No.11:「うっそでーーす」


「と、とにかく私の部屋の見学はこれで終わりです。じゃあ、あとはお二人でお姉ちゃんの部屋へどーぞ!」


 俺と雪奈は、なっちゃんの部屋から追い出されてしまった。


「じゃあ次は私の部屋ね」


 俺は雪奈に隣の部屋へ案内された。


 雪奈の部屋は、白と淡いピンクをベースにした清楚な空間だった。

 ふわりと少しだけ甘い匂いがする。

 雪奈の匂いだ。


 本棚には、小説と漫画の本が少し。

 勉強机の上は、綺麗に片付いている。

 女の子らしいというよりは、どちらかというとシンプルな部屋だ。


「思ったより、すっきりした部屋だな」


「うん、そうだね。もっと人形とか、いっぱい置いてるかと思った?」


「ああ、そんなイメージだった」


「前はあったんだけどね。高校に入ってから部屋をスッキリさせたの」


 もしかしたら高校に入ったとき、変わりたいという願望がそうさせたのかもしれない。


 俺は立ったまま、雪奈の部屋をゆっくり見渡していた。

 すると雪奈が俺の正面へ回り込んだ。

 そしておでこを俺の胸につけて、両手を俺の首の後ろに回した。

 俺も両手を雪奈の背中に回す。

 時間にして15秒ぐらい。

 俺たちはそのまま抱き合っていた。


「ずっとこうしたかった……」


 雪奈は掠れるような声で呟く。


「ナツに手だしたら、ダメなんだからね」


「しないよ、そんなこと」


「ひなも、ダメだからね」


「なんでひながでてくるんだ?」


「他の女の子も、ダメだよ」


「雪奈」


 俺は雪奈を体から少し話して、その潤んだ瞳を見つめる。


「言ったろ? 俺は雪奈一筋だって」


「浩介君……」


 雪奈はそのまま背伸びをして、目を閉じた。

 本当に愛おしいと思った。

 俺はその唇に自分の唇を重ねる。


 キスがどんどん深くなる。

 俺は雪奈の胸を弄っていた。

 雪奈は拒否しなかったが、声をこらえるのに必死の様子だ。

 隣の部屋になっちゃんがいる。

 それでも2人の吐息が荒くなる。


 俺の手が雪奈の胸、背中、下半身に伸びそうになったその瞬間……


「ユキ! ナツ! コーヒーとケーキ食べに降りてきて!」


 1階から美咲さんの声がした。

 俺たちの唇が離れた。

 二人とも肩で息をしていた。


「ちから……入んない……」

 雪奈が俺の首にしがみついたまま呟いた。


「でも行かなきゃな」


 2人は離れて、着衣の乱れを直してから部屋を出た。

 部屋を出たところで、なっちゃんと出くわした。


 なっちゃんは俺の顔をまじまじと見た。


「浩介さん浩介さん、色つきリップ、ついてますよ」

 なっちゃんは自分の唇の横を指差して、小さな声でそう言った。


「え?」

 俺は焦って、手の甲で自分の唇を拭う。


「うっそでーーす」

 なっちゃんはぺろっと舌を出すと、そのまま踵を返して階段を下りていく。


「もう! ナツ!」

 雪奈は声を上げて、なっちゃんを追っかけた。


「……やられた……」


 実はなっちゃん、なにげに小悪魔なのか?

 JC、侮れないな。

 いや、もうJKか。

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