第185話 文化祭の準備は止められない!
地獄はまだまだ続く。
放課後の教室は、恋バナ好きな陽キャ女子がボクと遊里さんを教室の端に追い込んでの尋問大会だ。
も、もう、やめてくれぇ~!
ボクは口が堅いほうなんだけれど、遊里さんは聞かれちゃうと答えてしまうタイプ。
もうすでにあれこれ答えてしまっていて、陽キャ女子の皆さんもすでにそれを知ってか、さっきから質問が遊里さんに集中している。
「遊里! どうやって告白したの!?」
「え…!? あの、放課後に屋上で」
「きゃー! もう、メッチャアニメの世界じゃん!」
「遊里、超かわいいんだけど~!」
「え!? 何なに!? 何が、可愛いの!?」
「もう、本当に初心な遊里が可愛すぎるなぁ…」
「で、ちなみに初めてのエッチは…?」
マズ過ぎる…。陽キャ女子の皆さんの鼻息が荒くなって来ていて、しかも、遊里さんは押され弱いから、答える準備してるよ…。
ピンポーンパーンポーン!
『生徒会から連絡いたします。文化祭実行委員の皆さんは、視聴覚室に集合してください。文化祭実行委員の皆さんは、視聴覚室に集合してください!』
ナイス! 生徒会!
普段は役に立ってないなぁ…なんて思ってたけれど、今日ばかりは本当に嬉しいぜ!
遊里さんもその放送を聞いて、ハッと我に返る。
この人、洗脳されやすいタイプ? ますます、彼氏であるボクが守ってあげなきゃダメでしょ…。
9月に入ると、もう目の前に迫ってきている文化祭に関連して、学校は賑やかになり始める。
聖マリオストロ学園の文化祭は一般公開されていて、近隣の方々も来ることが出来るようになっている。
それもあってか、高等部や大学が行う模擬店など金銭を頂戴するものに関しては盛大に準備が行われる。
もちろん、模擬店を行わない小学生や中学生も演劇や装飾などを凝らしていて、中には大手プロダクションが演劇に出演した生徒に声を掛けるなんてこともあったりする。ちなみにそれに関しても、学校を通して行われているため、知らない間に契約していたなどというものではなく、学校公認の芸能活動を行う形になっている。
そもそもその点、学校を通して公認してもらえれば芸能活動がありというのは、様々な学校からしてみたら、芸能界入りを目指している子からするとウケが良く、結構多くの芸能人を輩出している。
もちろん、ウチの学園の文化祭に出演してくれたり、遊びに来てくれたりすることも多く、それだけ文化祭に華を添えてくれる。
今年は夏休みに大学側の生徒による「文化祭費用横領事件」をものの見事に中学部の生徒会長である橘花瑞希くんと生徒会副会長の楓が暴いたということもあり、大学生はあまり大きな顔をすることはできないけれど、それでも普段通り、模擬店は盛り上げには欠かせない。
文化祭の準備を各クラスはしつつ、文化祭実行委員は運営に関する問題や課題を処理していくということになる。
明らかにボクらは自分たちのクラスの準備を手伝うことが出来なくなるので、何だか申し訳ない気持ちになってしまうところである。
そんなことを考えていると、前から冊子が配られてくる。
すでに文化祭実行委員の本部の方が動いて色々と出し物の詳細であるとか、模擬店であれば金銭の授受の有無、装飾であれば、どういった装飾でコストがどの程度かかるのかなど細かくまとめられている。
きっと、この辺も中学部の瑞希くんと楓も手伝って行っていたのだろう。
楓が夏休みの間、部活動が終了してもなかなか帰ってこないこともあり、話を聞くとそういう作業をやらされていると言っていた。
きっと、やり終えたらキスしてあげるとか甘いことを言われて、頑張ったのかもしれない…。
いや、これ、瑞希くんに言われると楓に取ったらかなり効くみたいで、本当に仕事を一生懸命頑張るようになるらしい。
部活のない日なんか、朝から瑞希くんの家に行っているのを見ると、何だか、朝から瑞希くんの家にも出向いていた。
休みの日は早起きしない主義の楓がそこまでして瑞希くん家に行くということは、絶対に「餌」をぶら下げられているのは明らかだ。
まあ、ボクの勘が正しければね…。
「ねぇ~~~~~、だんだん酷くなってるんだけれど…」
遊里さんが資料に目を通して、ボクに涙目で訴えてくる。
あ、遊里さんが訊くってことはウチのクラスのことか…。
ボクはそのページまで捲ると、詳細を見てみた。
「うーん、これはなかなか集客ありそうな感じだね」
そこにはウチのクラスの出し物の詳細が書かれていた。明らかに執筆したの橘花さんだと思う。
彼女は橘花財閥のリゾートテーマパークの代表取締役社長をしているだけのことはあって、企画概要もしっかりとしている。
書いている内容を簡単にまとめると、早い話が文化祭の定番である「コスプレ喫茶」というジャンルをやるのだが、衣装は宝急アイランドでこれまで使用されてきた衣装を使用するらしい。その衣装は、現在使用されているものではなく、廃版になっている衣装が色々使用されるということもあって、ファンにとってはヨダレ物の企画となるそうだ。
しかも、料理もこれまで宝急アイランドで出されてきたメニューの中から学園祭で提供できそうなレベルのものを出すという明らかに橘花さんの力を駆使して組み立てられた企画であったりする。
ちなみに衣装については生徒会に許可をもらうためか、すべてではないもののある程度のものが列挙されている。
その中のひとつを指さし、ジト目でボクを見てくる遊里さん。
「ねえ、これ、本当に隼が考えたんじゃないよね?」
「ん? どれどれ?」
そこには、「バニーガール」とか「クラシックメイド服」などそんなものあったっけ?と思いたくなるような衣装まで書かれている。
とはいえ、何でこれを見てボクと思ったのかすごく気になるところなんだけど…。
「えーっと、明らかにボクのアイデアではないよ…。ボクなら遊里さんにしてもらうなら、もっと卑猥にしてあげてもいいんだけど…」
「うわあ…。そういうのってできれば本人のいないところで言って欲しいかも…」
うあ。目が本気で怒ってる。メッチャ、目が座ってるじゃん…。
「そういうのは、隼の前だけではいいけど、他の人には見せたくないの!」
少し頬を赤らめながら、怒ってくる彼女。
ツンが可愛すぎる。何!? 今、会議中なのに、ボクの心を破壊しに来るの!?
「と、とにかく、ボクは企画してないからね。それに決めてるのは橘花さんなんだから…」
「それはそれでもっと不安なんだけど…」
彼女はハァーと深いため息をつきながら、他のページを見始める。
まあ、ウチのクラスがどういうものになるかは分からないけれど、ボクらもシフトに入ることになるんだから楽しみで仕方ない。
でも、ボクは明らかに調理の方に行かされるのかな…。
そこらへんは明日にでも橘花さんに訊いておいてもいいかもしれない。
そんなことを考えていると高等部の生徒会長が議事進行を始める。生徒会の文書の読み上げがいよいよ始まるのだった。
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