第193話 禁断の恋。
生徒会室で感慨に浸るのは止めて、生徒会の過去のものを引っ張り出しながら、記録を探す作業に明け暮れる。
「ところで、何年前とかあるんですかね?」
「そうねぇ…。私たちの前にやった記録って言うのは、確か創立100周年記念の時に実施されたらしい」
「確か、ウチの学校って、1900年創立だから、2000年の生徒会が実現したということになりますね」
「ああ、確かにそうなるな…。じゃあ、まずは2000年とその前後の書類を集めよう」
ボクらは手分けして、探し始める。
段ボール箱にはそれぞれの年度が記載されているが、どんどん奥に積んでいっているからであろう。順番はもうメチャクチャになっている。
なかなかの力作業が必要となってくる。
どうして紙ってこんなに重いんだろう…。
「あ! これ、入山先生が生徒会をしていたときのものだ!」
遊里さんがまるでお宝を発見した子どものように大きな声を挙げる。
入山先生は険しい顔になって、遊里さんのもとに近づいてくる。
「な、なんですか…? 入山先生…」
「そ、その箱は…開けちゃダメ…」
「な、何でですか…?」
「何ででも…!」
すごく怖い。米倉先生も遊里さんを羽交い絞めにしてしまいそうな勢いだ。
何か見られてはまずいものでもあるのかな…
二人に壁際まで追い込まれた遊里さんは、「な、なんか、ごめんなさい」と一言だけ言って引き下がった。
あの焦りようはただ事じゃないような気がするけど…。
「コホン! とにかく、早く探すぞ!」
入山先生はわざとらしい咳ばらいをして、振り返る。
「へぇ~、これはボク達が生徒会に入ったときに役立ちそうだね」
「うん! 今からしっかりと勉強しておこっか」
抜け目のない瑞希くんと楓の中等部生徒会コンビがすでに書類に目を通していたのであった。
「ま、待て! それ以上見るな!」
「あれ? このページ、何だかくっ付いてる…」
楓はそのページを剥がすと一枚の手紙がポロリと落ちる。
それをサッと拾い上げ、楓は読み上げる。
「私は静香の心優しいところが好きだよ。美由紀…って、え―――――――っ!?」
「ああ、手遅れだった…」
米倉先生があわあわと手で口元を押さえながら慌てている。
「せ、先生たちって…もしかして…」
「はぁ…。あの頃の話ってだけだ…。私と美由紀は高校時代、こっそりと付き合ってた頃があったんだよ…。て、何で、こんな話を生徒にしなくちゃいけないんだ…」
「これはなかなか新鮮な…」
ボクがふむふむと二人を見つめていると、
「こら、清水。変な性癖に目覚めるんじゃない…。教育者として、確かに同性愛はどうかとは思うが、あの頃の…亜紀が亡くなったあとの私の支えになってくれたのは、間違いなく美由紀だったからな…」
「まあ、そういうわけで私から声を掛けちゃったって感じなのよ~」
「とはいえ、どうしても処分できないし、家に保管していて親にバレてもまずいから、隠しておいたんだが…。まさか、封を開けられるとは思っていなかった…」
そりゃそうですよね。だって、10年以上も前の生徒会の書類を見返されるなんて思ってもいなかったでしょうからね…。
「でも、先生! 安心してください!」
「ん? 何でだ?」
楓が至って明るく入山先生に声を掛ける。
楓は先生の耳元で、
「以前は私も、女の子が好きでしたから…」
あーあ、言ってしまったよ…。最近、治まっていたと思ったんだけれど、やっぱり根っからの変態だったようだ。
「おい! 隼! お前の妹、変態だったのか?」
「否定はしません…。今がどうかは敢えて触れていないのでわかりませんが…」
「性癖なら、隼も負けてないけれどね~」
遊里さんは余計なことを言わなくていいから。
遊里さんはボクの横でニヒヒと笑いながら、そんなことを言う。
「と、とにかく、このことは誰にも言うなよ…。あと、その手紙は私の思い出の品だから、返してもらうぞ」
「え、しぃちゃん、もしかして、今も……」
「んなわけないだろ! 今はお前と一緒で異性の結婚相手を探しているところだ!」
そんなやり取りをボク達が見て、
「お二人は本当に仲がいいですね」
「まあ、そりゃ相思相愛だったんだからな…」
「だから、今は違うと言ってるだろ!」
「まあ、今も仲は良いけれどねぇ~」
そこで米倉先生は入山先生の頬に軽くキスをする。
入山先生は顔を真っ赤にして、
「こ、こら…! 美由紀! そういうところを見せるんじゃないって!」
「何だか、今、ゾクゾクしちゃった」
とは、同じ性癖を持っている楓の発言。
あんまりそういう発言すると、瑞希くんが困るから止めなさい。
入山先生との仲はお互いの信頼関係から来たものなんだな…。
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