身で、胸元もまだまだ発展途上だ。


「なっちゃん、大きいばっかりが正義やないで」


「葵さん、私だって2年後には巨大化する予定ですから」


「なんやて? この裏切者!」


 葵がなっちゃんにヘッドロックをかけている。

 まあ2年後を楽しみにしておこう。

 2年後……俺も雪奈も大学生なんだな。

 俺たちはどんなふうになっているんだろう。


 注文していた飲み物を受け取る。

 このバーではノンアルコールのカクテルが注文できる。

 葵にそう教えてもらった女性陣は、色とりどりのカクテルを手にしていた。

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