第199話 地獄の姉妹ユニット♡

 目の前にいる恥じらいでモジモジしている猫耳メイド娘は、ボクの彼女…。

 もうやばい。(語彙力)

 か、か、か、可愛すぎるじゃん!

 あまりの可愛らしさにボクも喋れなくなってしまう。


「ねえねえ、自分の彼女のこの姿はどうなの?」


 クラスメイトがボクの傍に近づいてきて、感想を聞いてくるけれど、何て答えたらいいのか…。

 何だか、ボクも恥ずかしいし、目の前の可愛すぎる彼女・遊里さんもモジモジしていてお互いが何も出来てないでいる。

 周囲も何かしゃべれよ。何か動けよ。という空気になって来ているように感じる。


「な、何だか、これ以上ないくらいに初心な感じね…。あなたたち、いつもそうなの?」

「い、いや…そんなことはないですよ!」


 い、いかん! 声が裏返ってる!? てか、遊里さんも何か言ってよ!

 と、訴えるべく振り向くとそこにはボクの袖裾を手で引っ張っている遊里さん。

 もう、完全に周囲の方がてぇてぇで死にかけている。


「あなたたち、ホテルではそんなことなかったじゃない…」

「な、なんでホテルのこと知ってるのよ!?」


 あ、現実に戻ってこれた。遊里さんはさらに顔を真っ赤にしながら、橘花さんにツッコミを入れる。

 てか、これは恥ずかしいというよりお怒りの方だな。


「あ――――っ!? あのベランダの私の写真、アンタが撮ってたんでしょ!?」

「ふっ! 今頃気づいたのか!? そもそもあの写真だけじゃない! ポスターになっているうつ伏せでおっぱいがムギュッと潰れている水着写真も私が撮りましたのよ!」


 周囲からは橘花さんに対して賞賛の声が上がる。

 いや、それこそ遊里さんを追いこんでることに繋がらない? さらに恥ずかしがるか、怒り散らすかのどちらかしか選択肢がないような気がするんだけど…。


「本っ当に隙あれば、何でもしてくるわね…。あんたは…。この衣装も、こうすればコスプレ喫茶の売り上げが上がると考えたんでしょう!」

「ふっ! それもあるわ。でもね、それは考えのひとつであって、もう一つあるのよ!」


 え…。そうだったの!? ごめんなさい。ボクも橘花さんのことを金の亡者と思ってました。

 遊里さんはマジカルステッキをぶんぶん振り回しながら、


「何よ! それは一体どういう考えが働いたって言うのよ!?」

「そんなの決まってるじゃない! 遊里の彼氏が好きな格好だと思ったからよ!」


 ガーンっ! ボクの性癖の問題!?

 ぼ、ボクが猫耳メイド服を着た彼女が好きかだって…!?


「は、隼はその、私の猫耳メイド姿は好きなの?」


 遊里さんは、ボクの方を見ながら、マジカルステッキをブンッと振りかざしてくる。

 このまま恋の魔法でも掛けてくるつもりだろうか…なんて冗談を考えている場合じゃない。

 ボクは頬を人差し指でポリポリとかきながら、


「うん。大好き♪」

「もう…変態なんだから……」

「でも、あんまり、人には見せて欲しくないなぁ…」

「うあ。すっごい本音ね…。私だって、他の人たちにはあんまり見せたいとは思わないわよ。で、まあ、私にここまでの辱めをするってことは、凜華もそれ相応のコスプレをするのよね?」

「私のはないわよ。だって、私は企画者だもん」

「はあ!? それってズルくない?」


 そりゃ、遊里さんも怒るわな…。

 その時、教室のドアが開き、翼が入ってくる。


「ちょ、ちょっと翼!? 勝手に入ってきちゃダメじゃない!?」

「あのさぁ…。この猫耳メイドにはブラックと相方のホワイトがいたよな?」


 ん? ああ、確かにこの猫耳メイド、ゲームのキャラクターでアニメ化も行われて、それのキャラクターショーが宝急アイランドで行われた。で、この猫耳メイド、実は姉妹キャラの設定があったのだ。それがホワイトの猫耳メイドがいたのだが…。翼はそのことを言っているのだろう。

 でも、意味が分からない。なぜ、今、ここでその話が必要になってくるのだろう。


「私はこのアニメのことはそんなに知らないわ!」

「ま、ホワイトってのがいるんだよ…」

「そ、そうなんだ…。で、何が言いたいの?」

「まさか、ブラックだけ活躍させるなんておかしいよね? キャラ設定というものはすごく大事だから、ホワイトが必要だよね?」

「ホワイトの衣装なんて持ってきてないわ!」

「あー、それなんだけどな…。瑞希くんにお願いして、用意してもらってたんだ」

「え。」


 かくして、橘花さんは猫耳メイド・ホワイトの姿をさせられることになった。




 着替え終わると、二人の彼氏であるボクと翼だけが入室を認められる。


「つ、翼!? この衣装、私にピッタリすぎるのっておかしすぎない!?」

「まあ、一応、補正しなおしてもらっておいたからな」

「何で私のサイズを知ってるのよ…」

「そんなの男は抱けばサイズくらい暗記できるって…。なあ、隼?」


 え。何でボクに確認するの!?

 ボクは遊里さんのサイズを覚えているかって…、まあ、だいたいは分かるかな…。


「う、うん。まあ分かるかな」

「ちょ、ちょっと!? 隼!?」


 はいはい。遊里さんはそこにもツッコミたいかもしれないけれど、ボクも急に振られたんだから仕方ないでしょ!


「へへへ…。似合ってるじゃない、凜華。少しは私の気持ちは分かったかしら?」

「そうね…。お互い彼氏の性癖がなかなか特殊だって実感できたわ」


 周囲にクラスメイトがいるのに、なぜかボクらの性癖が暴露されてるんだけど…。

 ボクらの方が恥ずかしくなってしまう。

 これってお互いに地獄な状態が起こっているんではないだろうか…。



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作品をお読みいただきありがとうございます!

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