第201話 猫耳メイド(ブラック)の憂鬱②
新聞紙を丸めた筒状の物をバトントワリングのように体の周りをクルクルと回し、右手でキャッチした後に、それを自分の前に振りかざす!
そして、ここ右ひざを曲げて、片足立ちの状態で、
「愛と魔法の力で、絶対に悪は許さないんだニャン♡」
決まった!
顔もウザ可愛いクリクリとした瞳をウィンクさせて見せている。
遊里さんの可愛さがさらに引き立っちゃうよ。
「遊里先輩、ついに頭がおかしくなったんですか…」
うわあ。バッサリと切り捨てたな…。
このバッサリと切り捨てた部活帰りの女こそ、ボクの妹の楓。
聖マリオストロ学園中等部で定期テストは首席の生徒会副会長だったりする。
水泳部の部活動から帰ってきて、疲れた表情と遊里さんを卑下するような目線はさぞかしや遊里さんの心に突き刺さったことだろう…。
「つ、ついにとはどういうことよ…!? まるで普段から頭がおかしいみたいじゃない!」
「いや、だって恥ずかしい素振りもせずに、『愛と魔法の力で、絶対に悪は許さないんだニャン♡』なんて言っている人が家族の中で、しかも、兄の彼女がやっていたら、精神的に正常か疑いますよ…、さすがに」
「何だか酷い…。これでも、かなり上手くできるようになってきたくらいなのに…」
「気にするのはそっちの方なんですね…。ちょっとヤバいとか思わないんですね?」
「そんなこと気にしてたら、この重要な役職が務まるわけがないでしょ!」
「お兄ちゃん、そんなに重要なの?」
「まあ、すでにポスターとかで遊里は有名人だからね…。それにきっと売り上げをあげるために、クラスのみんながどんどん宣伝をすると思うんだよね…。特にSNSとか使って…。そうすれば、きっと重要になると思うよ。マジカル猫耳メイドは有名なアニメだし」
「お兄ちゃん、アニメを語るときの嬉々とした表情はオタクそのものなんでできれば、少しは控えてほしいかも…。ところで、何で、遊里さんはウチの家でやっているんですか? ご自身の家でもできるじゃないですか…」
「あ、あの…それがね…。家で練習してたらさぁ…。お母さんからはあざと過ぎるって言われるし、茜からは楓ちゃんと同じように頭がおかしくなったんじゃないって切り捨てられるし…。だから、隼の家ならば、隼が応援してくれるし、頑張れば隼に抱きしめてもらえるし、上手くできれば隼が褒めてくれるんだもん!」
「いや、遊里先輩の頭の中、おにいちゃんでいっぱいですか!?」
「うう…。私だって、これをするのは恥ずかしいよ? でもね、今は隼が心の支えなの…。隼が裏切ったら、私、闇墜ちできるかも…ヘヘヘ」
「いや、メッチャ追い込まれてるじゃないですか…先輩」
「まあ、そんなこと言ってらんないのよ! それに衣装を着ながらやると、もっと恥ずかしそうだし…」
「あ、そういえば、お兄ちゃんの部屋に猫耳メイド服あったよね?」
え!? ちょっと待って!? それは遊里のお母さんである早苗さんからもらったやつなんだけど!?
もしもの時用(どんな時のためなんだ!?)と言われていたんだけど…。
遊里さんがジト目でボクを睨んでくる。
絶対に勘違いしてるじゃないか、これ!?
「あれは早苗さんが遊里のための通販で買ってくれたもので、なぜかウチの家で使うこと前提のようにボクの家に送られてきたんだ」
「もう、絶対的に怪しいわね…。私に着せる気満々じゃない?」
「うん。それは否定できないんだよね…。さすがに楓に着せると色々と問題が起こりそうだし…」
「私は嫌よ。瑞希の前なら構わないけれど」
彼氏の前ではいいんかよ! てか、中学生でそんなプレイするな!
で、どうしましょうかね…。そのコスプレの服は…。
「わ、私は着て練習してもいいわよ! 恥ずかしさを減らすためには必要だと思うから」
いや、顔ひきつってるけど、本当にやるの?
すると、楓が遊里さんの手を引っ張り、
「じゃあ、そうと決まったら、早速着替えましょうか、先輩!」
「え!? ちょっと!? ねえ、楓ちゃん!? ちょっと積極的すぎない?」
「そんなことないですよ~」
「い、いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
遊里さんはものの見事に引きずられて、ボクの部屋に入っていった。
それにしても、どうして、ボクの部屋に隠してあったはずの猫耳メイド服のことを楓は知っているのだろうか…。あとで問い詰めないといけないな…。
数分後、リビングに現れたのは「猫耳メイド(ブラック)」であった。
遊里さんはトホホという表情をしていて、肩を落としている。
てか、やっぱり可愛い! もう、このまま抱きしめたい!
て、ダメだ! 欲望が駄々洩れだ!
「じゃ、じゃあ…やるわよ!」
新聞紙を丸めた筒状の物をバトントワリングのように体の周りをクルクルと回し、右手でキャッチした後に、それを自分の前に振りかざす!
そして、ここ右ひざを曲げて、片足立ちの状態で、
「愛と魔法の力で、絶対に悪は許さないんだニャン♡」
「うん。いいね! ちゃんとできてるよ」
「でも、少し恥ずかしいな…やっぱり」
「てか、遊里先輩…。足をむき出しにするとすごくいやらしいですね…。それに綺麗なお肌してるし…。これはこれでお兄ちゃんが誘惑されちゃう!」
いや、もう手遅れだから。
これまでもこれからも遊里さんのことが、ボクは大好きだからね。
ああ、それにしても、太ももにスリスリしたい…。
あ、また欲望が漏れ出ちゃった……。
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