第170話 二葉さんのカレシ。
ボクは今、色々なものと戦わされていた。
目の前には、爆乳が迫ってくるし、同時に貞操観念のぶっ飛んだハーフな女の子に、彼女との「初めて」を話せと脅されている。
とはいえ、ここ、ファーストフード店なんだから、そんな話が簡単にできるわけもない。
さすがにボクもはぐらかそう、とするが、
「隼くんって陰キャで大人しそうなのに、あの遊里を満足させれるって本当に凄いよねぇ…」
「え…、そうですかね…」
「うん。遊里さぁ、詳しくは言ってこなかったけど、経験済みなことはわざわざ報告してきたもん」
うあ…。遊里さん、そこは話すべき場所ではありません。
あなたのその軽はずみな行動が、今、ボクを追いこんでますよ…。
「最初はちょっと痛かったんだけど、彼の優しさと力強さに身も心も任せちゃったら、何だか身体の奥から気持ちいいものが溢れてくるような感覚になって、身体が小さく震えたら、何だか温かいものを身体の中に感じたのぉ~」
「何ですか、それ…」
無表情で突如、官能小説の回想シーンでも読み始めたのかと思うような恥ずかしいセリフを聞いて、ボクも当然無表情で応答する。
すると、彼女はふっと口元を緩ませ、
「隼くんのイチャイチャラブラブな彼女が初めての翌日に私たちに語ってくれた会話だよ」
もう、全部知ってんじゃん!
わざわざボクから聞くこと何もないですよね!?
ボクは公衆の面前で何ていう辱めを受けてるんだよ!?
「彼女も相当初めてが良かったのか、君との相性が良かったのか知らないが、初体験の痛みなどよりも快感に身を任せた方が記憶に残っているらしい…」
「そ、そうですか…」
それにしても、二葉さんってちょっと…いや、かなりズレている人なのではないだろうか。
そもそもこんな大勢の人が集まる場所で、よくもこのような言葉が吐けるものだ…。
「で、初めてって付き合いだしてからどのくらいでしたの?」
もう、さすがに観念して答えた方が良いかもしれない。
ボクは肩をガックリと落したまま、答える。
「確か、1か月くらいですかね…。ムードというかそういうことしてもいい空気だったとは思いますよ。彼女がボクの部屋に課題を教えてもらいに来た時に…、その最初はキスをしたいなと思って、彼女が寝てるときに」
「ちょっと待って! 隼くんって意外と大胆ね…」
「そ、それは褒めてるんですか…?」
「大丈夫、貶してはないわ…。感心しただけだから」
ああ、そうですか。
ボクとしては、こういうことを他人に話すだけでもかなり恥ずかしいんですけれどね…。
「キスしようとしたら、遊里が起きちゃって、そのままキスする流れになったんです…。で、そのあと、その…まあ、彼女から誘われてしまって…」
「へぇ~、聞いてるだけで初心さが伝わってきてなかなかいいわね」
二葉さん、ヨダレが垂れてます。
仮にもあなたの親友の性事情です…。
「ああ、でもいいわねぇ…。あの子のような美貌があれば、確かに君もイチコロにされちゃうわよねぇ…」
いやいや、二葉さんの爆発的エロボディもなかなか誘惑しかないと思うんですけれども…。
本当に大丈夫かな…、その彼氏さんとやら…。
「ところで、その言える程度で結構なんですけれど、二葉さんと付き合うことになった彼氏さんってどんな人なんですか?」
「え、ウチの中等部の3年生だよ」
メッチャ、妹と同級生じゃん!
「てことは、学内恋愛ってやつですか?」
「ん~、まあ、きっかけは違うけど、そんな感じに最終的にはなったってことかな…」
「あ、出会いは異なるんですね…」
「うん。まあ、そんなロマンチックじゃないよ。そもそも出会いなんて」
「あ、そうなんですか…」
何だかちょっと期待しちゃったな…。
これだけの陽キャな人なんだから、もう少し変わった出会いをしたのかと思った。
「私がバッグを引っ手繰られたのを助けてくれたの」
いや、ちょっと期待しても良いのかも!?
「お互い私服だったから、同じ学校とは知らなかったんだよねぇ…。で、お礼もしたかったから、その後、お誘いしたんだけど、別に結構ですからって私よりも身長高くてクールな感じでさ~。その瞬間にキュンッ♡って来ちゃったの」
「な、なるほど…」
「でもさ、彼はすぐにいなくなっちゃって、ちょっとショックだったんだけど、授業の関係で別棟の教室に移動しようとして、ショートカットするつもりで中等部の校舎を歩いてたら、偶然教室から出て来た彼と出会えたの!」
世の中にはそんな偶然が起こりえるのか…。
いいなぁ…。ラブコメの世界観は…。
「向こうも『あっ』て顔してくれてさ…。で、そこからお昼ご飯を一緒に食べたりとかするようになったんだよね~」
「メチャクチャ甘いお話ですね」
「ああ、ごめんね…。ついつい惚気ちゃうんだ…。自分の好みにもばっちりあっててさ~。私って結構こんな感じで軽めじゃない? だから、彼氏くんにはしっかり者を選びたかったのよ。それと私よりも身長の高い人! これだけは譲れないの。彼氏くんに頭ポンポンとされて、少し上から目線で話しかけてくれたりしたら…きゃぁ~~~♡」
いや、聞いてるこっちが照れますから!
つまり、その彼氏くんは二葉さんにとっては抜群の相性の持ち主なんだろうな。
「でも、今、柊くんはバスケットボールの全国大会の関係で忙しいみたいなんだよね」
「へぇ…、そうなんですね。あと、彼氏くんって柊くんって言うんですね?」
「うん! メチャクチャカッコいいんだよ!
ん? どこかで聞いたような…。
そんなどこにでもあるわけがないような苗字をボクが聞き逃すわけもないし、それに忘れるはずもない…。
だって、その柊君は――――。
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