第84話 愛しい彼女の水着姿

「さてと、これで準備万端ね!」

「うん、そうだね…。ボクの水着はもう見えているような気がするけどね…」


 ラッシュガードのようなアウターを着ているものの下からはハーフパンツ上の水着が見えている。

 当然、上半身は裸だから、水着はもうバレているに等しい。

 遊里さんは上下をラッシュガードできちんと守られていて、どの水着を選択したかは分からない状態になっている。


「じゃあ、そろそろ行く?」

「うん、そうだね。確か、このホテルから直通の通路を通っていけば、人にあまり会うことなく行けるらしいよ」


 ボクはそう言って、ホテルのフロア図が載っているリーフレットを見せる。

 遊里さんはそれを覗き込み、うんうん、と頷いて、


「本当だね。このホテル本当にVIPな人たち専用って感じだね」

「まあ、周辺にも同じようなホテルが建っているけど、たぶん、それぞれ少しずつランクが違うんだろうね」

「まあ、折角、凜華がくれたチケットなんだから思う存分、楽しませてもらおうよ!」

「そうですね! ボクも同意見です!」


 ボク達は手を繋いで早速、プールに向かうことにした。

 不思議なことに、本当にプールに向かう途中に人と出会うことなく行けたので、逆に怖くなったくらいだったけど。



 宝急アイランド内のプールは夏休みからの営業を始めるということもあり、現在はボクらのようなVIPの人にしか開放していないらしく、プールについてもそれほど人がいなかった。

 せいぜい5、6組といったところだろう。

 普通にボクらが知っているプールの状態とは異なり、ガラガラな状態であった。

 それでも売店は営業していて、軽食や飲み物、アイスを購入することはできる状態になっていた。

 どうやら、この時期にアルバイトなどを育成する時期なのだろう。

 ボクらは適当に日傘のある2人1組のチェアが置かれた場所に着くと、早速ラッシュガードを脱ぐ。

 ボクは来るときと変化のない黒いハーフパンツ型の水着。

 そして、目の前の美少女、遊里さんは―――、


「んふふ、見たいかね? 私の水着姿を…」


 もったいぶるようにボクに近づいて耳元で囁いてくる。

 チェアに座ったボクに覗き込むようにしてくるからラッシュガードの中からたわわな果実の谷間がチラリと覗いてくる。


「み、見たいというのが本音かな」

「もう、君という人は本当にエッチだなぁ~」

「べ、別にいいじゃないか! 好きな子との水着姿を初めて見るんだからさ」

「まあ、そんなに怒りなさんな。まあ、あんまり期待しないでよ…。結構派手なのもあったけど、今回は初めてだから刺激の強いものは避けることにしたからさ」


 と、言ってラッシュガードを脱ぐと、そこには真っ白な上下のホルタービキニがボクの目に飛び込んでくる。

 遊里さんのスタイルを遺憾なく発揮するようなそのデザインにボクは一瞬クラリとしてしまう。


「あ、今、唾のみ込んだでしょ! シンプル・イズ・ベスト! 可愛いを前面に活かせるデザインのモノってこれしかなかったのよね」

「他にもすごいのあったの? ボクのはバナナパンツみたいな競泳用の水着もあったけど」

「凄いのがあったよ! 超ハイレグとか、もはや紐って感じの水着とか…。つける前から結果が分かり切ってるから着る気もなかったけど、それの方が良かった?」


 遊里さんはニヤニヤと覗き込んでくる。

 ボクは顔をぶんぶんと横に振り、


「人前では遊里の肌を見せつけたくないから絶対に嫌だ!」

「うふふっ! 私もそんなことしないよ。露出狂じゃないからね。まあ、二人きりの時ならば見せてあげてもいいけどさ」


 て、そこでモジモジと顔を赤らめながら言うの止めて! こっちまで恥ずかしくなっちゃうから!

 ボクはちょっぴり紐水着を想像してしまうが、すぐに上書きすべく、彼女の白いホルタービキニをじっと見る。


「でも、ちょっと見過ぎだよ、隼。何だか目もちょっといやらしいしさ…」

「ご、誤解だよ! あ、でも、似合ってて可愛いからさ」

「え!? あ、あはは…。ありがとう。隼の『可愛い』って言葉、すごくキュンってきちゃうんだよね~」

「エッチの時に連続でボクが言ったら、キュン死しちゃうかもね」

「あ、それはズルいぞ! 絶対に私の負け確じゃん!」

「あはは…。本当だね。ところで、日焼け止め塗ってきたの?」

「ううん。実はまだなんだ。だから、塗ってくれる?」

「ええ!? 日焼けオイルじゃないけど、ボクが塗るの!?」

「うん、そうだよ~。ホラホラ、こういうのは雰囲気も大事なんだから!」


 遊里さんはそういうと、鞄のなかから日焼け止めクリームをボクに手渡す。

 そして、本人はチェアにうつ伏せに寝転がり、塗ってもらうのを待っている。

 ボクは勇気を出して、日焼け止めクリームを背中、腕、足に丁寧に塗っていく。

 遊里さんはご満悦に鼻歌まで歌いだしている。

 そのあと、仰向けになって、今度はお腹なども塗っていく。

 

「さあ、塗り終わりましたよ」

「ありがとう♪ さてと、これでいくらかは日焼けを抑えられるとは思うんだけどね…。ま、誰かに気づかれたらその時はその時でバラしちゃえばいっか」

「まあ、日焼け止めって結構気休め程度なところがありますからね…。多分、バレると思いますし、そもそも今回のチケット提供者は橘花さんなんですから…」

「まあ、私たちが言う前にバラされそうね…」

「あはは、ですよね。だから、あまり気にせずに遊びませんか?」

「そうね、そうするわ!」


 ボクは遊里さんの手を取ると、透明な水に満たされたプールに一緒に飛び込む。

 頭まで一気に水の中に入った後、水面から顔を出す。


「すっごく気持ちいい!」

「本当ですね! 気温も上がってきてるから最高ですね! て、うあっ! いきなりやりましたね! じゃあ、ボクもお返しです!」


 ひんやりとした水をお互い掛け合い、最高の笑顔で戯れ始める。

 ほぼ貸し切り状態のプールはウォータースライダーも待たずにできた。

 まずは遊里さんが前でボクが後ろから抱きしめるように滑り出す。


「きゃ~~~~~~! これ意外と怖いよ~~~~~!」

「あはは! 本当ですね!」

「て、隼は全然怖がってないじゃな~~~~~い!」


 右に左にクネクネと規則正しいように見えつつも、水の影響で不規則な動きも交えつつ、下っていき、大きなプールにザブンッと落ちて終了。


「今度は隼が前よ!」

「あはは、分かったって」

「きぃぃぃぃっ!? 何だか余裕があるのがムカつくんだけどぉ~~~!」

「ええっ!? そんなに!? うわぁ~、本当にこわいなぁ~~~(棒)」

「棒読みされるとさらに腹が立つ!」

「うあ、本気で怒るの止めようね…」


 そういうと、再びウォータースライダーに向かう。

 今度はボクが前を担当する。

 遊里さんは怖いのか、ボクのお腹を抱えるようにギュッと抱きしめてくる。

 ぬぉっ!?

 無防備な遊里さんのお胸がボクの背中でぐにゅりと押しつぶされている!?


「ゆ、遊里さん!? もう少し、抱きしめるのを緩めてもらえませんか!?」

「嫌よ! さっきメチャクチャ怖かったんだもん!」

「う…。じゃあ、仕方ありませんね…」

「じゃあ、行きますよぉ~!」


 スタッフの人が2人用のビニール浮き輪を押して、流れ始める!

 再び、右、左とスライダーの流れに身を任せる。

 ボクの後ろで抱き着いている遊里さんはキャアキャアと悲鳴を上げている。

 ただ、振動のたびに遊里さんのお胸が攻撃的になるのだけやめていただきたい!

 いや、気持ちいいんだけどさ!(本音)

 ザブゥゥゥゥゥンッ!

 役得な状況を楽しんでいるうちに、水面に叩きつけられ、スライダーが終わる。


「ぷはぁっ! 楽しいね」

「ぷふぅ~! 前だろうが後ろだろうが、怖いものは怖い!」

「まあ、そうかもね…。じゃあ、今度は流水プールでゆっくり泳ごうか」

「うん! そうするわ」


 ボクらは流水プールに移動して、泳ぎ始める。

 泳ぎつかれた後は売店でかき氷を日傘の下で食べ、思いっきり夏の貸し切りプールを堪能した。

 遊里さんはボクを水着で悩殺すると言っていたけど、十分その可愛らしさはボクの心をさらに彼女に対してどっぷりとハマらせてくれたのだった。



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