No.04:春休みの計画


 翌日の昼休み。

 俺達5人は相変わらず教室で机を寄せ合って、昼食をとっていた。

 学期末試験も終わり、後は春休みを待つだけだ。


 学期末試験は、俺はいつも通り学年トップの定位置。

 雪奈と竜泉寺、それに慎吾もまた少し順位を上げたそうだ。


 目覚ましい進歩を遂げていたのが、ひなだ。

 なんと全教科、平均点以上だったらしい。

 そういえばひなは、かなり目の色を変えて勉強していたな。

 いい大学に行きたいという意欲が、強くなってきた証だろう。


 試験といえばもう一つ朗報がある。

 雪奈の妹が、聖クラークの入学試験に合格した。

 聖クラークが第一希望だったそうなので、妹さんは大喜びしているらしい。

 来月からは俺たちの後輩となる。

 これはこれで、また楽しみが一つ増えた。


「そういえば昨日、ひなのお姉さんに病院で会ったぞ。ひなにそっくりで、びっくりした」


 昨日のオヤジの話は、グループLimeで皆に知らせた。

 皆に心配をかけたが、4-5日の入院で済むという連絡をして安心してもらった。


「あー、お姉ちゃんも話してたよ。何ていうか……お姉ちゃん、ちょっと個性的でしょ?」


「個性的と言えば個性的だな」

 主に胸が。


「……コースケ、今エッチなこと考えたでしょ?」


「……なんの話だ?」

 コマンド『とぼける』を選択。


「まあ確かに巨乳だからね。お姉ちゃん、Jカップだよ」


「Jカップ?」

「J?」

「喧嘩売ってんの?」

「すごい……」


「って、胸は別にいいの。そうじゃなくって、お姉ちゃん、すっごく変わってるんだ」


「変わってる?」


「そう。私から見れば、かなりの変人。で、その『変』のベクトルがまた普通じゃないんだよ。うまく説明できないんだけどさー」


 そうなのか?


「とは言っても、悪い人じゃないんだよ。私には優しいし。あー、あとそれからもう一つ……あーでもなー……まあこれはどうなるか分からないから……」


 ひなが何かぶつぶつと言っているが……。

 俺もあと何回か病院に行くから、機会があればまた話をしてみよう。


         ◆◆◆


「なあなあ、ところで例の件、皆予定どんな感じ? 春休み、行けそうなん?」

 竜泉寺が切り出してきた。


 そう、これが竜泉寺が提案してくれた、春休みのビックイベントだ。

 沖縄へ皆で2泊3日の旅行に行かないか、という計画だ。


 沖縄に竜泉寺グループの有名なリゾートホテルがある。


『竜泉寺 in 沖縄 クラブリゾート』


 高級リゾートホテルだけに、普通に泊まれば決して安くない。

 だが宿泊費には、ホテル内での全ての飲食、アトラクション等の代金が全て含まれる。

 敷地内の広い空間で、滞在中は別世界を味わえる。

 カップルからファミリーまで、人気のリゾートホテルだ。


 これを竜泉寺は、京都のグループ会社で働いているお兄さんにおねだりしてみたらしい。

 すると春休みに、なんと俺たちを無料招待してくれることになったのだ。

 ツインルームを3部屋、合計6人分だ。

 本当にいいのか、恐縮してしまう。


 もちろんエアー代は自腹だ。

 でもLCCだったら、東京-沖縄はかなり安く手に入る。

 格安で高級リゾートが楽しめるのだ。


 でも男女混合で行くことを、よく認めてくれたな……。

 そう思っていたら、招待してくれた竜泉寺のお兄さん、それとお姉さんも同じ日程で「お目付け役」として現地合流するとのことだ。

 竜泉寺のお兄さんは、すでに社会人。

 お姉さんは、京都の大学生だ。


 とはいっても、そんなの間違いなく楽しい旅行になるに決まっている。

 俺はもう今からワクワクしている。

 それに竜泉寺の兄姉に会えるのも、なにげに楽しみだ。

 ……あれ? 慎吾も会うのは、初めてなのか?


 ところで招待人数はツインが3部屋の6人。

 俺たちグループは5人。

 そこであと一人は、雪奈の妹が参加することになった。

 受験の合格祝いというところか。

 雪奈が妹さんに話したら、飛び上がって喜んでいたそうだ。


「もちろん俺は大丈夫だ」

「僕もだよ」

「ひなも楽しみ!」

「私も妹もすっごく楽しみにしてる!」


 日程は竜泉寺のお兄さんとお姉さんの予定が優先された。

 俺たちはそれに合わせた格好になる。

 全員万難を排して、日程を調整した。


「おっけー、そしたら飛行機はどうしようか。各自で取ることにする?」


 竜泉寺の言うとおり、エアーチケットは考える必要がある。

 LCCの場合各自で取ると、まず間違いなく席は離れてしまう。

 せっかくの旅行なのに、それでは楽しみが半減だ。


「俺がまとめて予約しようか?」


 俺はデビットカードを持っているので、口座にお金さえ入っていればクレジットカードと同じように買い物ができる。

 俺が全員分を並びのシートで予約して、後からお金を回収した方が効率が良さそうだ。

 ちなみにデビットカードは、保護者のサインがあれば未成年でも作ることができる。


「そしたら大山君、頼んでもええかな?」


「ああ、任せてくれ」

 皆もそれで異論はないようだ。

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