第202話 猫耳メイド(ホワイト)の憂鬱(橘花凛華side)

 ちょっと待ってくださいませ!

 どうして、私がこんな醜態をさらさなければなりませんの!?

 私は遊里のことを思って…いえ、この場合は隼くんのことを思って、遊里に猫耳メイド服を着せたというのに…。どうして、私も同じものの色違いを着せられてしまっているのかしら…。

 今日の準備が一通り終わり、遊里も肩を落としながら、優しい彼に手を引かれつつ、帰宅していった。

 今は私と翼しか教室には残っていない。

 二人きりになったんだから、この服のことを聞いてやらないと!


「翼!」

「ん? どうしたの?」


 翼はテーブルクロスを丁寧に折りたたんで、箱に片づけてくれているところだった。

 私は彼に近づき、


「この衣装はどういうことなの?」

「え? すっごく似合っていて、可愛いよ」


 キュン♡

 て、何、褒められて心をときめかせているのよ、私は!

 そうじゃないでしょ。ちょっと、顔にデレが出ちゃいかけちゃったじゃないのよ!

 ダメダメ! 私、しっかりしなさいよ!

 翼に抗議するんでしょ!? 当日は、この服を着ないと宣言しないといけないのに!


「そういうことではありませんの! どうして私がこの格好をしなくてはなりませんの!?」

「あ~、そのこと? だって、『マジカル猫耳メイド』ってシーズン2からブラックに相方のホワイトができたんだよ? ファンなら、そのことを知っているだろうから、間違いなく、今回のコスプレ喫茶では、ブラックとホワイトの2人いたほうが盛り上がると思ったんだよね」

「あ、そうなんだ…。で、わざわざ作ってきたって言うの?」

「そうだよ? 瑞希くんに頼んだんだけど、俺の目に狂いはなかったね。ピッタリじゃないか!」


 ええ、目に狂いはないけれど、頭は狂っているような気がしてなりませんわ…。

 どうして、財閥令嬢の私がこのようなコスプレをしなくてはなりませんの!?


「でも、他にもやれそうな子はいたじゃないの?」

「え~いないよ~。だって、猫耳メイドのホワイトはスラリとした体形が必要なんだもん。クラスの中で神代さんと同じようなすらっとしたスタイルの女の子っていったら、凛華くらいじゃないか?」


 クラスメイトに失礼だと思うけれど……。まあ、確かにそういわれればそうだったわ…。

 このクラスで遊里は結構、身長が高い方に位置している。それに比べれば身長は低いけれど、彼の求めているスラリとしたスタイルとなると…、まあ私以外にいないわ!(クラスメイトには失礼だけど……)

 て、だから、そこで喜んでちゃいけないじゃない…。

 私はこの衣装を着たくないんだから…。


「まあ、そう言われればそうなんだけどさぁ…。もう少しそのデザインとかを…」

「え? メチャクチャ忠実にできてるよ? ほら見てみる?」


 言われて、翼は私に「マジカル猫耳メイド」のキャラクターを見せてくる。

 確かに、服の造形を見る限り、再現度は完璧と言って間違いないと思う。

 何だか、細々とした装飾まで完璧に作り込んである…。


「て、これは瑞希が作ったの?」

「うん。そうだよ。俺が凛華に着てほしいと思ってお願いした。瑞希くんが張り切っててすっごく頑張ってくれただろ?」


 そ、そんな無邪気な子どものような顔で言わないで…。

 私の心の奥底でキュンキュン♡ しちゃうんだから…。

 何これ、母性本能とか言うやつなのかしら…?

 これ以上、その顔で私に色々とお願いされちゃったら、私、有無を言わさず聞き入れてしまいそうですわ。


「そ、その…あまりにもサイズがピッタリですわよ」

「あ、そ、それ…」


 ど、どうして、そこで恥ずかしがりますの!?

 聞いた私の方が悪かったみたいな空気出すの止めてほしいですわ!


「その…何度かエッチした時にも服を着ていない凛華の姿も見てるし、服を着てる状態で前後から抱きしめたことがあるだろ? その時ので何だか分かるんだよ…」


 ボッ!(真っ赤)

 訊いた私がバカでしたわ!

 顔から炎が出てしまいそうになるくらい恥ずかしいんですけれど!?

 バカバカバカ!!! エッチをしてる時にそんなにジロジロ見ないで欲しいですわ…。


「も、もう…恥ずかしいですわ……」


 私が顔を赤らめると、翼は私のそばに寄ってきて、肩にそっと手を添え、


「別に凛華を辱めようなんて気持ちはないよ。ただ、純粋に制服以外の可愛い凛華も見たかっただけ」


 キュキュンッ♡

 も、もう! 何よ、それ!!

 胸が熱いもので満たされちゃってるぅ♡


「つ、翼…」

「ん? 何?」

「こ、この服、私に似合ってるの? その……こういう服、着たことがありませんの……」


 すると、彼は私の顎をクイッと指で持ち上げ、


「すっごく似合ってるよ…。それに知ってる? マジカル猫耳メイドのホワイトは戦いで傷ついた後、意中の男子からキスをされることで負っていた傷を癒して、魔力を回復するんだよ…」

「え………」


 私が呆けてしまった瞬間。

 ……んちゅ……♡

 …………………………。

 えっ!? ちょっと待って!?

 顎クイからの王子様キスって…。う、う、う、嬉しすぎますわ!?

 もう、身も心も蕩けてしまいそう…。

 こんなシチュエーションがあるなんて…。

 でも、ここは学校の教室…。誰かに見られてしまったら、大変ですわよ!

 あ、でも、だ、ダメ…。翼、そんなに舌を絡めてきたら、本当に求めたくなってしまいますわ!

 最近忙しかったら、あまりキスできませんでしたけど、今日のキスは何だか本当にキュンキュンが止まりませんわ…。

 もう、翼ったら……。大好きですわ♡




―――――――――――――――――――――――――――――

作品をお読みいただきありがとうございます!

少しでもいいな、続きが読みたいな、と思っていただけたなら、ブクマよろしくお願いいたします。

評価もお待ちしております。

コメントやレビューを書いていただくと作者、泣いて喜びます!

―――――――――――――――――――――――――――――

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る