第110話 私もイチャイチャしたいお年頃。

 何だか身体がふわふわとした感じ…。

 夢なのかも…。

 私ってば軽く寝るつもりがしっかりと寝てるのかな…。

 そうよ! 瑞希と一緒に課題を片付けて、疲れて寝ちゃってたんだわ…。

 でも、何だろう…。この感じ…。

 何だか呼吸も乱れている―――。

 しかも、何だかピクンピクンと身体が反応してしまっている。

 もう! 夢の中でまでエッチな気持ちにならなくても良いのよ、私は…。


(あぅ…。原因は…瑞希ね……)


 私に対して瑞希は執拗にキスをしてくる。


(私…何て夢を見てるのよ……)


 瑞希と私の目が合う。

 さぞかし、私は蕩けた目をしていることだろう…。

 男を誘ってしまうような目で―――。

 瑞希はその唇を、さらに重ねる。

 ちゅ……ちゅぱ…ちゅる……

 いっぱいキスされてる。

 いっぱい愛されている。

 いっぱいイチャラブしている!!

 私の心はもう「好き」でいっぱいに満たされる。

 私は彼の唇、そして舌を感覚でいっぱい味わう。

 唾液が絡まり、身体が敏感に瑞希を欲しがってしまう。


(て、あれ? 夢ってこんなにリアルだっけ…? 舌の絡まりもすっごくリアルだし、私のあそこがキュンってしちゃう感覚もすっごくリアルに脳細胞をしげきしてくるんだけど…。え…。ちょっと待って…?)


 私は彼を抱きしめるように両腕を絡ませると、


「ねえ、瑞希……。これって、夢?」


 私は瑞希と唇を離して、彼に問う。

 瑞希はニコリと微笑んで、


「俺と楓にとって、夢のような気持ちのいい…」

「そっか…。現実の世界なんだ……。て、やっぱりお前かぁ―――――っ!!」


 やっぱりそうか!

 やっぱり夢じゃなかったんだわ。

 だって、この感覚はおかしいと思っていたのよ。


「何で、私の身体を使ってエロいことしようとしてんのよ!」

「いや、もう色々してるからエロいことしてるつもり」

「冷静に肯定すんな――――っ!」

「ええっ!? なんで怒ってるの!? あんなに喘いで気持ちよがっていたのに…」

「そういう問題じゃないのよ。私が寝ているときにエッチなことをしようとしているのが問題なんです」

「これが本当の…」


 誰が上手いこと言えと…。

 私はツッコミを入れたかったが、それどころではない。


「はぅん♡」

「ダメだよ、声出しちゃ…。もう、お兄さんたち帰って来てて、晩御飯の準備してくれてるんだから…」

「じ、じゃあ、エッチなことしないでよぉ…」


 私は声を出すまいと、唇を少し噛む。

 もう数分間触られ続けていて、身体に思うように力が入らない。

 偶然とは恐ろしいもので、そんなタイミングで私の手は彼のちょうど下腹部に触れてしまう。


「ちょっと! あんた…、なんでもう…」

「まあ、これは生理現象…」

「知ってるわよ! でも、ちょっとは自重しなさい!」

「わ、分かった…。ところで…」

「な、何よ…」

「お前は一回…そのしとかなくていいのか?」

「う……」


 そりゃ、ここまで触られていたら、正直、最後までしておきたい気持ちもある。

 でも、そこまでしたら間違いなく、ストッパーが外れてしまいそう…。

 午前中、一回戦で終了できたのも奇跡かもしれない…。


「べ、別にいらない…」


 私は目線を合わせずに拒否する。

 気持ちの中では、ここまでされてて気持ちを落ち着かせるためにはしてもいいかも…と思っていたことを悟られないようにするために。


「そう。まあ、いいよ」


 瑞希は呆気なく引き下がる。

 身体を起こし、私を後ろから抱くようにして、床に座る。

 彼はベッドを背もたれにするように私を抱きしめる。

 私は彼の身体に身を預ける。

 ふと視界に私のさっきまで付けてあったはずのブラジャーが床に落ちているが、これの犯人も後ろから私を抱きしめているコイツだろう…。


「あんたさぁ…、ブラジャー外して部屋に転がしておくの止めてよね…」

「あ、ごめん…。興奮しちゃってて、外した後どこに置いたか忘れてた…」

「いや、晩御飯出来たら呼びに来るでしょうが…。その時に見えちゃうじゃん…」


 見られるのもまずいけど、たぶん、遊里先輩が声を掛けに来るはず。

 そうなると、遊里先輩は想像力というか妄想力が猛々しいので、きっと余計なところまで話を持っていってしまうに違いない。


「いい? ここは私の家なんだから、あんまり好き勝手しちゃダメよ」

「分かってるって~」

「もう、全然分かってないでしょ…。どうしてそんなにリラックスできちゃうのかなぁ…」

「簡単なことだよ…」


 瑞希は私の顔をひょっこりと覗き込む。


「気の許せる人と2人きりだからね」

「自宅ではどうなのよ…」

「姉貴がいるから、気が休まらないねぇ~。いつ家から追い出されるんじゃないかって、常に冷や冷やしてるから、あんまり喋らないしな…」

「じゃあ、この間の写真は驚いてたんじゃない?」

「この間? ああ、成績発表時のツーショットか? 別に何にも言われなかったけど? でも、驚いていただろうな…。俺が彼女と一緒にニコニコしながら写真に写ってるんだからな…」

「あっちのほうが本当の瑞希なのに、学校でも誰にも見せないのね…。校庭で歩いているときも私だけ微笑んでるってみんなから言われるんだけど」

「ま、最初からそういうキャラが定着してるんだから、変えるつもりはないよ。先生からも聞かれたことにはきちんと受け答えしているから、面倒くさい子とも思われてないみたいだし」

「まあ、そりゃ教師なんてそんなもんだろうけど…。ま、二人きりの時はいつでも素の俺でいいんじゃないか?」

「私はそれでいいけど、疲れない?」

「うーん。もう、慣れたかな…」

「あ、そう。で、この後、一緒にご飯を食べるわけだけど、どっちの自分で行くの?」


 瑞希は少し悩む素振りをして、


「たぶん、素じゃない俺だろうな…。正直、まだ距離感掴めてねぇーし。それに、二人とも姉貴の友だちだろ? 余計な話をされても困るからな…」

「分かったわ…。まあ極力うまく話には乗って頂戴よ。途切れて気まずいのはさすがに嫌だからね」

「分かったって…。それくらいはできるから、安心しろって…」


 そういうと、私の頬に軽くキスをしてくる。

 で、またタイミング悪く、それを食事の用意が出来たことを伝えに来た遊里先輩に見られてしまうのだった…。


「もしかして、お取込み中?」

「いいえ、イチャラブしてただけなので、問題ありません!」


 私は強く言い返すと、遊里先輩は「じゃあ、待ってるわ」と言って引き下がってくれた。

 引き出しから新しいシャツを取りだし、古いものと替える。もちろん、ブラジャーも付けて。


「じゃ、晩御飯食べに行こっか」

「うん、わかった…」


 瑞希は私の後について部屋を後にした。

 さ、気分入れ替えて、今日はすき焼き食べるぞぉ~!



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作品をお読みいただきありがとうございます!

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