第97話 隣の部屋で悶絶してしまう私(橘花凜華side)
わ、わ、わ…………。
私と翼の初夜を迎えた部屋で、今日は遊里と清水くんが一緒に泊まっている。
夕食のときは豪勢なディナーを談笑を交えながら食べておられましたわ。
本当に仲睦まじい姿を見せていて…、そう! まるで長年連れ添った夫婦のような雰囲気を出しつつも、まだ初心なところが残っている、そんな感じですわ。
遊里には申し訳ないけれど、今日はあなたたちのお付き合いについて「見せて」頂こうと考えておりましたの。
途中でポスター撮影をさせてもらうとお話をいたしましたのは、そちらに気を配って、私の存在に気づかせないようにしようと思っておりましたの。
そして、いよいよ、ふたりが寝室に入っていきましたわ。
さすがにここからはお付きのカメラマンであっても、プライベートな部分になるから、さすがに写真撮影って言うのはちょっと…。
一応、私がカメラをもって、隣の部屋にスタンバイをする。
ここからの夜景はとっても綺麗だから、間違いなくそれを遊里は見に来るはず。
そこで甘々な二人の様子を撮りたいと思っておりましたの。
予想通り、入室と同時に、心躍らせてベランダに歩み寄る遊里。
ベランダに遊里と清水くんが一緒にやってきて、夜景を楽しんでいる。
あらゆる場所にピンマイクをセットしたおかげで、音声は私の耳のイヤホンにダイレクトに伝わってくる。
え? 何? 親友に対して失礼じゃないかって?
わ、分かってますわ。
むしろ、商魂たくましいと言って欲しいくらいですわ。
もちろん、ポスターに使用するくらいなんですから、エッチなものは使用できませんわ。
その辺はきちんと考えたうえで、撮影しておりますもの。
私は隣の部屋のベランダのカモフラージュのために設置した観葉植物の間にレンズを差し込み、二人をファインダーで捉える。
髪の毛をかき上げつつ、清水くんの方を向いて微笑む遊里。
カシャッ。カシャッ。
私の耳元に乾いたシャッター音が鳴る。
ふんわりと微笑むあの笑顔は本当に可愛いと思いますわ。
女の子から見てもとても魅力的な笑みですもの。
あんな笑顔をいつも見れているなんて、清水くんは幸せ者だと思いますわ。
さらに言うならば、遊里はスタイルも最高に良い。
身長はそれほどかもしれないですけど、その辺のマンガ雑誌などの表紙を飾るグラビアアイドルよりも可愛いと思うし、スタイルも抜群ですわ。
すでにポスターにできる写真は色々と撮れている。
ひとつだけミスったと言えば、ディナーを食べているのがカジュアルな服で食べてしまっているところ。
そこだけはムードと少しだけミスマッチだったと反省していますわ。
「とはいえ、遊里は分かっているのかしら…。撮影されているってことを…。もしかして、忘れているんじゃないかしら。あの子のことだから…」
私はそんな疑問を持ちながらも、瞬間瞬間を切り取っていった。
いい写真が撮れたことを液晶画面で確認して、編集に渡そうと思い、その場を後にしようとした。
その時――――。
私はイヤホンの電源を切り忘れていましたの。
さすがにプライベートまで覗き見するほど性格が悪くはありませんわ。
ただ、入ってくる音声に釘付けになってしまう。
『いや、ごめん、ボクは遊里を見てた……』
『え……?』
『何なに? また、ズルいセリフ?』
『ううん…。本当の気持ち…。素直な気持ち……』
『もう! だから、そういうのがズルいって言ってるの!』
『……んちゅ…ちゅちゅ……』
―――――!?
こ、これはキスをしているの!?
いやらしく唾液を絡ませるような濃厚なキス。
『お願い…。私を絶対に離さないでね…』
『うん…。ボクは絶対に遊里を離さないよ…。大好きだからね…』
『私も、好き、好き、大好き!』
その後のキスはさらに激しいキスだった。
遊里、私に対して、エッチが激しそうとか言ってましたわね…。
ええ、確かに私と翼の初夜は恥ずかしながらも激しいものでしたわ。
お互いの意識が飛んでしまいそうなくらい…。
でも、遊里はどうなの!? もっといやらしいじゃないの!?
『ねえ、待って…』
『???』
『ここじゃなくて、ベッドでしてほしいな…』
『………』
『いつもは、私からしてるけど、今日は隼からしてほしい…』
うぐっ!? 今のはかなりヤバイですわ。
ちょっと鼻の奥から生温かい
そのあとは遊里の甘い吐息と喘ぎ声だけが私の耳にダイレクトに届いてしまう。
まるで目の前でエッチをされているのを音声だけ聞かされている感じですわ。
遊里と清水くんの「愛」を生で聞いてしまいましたわ。
……………………。
て、何回やりますの!?
す、すでに6回目を超えてますわよ!
しかも、回が増すたびに激しさが増しているように感じる。
もしかして、二人とも絶倫!?
私の鼻に差し込んだティッシュもすでに何回目の交換か分からない。
そろそろ私が出血多量で倒れてしまうかもしれませんわ…。
まさか、これほどまでとは…。
脳内に焼き付いてしまいましたわ。
そ、それとこのムズムズとした気持ちをどうしろと…?
今日は翼は用事があって、こちらには来れないようなのに…。
再び私の耳に飛び込んでくる、遊里の喘ぎのような吐息に私は興奮してしまう。
「わ、私も、もうダメ…ですわ……」
激しい夜を迎える隣室の横でカメラマンだった私は小刻みに痙攣してしまうのであった。
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