第198話 遊里にゃ…ん!?
何とか打ち上げ花火に関しては上手くいった。
そのことを、LINEで瑞希くんと楓にも報告しておく。返事はすぐについた。
二人とも喜んでいたし、今後の流れも出来た。
確か、設営業者は5年契約を結べるようにしていたとか言ってたなぁ…。
彼が高校にいる間は安泰ってことじゃないか。
やるなぁ…、卒業とその年まで心配せずに打ち上げ花火を開催することが出来るんだ。
入山先生も結果的には、上手くことが進んで、ホッとしていたようだ。
先生には珍しく、笑みも零れていたし、さっきも別れた後は鼻歌交じりに教務室に戻っていった。
さてと、ボクもクラスの準備を手伝ってあげないといけない。
急ぎ目にクラスのある高等部の学生棟に向かった。
学生棟はすでに装飾が進んできており、熱気が感じられるほどだ。
ボクは昨年、休むことを決め込んでいたから、そもそもこんな感じでもなかった。
うーん。実はこんなに去年も熱気に包まれていたんだね…。
何だか、一年間、損していたのかな?
そんなことを気にせずに歩いていると、自分のクラスに着く。
何だか、中が凄く騒がしくなっている。
『きゃぁぁぁっ! 可愛い!!!』
『やっぱり、学年1の美少女の冠をほしいままにしただけあるわ~!』
『ねえねえ、私と付き合ってよ~』
『い、いや…さすがに困るよ……』
明らかに陽キャな連中が誰かを囲んで賑わっているといった感じかもしれない。
で、今、困惑している声が聞こえたけれど、これは明らかに遊里さんのような気がする。
彼女は先にクラスメイトに拉致されて、教室に先に戻っていたわけだが…。
確か、文化祭当日のフィッティングをするとかいってたな…。
じゃあ、さすがに勝手に入るのは許されないということだろうか…、と振り返るとクラスメイトの男どもが廊下で干からびている。
中の声だけで妄想でもしていたのだろうか…。
妄想で死ねるなんて幸せ者だなぁ…。
『も、もう! こんな姿、隼に見られたら恥ずかしいんだから!』
『じゃあ、見て貰ったらいいんじゃない?』
『そうだよ! きっと、隼くんもっと遊里のこと好きになってくれるよ!』
『いや、隼くんだけじゃなくて、クラスの男…いえ、学園中の男どもがきっとこれは尊死するレベルだわ!』
あ、この声は橘花さんだな…。
今回の発起人は橘花さんだったもんな…。橘花さんがすべての衣装を用意したらしいけれど、それにしもて、遊里さんの衣装って何なんだろう…。
「隼も今は入ったらダメだぞ…。ぜってーに殺される」
翼がご丁寧に止めてくれる。
彼は暇をつぶすためか、スマホのゲームをずっとやっているようだ。
「やっぱり、今はフィッチング中ってこと?」
「ああ、今はお前の嫁の時間」
嫁って言うな。まあ、将来的には間違いないんだけれどね…。
そんな話をしていると、ドアが少し開き、女子生徒が外の様子を伺っているようだ。
その子とボクの目線が合う。すると、その子はボクに対して、手招きをする。
「何だか、呼ばれてるから行ってくるわ…」
「マジかよ! お前だけズルいぞ!」
いや、そんなこと言われても、呼び出されているのだから仕方ない。
ドアの前に来ると、
「遊里って本当に素材が良すぎるのよ…。まあ、そんな彼女に対して、あの衣装の持ち込んで着せる凛華も凄いとは思うけど…」
まあ、橘花さんはやり手経営者ですからね…。
すると、彼女はグイッとボクの制服のネクタイを引っ張り、至近距離まで近づけると、
「見せてあげようか? 最強に可愛い遊里を?」
「え!? う、うん…そりゃ見たい」
でも、他の男子生徒に悪くないか? ボクだけが勝手に先に堪能するってのも…。
そんなことをしている間にも中からは賑やかな声がする。
『ねえねえ、隼くんが来ちゃったらどうする?』
『み、見せなくていいわよ! まだ、気持ちの準備も何も出来てないから、今見られたら死ねるかも!』
『きゃー! 顔、赤らめて可愛い!』
『もう、裸も見せ合ってる仲なのに、服を着ている方が恥ずかしいってどういうことなの、遊里?』
『凜華…ちょっと待って? あなたおかしいわよ!? 何でも着てればいいってわけじゃないわ!』
『そんなもんかしら…。まあ、いいわ』
橘花さんのその声が合図だったかのように、ドアを開けて、ボクのネクタイを引くように女子生徒が入室する。
ボクはつんのめるようにバランスを崩しながら、床に倒れる。
もう少しまともに入室させてもらえないものですかね…。一応、こちらも生身なんで…。
ボクは起き上がると、目の前には、黒の猫耳、フリフリで胸の部分がハートの様な形をしたミニスカメイド服、そしてお尻の方には針金が仕込まれているのか、動くたびにクリンクリンと可愛く動く尻尾。しかも、破壊力抜群なツインテールだと!?
そう。遊里さんは予想していた通りの可愛い猫耳メイドになっていたのだ!
「か……可愛い……」
「あ…あ…あうぅ……見られちゃったよぉ……」
遊里さんは顔を真っ赤にしながら、握手に持ったマジカルステッキに顔を隠しながら、慌てふためくのであった。
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