第184話 陽キャは恋バナがお好き♡

 陰キャと陽キャの派閥闘争が終わってからは、ボクと遊里さんは一緒に通学するようになったし、教室にも一緒に入ることが多い。まあ、わざわざ別々に行動する必要性が全然ないというのが要因ではあるけれど。


「みんな、おはよう」

「あ、凛華、雪香もおはよう!」


 ボクらは普段通り、いつもつるんでいる翼と葵のもとにいく。

 そこには橘花さんと二葉さんもいたので、当然、遊里さんも一緒に。


「この間の夏祭りではバッタリ出会っちゃったわね」


 二葉さんがボクらの方を見て、話しかけてくる。

 夏祭りとは先日、海浜公園で行われた夏祭り&花火大会のことだろう。

 そう。二葉さんたちも行ってたんだよね……。


「まあ、私たちも彼と一緒だったんだから、もう少し空気読んでくれても良かったのに……。みたいな?」

「あ、ははは………。あの日は午前中はちゃんと柊くんと勉強して、お昼からは妖艶な浴衣を着て、腕組んであげたから、もうぽよぽよのカチンコチンになってたわ」


 ぽよぽよとカチンコチンって一緒に使える言葉なんだ…。

 明らかに種類が違うものを形容するような気がしてならないんだけれど…。

 まあ、二葉さんの悩殺ボディだから、そりゃ柊くんも気分は「ぽよぽよ」しつつもど緊張で「カチンコチン」だったんだろうな…。

 聞いたところでは柊くんも初恋みたいだし。

 そんな柊くんのお兄ちゃんである葵が、


「でもさぁ、本当に二葉さんって凄いよね。完全に柊を射止めようとしてきたんだって分かるわ。服装がもはや花魁おいらんみたいだった」

「ああ……たしかに……」

「うん。もうね、お胸がはだけて飛び出そうになってた」

「ちゃんとバストアップブラで補強してたから飛び出すことはないわよ!」


 二葉さん…、それは積極的すぎると思います。

 射止めるどころか、性癖が歪む恐れがあると思います。


「で、キスはできたの?」


 遊里さんがニヤニヤとしながら訊いてくる。二葉さんはポヤポヤ~とした表情になり、


「ナニモシテナイヨ?」


 兄である葵もさすがにこの反応にはギョッとする。


「ま、まさか、二葉さん、付き合ってすぐに、キスしたのか!?」

「ま、まだ頬っぺただけだって…。私たち、ゆっくりとした恋愛をするつもりなんだから…」


 あれ、二葉さんの言葉を受けて、翼と橘花さんが血を吐いてるんだけど、大丈夫なのかな…。

 どうしてここで血を吐くことになるんだろう。


「そっかぁ…。まあ、いいんじゃない? 雪香はダイナマイトボディの持ち主だから、そりゃいつでもヤっちゃえるとは思うけど、でも、ゆっくりしてあげたほうが柊くんのためにもなるよね…。ねえ、そう思わない? 凛華? って凛華!? 何でそんなに血を吐いてるの!? だ、大丈夫!?」

「ぐふっ…。だ、大丈夫よ。ちょ、ちょっとめまいを起こしただけだから…。それよりも私も夏祭りに行ったけれど、たくさんの人だったわね」

「あんたの場合は翼くんとのデート兼仕事でしょ?」

「もちろんよ。お店もたくさん出してたからね」


 さすが、橘花さん。商魂たくましいなぁ…。

 どうやったらそんなに経営上手になれるのか、本当に伺いたいところだよ。


「そうしたら、凄いものを見たわ」

「え? 何なに?」


 さすが、陽キャ。そういう話には自ら首を突っ込んでいく、遊里さんと二葉さん。


「ええ、凄いのを見たわよ。たこ焼きを二人であ~んてしてるの。これって今どきなかなか見かけないような初々しさよね」

「……ぐはぁ……」


 あ、遊里さんが膝をついている。

 た、確かに、それってボクらもやったもんね…。でも人違いかも…。


「そのあと、付き合い始めたころのことを色々と話してたわ…。どうしたの遊里?」

「………………」


 遊里さんはすでにクラスの床で死体になってしまっていた…。

 周囲も慌てふためく。


「大丈夫よ! 単に夏休みの思い出に悶絶してるだけだから!」


 いや、それ、ボクにも影響してくるじゃないですか!?

 案の定、周囲の視線はボクを睨みつけてくる。

 ぼ、ボクは何もやってないじゃないか…。いや、確かにエッチなこともいっぱいしたけど、それは彼氏彼女の関係として普通?のレベルだとボクは思っている…。


「清水くん、夏休みに遊里とどうだったの?」

「ねえねえ、清水くん、当然エッチもしたんでしょ!?」

「遊里の最高に可愛かったことって何?」


 クラスの陽キャ軍団にボクは、追い込まれてしまう。

 ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ…助けて、遊里さん…!

 遊里さんは何とか気力を取り戻し、ボクと陽キャ軍団の間に入ってくれる。


「もう、やめてあげてよ。隼は私のことなんかきっと答えないもの」


 そこでクラスメイトの陽キャ軍団は顔を見合わせて意地悪くニヤリと笑う。


「じゃあ、遊里が答えてくれるんだよね…?」

「へっ!?」

「遊里ちゃんっていっぱい清水くんに愛されちゃってたんでしょ?」

「夏休み中は電車を使わずにバイクに二人乗りで来てたの見たよ~」

「ええ!? マジで!?」

「あとさぁ…とある情報筋から何だけれど…。遊里が夏休み中に清水くんの家に同棲してたって本当?」

「ふえぇっ!?」

「そのリアクションは本当みたいね?」

「一緒にベッドで寝てたの!? いいなぁ…愛する彼氏と彼女が二人そろって同じ布団で寝るとか…」

「ちょ、ちょっと!? 何を想像してるのよ!?」

「そんなの決まってるじゃない? 遊里は武器を持ってるんだからぁ~」


 と、言って陽キャの一人が遊里さんの胸を突っつく。


「たくさん清水くんに愛されちゃった?」

「ソ、ソンナコトシテナイヨ!?」

「嘘ばっかり! 顔をそんなに真っ赤にしてたら、絶対に嘘ついてるってバレるよ」

「遊里ってば、気持ち良かったの?」

「……う、うん♡」

「きゃー! 可愛い!」

「もっと訊いちゃおうよ! 旅行とかも行ったりしたの?」

「……うん。一泊だけどね……」


 ああああああああぁぁぁぁ…。余計なことまで認めなくていいんだよ、遊里さん!?

 まさかの2学期の登校初日は散々な日だった。

 ボクと遊里さんへの陽キャ女子からの容赦ない尋問は始業式終了後も続けられたのだ…。

 て、絶対に情報を漏らしたのは、楓・瑞希くん経由の凛華さんだな…。

 ボクは橘花さんをジト目で睨みつけたが、口笛を吹いて、知らないふりを決め込むようであった。




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