第96話 ボクたちは濃厚に愛し合う

 ボクらはディナーを堪能した後、自室に戻った。

 戻ってリビングに入った瞬間にボクらはその景色に目を奪われた。


「凄く綺麗…」


 遊里さんはため息を漏らす。

 リビングの目の前には、街の夜景が広がっている。

 白、赤、黄、緑…様々な色の灯りが煌めき、そして瞬いていた。

 山の稜線には、高圧送電線の灯りが定期的に明るく点滅している。

 様々な明かりがパノラマでボクらに見せてくれる。

 遊里さんは小走りでベランダに向かう。

 明るいリビングから暗いベランダに出ると一層、その光が一段と際立たされる。


「こんな綺麗な夜景までついてくるなんて、本当に最高の初お外デートだったわ…」

「本当だね」


 遊里さんは景色を眺めながら、ほんのりと顔を赤らめている。

 ボクはそれを横目に見る。

 風で薙いだ髪を、サッとかき上げる。

 形の整った綺麗な顔が露わになる。


「きれい」

「そうね…。本当にきれいな景色…」

「いや、ごめん、ボクは遊里を見てた……」

「え……?」


 彼女はちょっと驚くようにこちらに振り向く。

 ボクと目があると、ふんわりと彼女は微笑み、


「何なに? また、ズルいセリフ?」

「ううん…。本当の気持ち…。素直な気持ち……」

「もう! だから、そういうのがズルいって言ってるの!」


 ボクは彼女を抱き寄せると、そっと唇を重ねる。

 彼女もそれを待っていたかのように、スッと瞳を閉じて、ボクの唇に重ねてくる。

 そして、そのままボクと彼女は抱きしめ合いながら、キスをした。


「「……んちゅ…ちゅちゅ……」」


 ボクは目を開けると彼女の目尻からスッと涙が零れ落ちている。

 驚いて、ボクは唇を離してしまう。

 彼女は瞳を潤ませたまま、ボクの耳元で囁いてくる。


「お願い…。私を絶対に離さないでね…」

「うん…。ボクは絶対に遊里を離さないよ…。大好きだからね…」

「私も、好き、好き、大好き!」


 ボクらは再び唇を重ねる。

 さっきのしっとりとしたキスではなく、気持ちがさらにこもった熱いキス。

 舌を絡めて、周囲を気にしない、音を立ててるキス。

 ボクはそのまま、彼女の首筋を舐める。


「…んんっ…!?」


 そして、耳をペロッと舐めると、彼女は身体をピクリと撥ねさせる。

 そのままボクはリビングのソファに押し倒す。

 もう、ボクの気持ちがおさまらない。

 遊里さんに興奮してしまい、さらにキスをする。

 自分でも驚く。ボクってこんなに獣になれるんだって…。

 彼女の服を脱がそうと手を掛けたときに、遊里さんがその手を押さえる。


「ねえ、待って…」

「???」

「ここじゃなくて、ベッドでしてほしいな…」

「………」

「いつもは、私からしてるけど、今日は隼からしてほしい…」


 ボクはコクリと頷くと、チュッとキスをして、遊里さんを抱き上げる。

 そのままベッドに移動して、そっと下ろす。

 ボクは再び、キスをする。

 彼女の眼は蕩けて、すでにボクに身を任せてしまっている。

 可愛いと思うと同時にエロくも感じた。

 ボクも少しずつそれに応える。ボクらは久しぶりに周囲を気にせずに抱き合った。

 彼女を絶対に離したくないという思いで彼女のすべてを包み込んだ。



 ボクが目を覚ますと、遊里さんの寝顔があった。

 お互いそのまま寝てしまったのか、掛布団の下は下着だけつけたままの姿だった。

 彼女はボクの右腕を抱き枕のように抱きしめながら、寝息を立てている。

 その寝息はとても穏やかで、顔もほんのりと微笑んでいた。

 ボクはそっと左手で彼女の顔を撫でる。

 さらに彼女の顔は微笑んだように感じる。

 

「ボクの方こそ、捨てないでね…。遊里…」


 ボクはそう囁くと、彼女の頬に軽くキスをした。

 彼女はふふっと微笑んだ。起こしたのかと思ったが、彼女は微笑んだまま、安らかな寝息を立てていた。

 その顔は本当に可愛い。

 ボクは彼女に抱き枕にされながら、再び瞳を閉じた。




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