第93話 いちゃらぶは周囲の視線も気にしません
ボクらはアトラクションから出ると次のアトラクションまでの間少し飲み物を飲んで休憩することにした。
「はい、買って来たよ」
ボクが遊里さんにカルピスウォーターを手渡す。
「あ、さんきゅ~。ん~、美味しい~。結構、VRって疲れるのね。今も現実と仮想がどっちつかずみたいな感じだよ」
「あはは、VR酔いってのがあるなら、それかもしれませんね」
「でも、面白さは半端なかったわ! これは人気が出て当たり前よね。それにしても、凜華のやつ、アトラクションで客に敗北を味合わせるとは逆転の発想で作られたのね…」
遊里さんはシアター型アトラクション「スペースファイター」で勝利の証としてもらえたピンバッジを見ながらぼやく。
「まあ、確かに負けたときは敗北感はあるかもしれませんが、勝てるまで色々と考えて取り組もうとしますからね。だって、今回の勝てた方法もきっと想定されている1つだと思いますよ」
「でも、あれは本当に凄かったわね…」
「本当ですよね…」
ボクは自分の右手を握ったり開いたりを繰り返す。
あれは明らかにチームワークの勝利だ。
自分のことを知らない人たちが自分の提案に乗ってくれて協力して旗艦「ヘル・ジ・アスター」を墜とすことができた。
ピンバッジがもらえた客は喜んでいたが、次回には少しシナリオが変わることだろう。
同じ方法はそのまま通用しない。
それがこの「スペースファイター」の良いところでもある。
「あ~、でも本当に楽しい~! 隼のことがもっと好きになっちゃったよ」
「え? ボク、何かしました?」
「もう、そうやって無意識で私を惚れさせちゃうんだから…。本当に困った彼氏だわ」
ぷぅっ!と 遊里さんは頬を膨らませる。
本気で怒っているわけではなく、冗談で言っているようだ。
でも、その顔が可愛い。
ボクはその頬を人差し指でツンと突く。
「も、もう…! 何すんのよ! 私、怒ってるんだから! ぷんぷん!」
いや、本気で怒っている人はぷんぷんとか言わないって…。
ボクは遊里さんの肩をそっと掴み、ボクの方に抱き寄せる。
そして、耳元に口を近づけて、そっと囁く。
「大丈夫。ボクは遊里のことがとっても好きだから。遊里がボクを捨てない限り、ボクは遊里と一緒にいてるよ」
「――――――!?」
遊里は、顔を真っ赤にしながら俯き加減になる。
周囲の人から見ると、ベンチに座ってイチャついているカップルだ。
遊里さんはボクの方に振り向くと、少しジト目で顔を近づけてくる。
「だから、そういうのがズルいんだって…。私の気持ちをキュンってさせるのが上手すぎるよ」
「別にわざとじゃないけど、遊里を見てると自然とそうなっちゃうんだよね」
「うふふ…。相性バッチリね、私たちって」
そういうと、遊里さんは突然、ボクの唇に自分のを重ねてくる。
周囲の目があるのに気にせずキスしちゃえるボクらって何だかなぁ…。
そう思いながらも、この嬉しい状況を拒否することが出来ず受け入れてしまう。
「今までこそこそ隠れていたのに、今日は凄く大胆だね」
「今まで制限されてきたことから解放されたから、その反動って思ってよ」
「あはは…。じゃあ、夜はもっと激しいのが来そうだね…」
「うふふ…。それは夜になってからのお楽しみよ…」
「死なない程度に頑張るよ…。ところで、次はどこに行くの?」
「次は演劇系ね」
「それも楽しみだね」
「ちなみに今は、西洋演劇と歌舞伎の融合がテーマらしいわ」
「なんだか、凄い組み合わせできますね」
「まあ、元々のタイトルから見るに、アニメのようだから、宝塚と歌舞伎が夢の融合を実現って感じじゃないかしら」
「そう言われるととても分かりやすいですね」
「じゃあ、そろそろ時間も近いから行く?」
「そうですね。ボクも楽しみにしてるんで、行きたいと思います」
「じゃあ、行こっか」
ボクらは残っている飲み物を飲み干して、ダストボックスにカップを捨てる。
遊里さんはそのままボクの手を取り、ギュッと握りしめる。
「私が隼を離すわけないじゃない! だって、最高の彼氏なんだから♡」
彼女は最高の笑顔で振り返りながら、ボクに言ってくる。
さすがに公衆の面前であることを考えると少し恥ずかしくなる。
ボクは彼女の手をギュッと握り返し、
「ボクも離さないよ。最高の彼女をね!」
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