第169話 でーと・しちゅえーしょん

 ボクは二葉さんの前で少し固まってしまう…。

 そりゃそうだ…。

 彼女からのお願いは初デートに関して、アドバイスが欲しいというものなのだから…。


「あ、あの…。ボクらの初デートのことをお知りになりたいんですか?」

「うん! そうなの! 教えてくんないかな?」


 ボクらは、駅前の直射日光に耐え切れず、近くのファーストフード店に逃げ込んだ。

 まだ、食事には早いから、アップルパイと飲み物を注文する。

 彼女は席に着くなり、食いつくようにそう言ってきたのである。

 うーん。正直にここは言った方が良いのかと思う…。


「あの…ボクと遊里が最初、どういう状況かを知っていて、聞きに来てるんですよね…?」

「あ……」


 やっぱり、そうだったか…。

 ボクはその場で瞬時に挫折したくなった。


「ボクと遊里は、陽キャと陰キャの派閥闘争が始まったころくらいから付き合い始めたので、デートらしいデートは出来ていませんけど…」

「うう……、そうなんだ……」

「それにゴールデンウィーク明けから付き合ってるので、そのまま中間考査対策のために一緒に勉強するようになったので、これをデートと呼びます?」

「まあ、新しいジャンルとしては行けるかもしれないけれど、確かにちょっと変わってるわね…」


 新しいジャンルって…。


「あ、でも、彼の勉強を見てあげる心優しいお姉さんっていけるかも!?」

「まあ、それはありかもしれませんね…」

「分からない問題が出来るたびに…ウフ♡ えへへへへ♡」


 あー、良くない妄想してますよね…。

 ポリースメン! ここに変質者がいます。

 逮捕して下さ~~~~い。


「まあ、何をするのかはわかりませんが、とにかく相手は中学生なんだったら、その辺をきちんと考えてやった方が良いですよ。初心な心を淫欲に任せて襲ったら、犯罪ですよ」

「そ、そこまで言う? 隼くんって意外と毒吐けるのね」


 そりゃ、ボクだって毒くらい吐けますよ。

 ボクはジュースを一飲みして、


「今なら、夏休みの課題とかあるから、それを一緒にしてもいいかもしせんね」

「あ~、なるほど! それは名案だね!」

「でも、そうなるとどちらかの家でやるのか、それとも図書館でやるのか…とか考えた方が良いですね」

「あ~、なるほど……」

「とはいえ、初デートなんですよね? 初デートでいきなり二葉さんが家に彼氏くんを招くってのはちょっと如何わしい感が否めないというか…」

「どうして?」


 素直に理解していないようだ。


「まあ、色々と考え方はあると思うんですけれど、女の子の家に招き入れるのは…、その…シテくれてOKのサインと勘違いされやすいというか」

「私は別にいいよ?」


 ぶばっ!

 飲んでいたドリンク噴き出しそうになったわ!

 この人の思考はやはり、日本人のそれとは異なるようだ。


「別に私は彼と長い付き合いをしてもいいと思っているから、押し倒されちゃって、初めてを奪われても良いと思ってるよ♡」


 いや、恥ずかしそうに顔を赤らめながら、大胆なこと言うのやめい!


「まあ、初体験はお好きな時に…。相手も警戒しちゃうかもしれないですから、図書館とかの方が良いんじゃないですか?」

「えー、でも図書館って人がたくさんいるじゃない?」


 あー、やっぱり図書館のサービスを知らないらしい。

 ボクはスマホで図書館のホームページを見せる。

 ボクらが使った自習用個室サービスのサイト画面だ。


「へぇー、これはいいねぇ…。隼くんもこの個室を使って遊里のおっぱい眺めながら勉強していたんだね?」

「いや、見てませんから…。遊里のことどんな目で見てるんですか…、二葉さんは」

「うーん。まあ、純粋にエッチな子」


 うあ。

 的を射てるな…。

 案外間違っていないから、ちょっと問題だけど。


「でも、二人きりで勉強かぁ…。確かに距離が少しずつ縮まりそうだねぇ~。で、その後はどうするの?」

「え…。その後ですか?」

「うんうん! 君たちは勉強の後どうしたんだい?」


 興味津々にボクに顔を近づける二葉さん。

 おかげで重力に逆らえないビッグサイズのお胸がぽよんと揺れる。

 ボクの顔と同じくらいのサイズあるから、挟まれたら窒息死しそう…。

 て、何を考えてるんだ…。

 ボクは邪念を振り払い、


「でも、ボクらは残念ながら、その後は家に帰りましたよ…。だって、付き合ってることを公にできなかったですから…」

「うあ…。何だか、何だか悲しい…」

「そう言わないでください…。思い返すとボクも辛くなるので…」

「ああ…ごめん。でも、公にできなかったころでも仲良くなってきたら、どうしてたの?」

「うーん。ボクの家に来たりしてましたね」

「ほほぅ…」


 意味深にこちらに視線を向ける二葉さん。

 何を期待してるんだろうか…。


「ボクの家って、妹と二人暮らしだから、昼間は誰もいないので、色々と話をするにはもってこいだったので…」

「ああ、そこでついに遊里の初めてもいただいちゃったわけだ~」


 すっごい意地悪な微笑みを浮かべながら、ジュースをすする二葉さん。


「ええ…、まあそうですけれど…」

「きゃ~~~~~、ポリースメーン! ここに変態さんがいるぅ~」


 いやいや、茶化すなよ。

 それと変態は妄想全開なアンタの方だし!


「あ、あのさぁ…。その辺、詳しく聞けちゃうかな…」


 二葉さんはもはやマスコミもびっくりの食いつきようだ。

 本当にあんたは遊里さんのお友達なんでしょうか…。

 それとも友人のエロ事情を単に知りたいだけの人…?




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