第171話 周りの恋愛事情。

 ボクはずっと二葉さんの惚気話を聞かされていた。

 うん。まさか、ドリンク一杯だけでここまでずっと話が続くと思ってなかったよ!?

 もう、ドリンクを飲んでも氷が解け落ちていて、最早、水でしかない。

 あのぉ…、お代わりしてもいいでしょうか?


「でねぇ~、柊くんってばさぁ~もうすぐバスケットの遠征から帰ってくるんだよぉ~」


 正直なかなか長い話なんだけれど…。

 いや辛いとか辛くないとかいうより、ただ、ここまで陽キャの話を聞き続ける陰キャの気持ちを分かって!?

 もう、HPはゼロよ!

 ボクは精神的にはすでに瀕死の状態だ。

 女の人はお話し好きというけれど、まさかここまでのレベルだとは思わなかった。

 ガンガン来るから逆に攻撃をかわす余裕すらなかった。

 いや、まあ、これでもボクは遊里さんと話をするようになってからは、かなり耐えられるようになった方なんですよ?


「ちなみに、その柊くんって、クラスメイトの葵の弟ですよね?」

「え…。そうなの?」


 て、知らんかったんかーい!

 彼女は目をパチクリと大きく見開きながら、頬を引きつりつつ反応する。


「ええ、柊くんはクラスメイトの百合山葵の弟ですよ。葵はそれほど身長高くないですけれど、弟はお父さん似で身長が高くて、確かにカッコいいですよね」

「えへへ…♡」


 いや、別に二葉さんを褒めたわけではありません!

 何で、あなたが照れてるんですか!?


「でも、それなら、葵に……」

「ね、ねえ…ちょっと待って……」


 ボクが葵に間に入ってもらうことで円滑にことを運ぼうとしたが、それを察したのか、二葉さんはボクを制止させる。


「あの…、葵くんにはお願いだから、まだ教えないで欲しいの…」

「はあ…それは」

「どうして? って思うでしょ。でもね、これは私と柊くんの二人の問題だから、正直、葵くんの弟であっても、彼にはまだ入ってこないで欲しいの…。そりゃ、もちろん、そのうちバレることだし、その時はその時だと思うんだけれど…。でも、今はそのままにしておいてほしいかなって…。だから、私のことは誰にも話さないで欲しいの…。たとえ、遊里であっても…」


 少し俯き加減で表情を悟られないように目を逸らしながら、二葉さんは訴えた。


「そういうことなら、いいですよ…。ボクは誰にも言いませんから。上手くデートに誘いだしてくださいね」

「あはは…ありがとう。やっぱ優しいねぇ…隼くんは」


 ボクってそんなに優しいの?

 まあ、極力本人の考えを優先順位高めに考えてあげて、かつ、上手く結果が導けるように事を運べるように話に付き合っているところはあるけれど…。

 でも、だからと言って、それだけでボクを心優しいと決めれるものなのだろうか。

 遊里さんもボクのことを優しすぎてキュンキュンしちゃうって言われてしまう。

 彼女の場合は少し性的な感が否めないところがあるけれど、ボクのことを素直にそう思ってくれているのだから、それはそれで嘘ではないのだろう。


「でも、やっぱり私にとっては柊くんが好きなんだなぁ~」


 どうやら、二葉さんは今、恋する乙女になっているようだ。

 すべてが百合山柊第一優先で考えられており、他のことは何も考えられないといった感じのようだ。

 まあ、それでこそ恋愛なのではないかと思うのだが。


「ちなみにやっぱりエッチをするのって彼も中学生だからもうちょっと考えてあげた方が良いよね?」

「まあ、そうですよね…」


 ただ、ボクは知っている。

 中学生という年齢ながら、学園の校舎で初体験をしたカップルを…。

 まあ、敢えてそれをここで話すつもりはないし、後々であっても公開することはないと腹積もりすらしている。


「でもね、凜華はすっごく早かったんだよねぇ…」

「え…そうなんですか!?」


 凜華って橘花さんだろ? と、なると彼氏は当然、翼になるわけだけれども…。

 どっちが誘ったのだろう…。

 案外、二人きりになると翼が獣になるのかな…。


「私も話を聞いて吃驚しちゃったよ…。だって、1週間も経たない間にエッチしちゃったんだよ」


 な、何だって!? それは早すぎるでしょ!

 そんな気軽にエッチってするもんだったっけ?

 てか、女子トークってそういうことを曝け出す場なの!?

 男だとむしろ恥ずかしくて何も友だちと話したいとは思わないんだけれど…。

 女の方が強いメンタルを持ってるなぁ…。

 いやぁ、男ってトーフメンタルだわ…。


「どっちがってそりゃ、あんた翼くんに決まってるじゃない?」

「え…そうなんだ…」

「あ~、凜華のガツガツしたところしか見てないからそういうことを言うんだよ…。残念ながら、凜華はああ見えて乙女さんなんだよ」


 彼女は「ふふっ!」と知っているていで話を進める。

 人差し指をピンと立てて、ちょいとばかり先生気取りな二葉さんは、


「凜華はね、意外と攻められちゃうと、受けに回っちゃうんだよ。快感に悶えて、攻め立てられ続けると、思いっきり喘いじゃうみたい」


 そいつは予想外だ…。

 明らかにボクの知っている凜華さんと違う。

 むしろ、遊里さんがそのまますぎるっていうか何というか…。

 てことは、二葉さんはどうなるんだろうか…。

 て、人の性事情に対して口出しするのは確かに間違いだな…。





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作品をお読みいただきありがとうございます!

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