第89話 どうしても雰囲気に抗えない二人。

 ランチをまったりと時間を取って食べ終えた後、ボクらは午後からのシアター系を楽しむために、一度部屋に戻り服を着替えることにする。

 一緒に手を繋いで部屋に戻っていく姿をたまにホテルのスタッフの人とすれ違うが、礼儀正しすぎるというくらい、一度立ち止まって笑顔で「ようこそ、おいでくださいました」と挨拶をされてしまい、こちらが気まずくなるくらいだった。

 ブレスレットを電子キーの部分に触れて解錠をし、部屋に入る。

 リビングから一望できる景色は最初案内された時よりは落ち着いて見れたが、本当に綺麗なものだった。


「ねえねえ、シアターの予約されている時間がスマホに届いていたわ! 次は2時からだからもう少し時間があるね」


 遊里さんがそういうので、ボクが時計を見てみると、今はお昼の1時になったばかりだ。


「ねえ、折角の水着姿なんだから、隼もスマホで写真撮ってよ!」

「ええ!? いいの!?」

「そりゃ、彼女なんだから別にいいでしょ。むしろ撮りたくない?」


 ボクはブンブンと顔を横に振る。

 そんなの撮りたいに決まっている!

 だ、だって、目の前にいるエロカワ系、学園最強の美少女の水着(しかも、白ビキニ!)姿なんて、そう撮影できるものじゃない…。

 ボクの中の何かがムクムクと入道雲のように湧き上がる。


「じゃあ、決まりね。まずはベランダで撮ろうか」


 広いリビングを抜けると、大きな窓があり、そのサイドからベランダに出ることができた。

 ベランダにもたれかかるようにしながら、ボクの方を見る。


「こんな感じで胸を突きだしたらちょっとエロいかな…」

「うん。可愛いとエロが混ざり合って、凄く良い!」

「もう、それ、褒めてるの? それとも単にエッチだって言いたいの?」


 えっと、後者です。

 でも、そんなこと言って機嫌を損ねてしまうと撮らせてもらえなくなるので、


「もちろん、褒めてるよ。だって、遊里の魅力が溢れ出てるもん」

「んふふ。そう? じゃあ、撮って?」


 ボクはスマホで何枚か撮る。

 次はベランダに腕を置き、こっちに振り向いているような感じだ。

 スマホで撮ると、自分目線で彼女が笑いかけているような写真になる。

 次は部屋に戻ってきて、ソファに腰を下ろす。

 少年誌のグラビアのような写真が何枚も撮れる。

 なかには、ソファに寝転ぶような感じで、お胸が重力に逆らえず、ふにょんと潰れたような感じの写真もある。

 いや、これはちょっとエロ過ぎる。

 ボクは自分のスマホの写真のフォルダが水着の遊里さん一色に染まるほど撮りまくった。

 ただ、何だろう。ボクの中に悶々とした意識が沸き起こる。

 ここまで見せつけられて、お応えしなくていいのだろうか…。


「いっぱい撮れたねぇ~。じゃあ、そろそろ着替える? て、どうしてそんなに砂が付いてるのよ?」

「え? うわぁっ!?」


 自分もいつの間にか、知らない間に砂を身体にたくさんつけてしまっていたようだ。

 うう。何だかざらざらすると思ったらそういうことか…。


「もう、仕方ないなぁ…。プールの後でまだシャワー浴びてないから着替える前にちょっと一緒にシャワー浴びちゃわない?」

「え? あ、そうだね…」

「でも、私は水着のままだよ…。まだ昼なんだから!」


 ボクは遊里さんに手を引かれながら、シャワールームにやってくる。

 すごく広く大人なムードのあるシャワールーム。


「じゃあ、私は汗とか洗い流すよ。隼は砂を流しなさい」


 シャワーヘッドを自分たちの方向に向け、お湯を出すコックをひねると、程よい温かさのお湯が出てくる。

 プールでかいた汗が一瞬で洗い流される。


「隼って昼からも元気なんだから…。明日は海の日で祝日なんだから、ここに泊まるんだから…。もっと温存しておくべきよ」

「え!? それは初耳…。宿泊するの?」

「そうよ。楓ちゃんも今日は彼氏の家でお泊まりするみたいよ。今度は私に男をさらにメロメロにするテクニックを聞きに来てたくらいだし…」

「エロい兄妹きょうだいでごめんなさい」

「ホント、イケないわね。特にお兄ちゃんがエロいと妹に伝染しちゃっているようだし…」


 そういうと、遊里さんはボクの腰のあたりに腕を回し、きゅっと抱きしめてくる。

 ボクは目の前にある色っぽく少し頬を赤く染めた美少女の顔に、唇に自分も近づける。

 

「…ちゅっ…んちゅっ……」


 シャワールームのムードにボクら二人は明らかに流されてしまっている。

 昼から濃厚な舌を絡ませたキス。


「もう、本当にエッチなんだから…」

「それは遊里もだよ…」


 ボクは再び、キスをする。

 今度はボクから誘うように、そして、ボクは遊里さんのビキニの後ろの紐をスッと解く。


「やってくれたわね…隼…」


 遊里はニヤニヤと微笑みながら、ボクと再び濃厚な舌を絡めたキスをしあったのであった。

 その時はボクらは一糸まとわぬ姿だったけど、何も恥ずかしいとすら思わなかった。

 ボク達はお互いを愛し合っているから…。



―――――――――――――――――――――――――――――

作品をお読みいただきありがとうございます!

少しでもいいな、続きが読みたいな、と思っていただけたなら、ブクマよろしくお願いいたします。

評価もお待ちしております。

コメントやレビューを書いていただくと作者、泣いて喜びます!

―――――――――――――――――――――――――――――

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る