第168話 二葉さんの「春」

 今日は変わった人からお呼び出しがかかった。

 で、遊里さんに相談するかどうするか悩んだのだが、LINEで連絡が来た時に、


『遊里には内緒で動いて!』


 と、懇願されたので仕方なく、遊里さんには友だちがゲームのことで相談があるみたいだから会うという嘘をついた。

 ごめん…遊里さん。

 その連絡してきたのは、遊里さんの友だちである二葉雪香ふたばゆきかさんだった。

 彼女は日本人の父親とロシア人の母親を持つ所謂ハーフで、真っ白な雪のような肌とサラサラな金髪をポニーテールに束ねて、ピンク色のメガネを普段はかけている。

 むろん、スタイルも良くて、母親譲りの巨乳(いや、爆乳が正しいな…)の持ち主だ。

 本人はあまり胸が大きいことを良いとは思ってはいないようで、貧乳の子を見つけると、あげられるもんならあげたいとなかなかの売り言葉を投げつけていることが多々あったりする。

 以前、社会見学のときにはその胸で攻撃されたこともあったし、通学中に好きだと言われたこともあった…。

 もちろん、すでにボクは遊里さんと付き合っていたから、彼女の付き合いたい願望は実ってはいないのだが…。

 ありがたいことに今日も遊里さんはアルバイトでアミュンザの天丼屋に行っている。

 駅前の噴水広場のベンチに座っていると、彼女はやってきた。


「お待たせ~」


 いつものように垢抜けた軽い感じのキャラ。

 それと、陽キャ、陰キャ隔てなく誰とでも話をすることから、クラスの中でも人気が高い。

 まあ、敵を作らないタイプの女の子という感じだろうか…。


「二葉さん…おはよう」


 ボクは二葉さんを見上げて一瞬、思考が停止しそうになる。

 それくらい彼女の服装は…何かすごかった…。(語彙力!?)

 デニムのカットパンツに、上がカーキ色のタンクトップ(へそ出しバージョン)といういでたちで来たのだから…。

 もう、周囲の人たちに対して、私のこの最強ボディを舐めまわすように見てくれと言わんばかりの感じだ。

 それにやはりいつ見てもお胸がデカい…。

 いや、デカすぎる!

 そんな爆乳がこちらに向かて走ってくるのだ。

 ぼよん! ぼよん!

 と、なぜかボクの目にはスローモーションのように飛び込んでくる。

 周囲の人もチラチラとその胸を見ている。

 いやぁ、まあ、これだけ立派だったら見ちゃうよね…。


「いやぁ、今日も暑いよねぇ~。もう、蕩けちゃいそう…♡」

 

 ボクの前でかがみこむような姿勢にならないで…!?

 ボクは一体、どこに視線を合わせればいいのか分からない…。

 しかも、何か、今艶っぽく言いませんでしたか?


「本当ですね…。こんなに暑いのに、今日はどうかしたんですか?」

「うーん、とね…。私としてくんない?」

「へ……」


 ボクは明らかに返事じゃない声を出したと思う。

 そりゃそうなるだろう。

 彼女は知っているはずだ。

 ボクが彼女の親友の遊里さんと付き合っているはずだから。

 そもそも、一度痛い目にもあってるはずなんだけれどなぁ…。

 社会見学の時にボクに色仕掛けを仕掛けて、二葉さんがイチャイチャしようとしてきたときに、遊里さんはどこに隠し持っていたか分からないが、エッチなグッズを使って、彼女を撃退したことがあった。

 それを分かっていて、ボクをデートに誘うとは、何事ぞ!?


「あ~、勘違いしてるね…。キミキミ! 今日は模擬デートというものだよ」


 ふふんっ! と二葉さんは胸を張って、今日のテーマを軽く話してくれた。


「じ、実はね…。私にもついに春が来たんだよ!」


 まあ、夏ってそういうのが盛んになる季節だったりしますからね…。

 でも、「ひと夏の恋」ともいうからちょっと不安でなりませんけれど…。


「実はね、相手の子はまだ中学生なんだけどね…」

「ええ…!? それまた凄いですね。お姉さんになるんですね」

「うん。でもね、すっごく優しいんだよ。隼くんみたいにさぁ…」

「まあ、ボクがどう優しいのかはボクはあまり分からないので、あれですけれども…」


 ボクは頬を人差し指でポリポリとかく。

 二葉さんは遊里さんからボクのことを色々と聞かされているのかもしれない。


「君の優しさは遊里からイヤっていうほど聞かされているんだよ!」


 ああ、やっぱり…。


「あれはもう、完全に惚気だよね! 急に乙女な顔するから何だかムカつくけれど…。もうちょい陽キャらしくしてほしいっての!」

「あはははは……」


 ボクの目の前でも行動力があるところは、陽キャ 全開な時はあるけれど、それ以外の二人きりの時は遊里さんは乙女だと思う。

 まさに恋する乙女っていう感じで、照れちゃうことも多々あるし、大胆な割におっちょこちょいだったりと何だか可愛らしいところがたくさんある…ってこれも惚気か…。

 バカップルとはまさにボクらのことなのかもしれない。


「だからさぁ、今度、私とその子が初デートするんだけれど、どうすればいいかちょっと分かんなくて教えて欲しいんだ!」


 ええ…。

 それってかなりの無茶ぶりすぎないだろうか…。

 だって、ボクらの恋愛のこと、知ってるはずですよね…?




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