第83話 特別なチケットの正体。
「ようこそ、宝急アイランドへ! チケットをお預かりいたします!」
制服に身を包んだ華やかな笑顔を見せる女性が両手を差し出し、チケットを受け取ろうとしている。
遊里さんとボクは2人分のチケットを受付の女性に渡す。
と、そのチケットを見て、受付の女性がビクッと顔が引きつったのをボクは見逃さなかった。
「こちらのチケットの入場はこちらからではございませんでして、ご案内させていただきます。どうぜ、こちらに!」
「「あ、どうも」」
ボクらは恐縮しつつ、案内係に促されるまま、別の入り口に行く。
促されるままに案内されたのは、隣接する高級ホテルの入り口だった。
ホテル前に立っているボーイが自動ドアを開けてくれる。
「ねえねえ、あれって普通のチケットに見えたんだけど、どうしてこんなところに来ちゃったの?」
「それをボクに訊きます? そもそもそのチケットをもらったのは遊里じゃないの?」
「まあ、そうなんだけど…。普段見ているチケットと何も変わりがないように思えたから…」
「確かに、ボクの目にもいつも通りに見えましたけどね…」
「チケットのことがお気になられますか?」
受付の女性とともにエレベーターに乗ったあと、ボクらに対して、話しかけてきた。
ボクらは驚いて姿勢を正してしまう。
「あ、はい…。このチケットって何か違いがあるんですか?」
「ええ、こちらのチケットには、特殊な加工が施されているんです。どういったものかはお教えすることはできないのですが、こちらは橘花凜華CEOからもらわれたものですよね?」
「ええっ!? それも分かるんですか?」
「はい。もしかして、凜華CEOのお友達でいらっしゃいますか?」
「あ、はい。そうなんです。中学の時に転校してきたときからずっと、仲良くさせていただいています」
「そうですか…。では、きっとお祝いか何かかしら…」
ボク達は女性の言っていることの意味があまり分からなかった。
エレベーターは最上階を示すと、そのあと意味不明な言葉に変更され、そのまま上がっていく。
「このエレベーター、どこまで行くんでしょうね…。すでに最上階の階数はオーバーしているんですけど…」
「凜華CEOからは秘密にしてほしいと言われておりますので、何もお伝えすることが出来ません」
「あ、そうなんだ…」
ボクと遊里さんはお互いの顔を見合わせ、お手上げ状態となってしまう。
てか、このホテルってそんな上の階あったかな…。
ボクが少し不安になり始めたころに、エレベーターはゆったりと動きを止める。
「どうぞ、こちらになります」
女性はそのままエレベーターから降りると真正面にある扉に到着する。
カードキーを取り出すと、ドアノブに近づけると、ピピッという音が鳴り、ガチャッと解錠される。
女性は振り向くと、ボク達の方に振り返り、腰につけているポシェットから金色のブレスレットのようなものを取り出す。
「では、清水隼様、神代遊里様、利き手の反対側をお出しいただけますか?」
言われるがまま、ボクたちは左手を差し出す。
すると、そこに女性はブレスレットをカチッとそれぞれの腕に装着していく。
「こちらのブレスレットはこちらのホテルの鍵となっております。また、宝急アイランドの園内でも乗り物やシアターなどのアミューズメントだけでなく、飲食類も無料となっております。お土産類だけはご自身でご負担となります」
「いやいや、十分でしょ!? だって、食事って結構高めのディナーとかのお店もあるじゃないですか!?」
「そちらも無料です」
「じゃあ、園内を移動するのに使える乗り物類は?」
「そちらも無料です」
「このホテル内での食事は?」
「そちらも無料です」
「「至れり尽くせりじゃん!!」」
「そうおっしゃっていただけますと大変ありがたいです。こちらのお部屋もVIPのお客様が使用されるスウィートルームとなっております。もちろん、一日中、こちらでゆったりとお過ごしになられるのも結構です」
「贅沢な使い方ですね…」
「ここだけの話ですけれども、先日、凜華CEOもお使いになられました」
「もしかして、翼とかな…」
「お名前は存じ上げませんが、男の方と一緒にお泊りになられました。翌日はプールを楽しまれていましたよ」
「え? でも、プールってまだ営業してませんよね?」
「そうなんですが、VIP様には限定で使用できるようになっております。お使いになられますか? もちろん、水着もこちらでご用意はさせていただきます」
ゆ、遊里さんと一緒にプールだと!?
あのスタイルにどんな水着を着るか分からないけれど、絶対に興奮度MAXじゃないか!?
あ、ダメだダメだ! すぐにエッチなことを考えてしまう。
で、でも仕方がないじゃないか…。ボクだって男の子なんだから…。
可愛い彼女の水着姿が見たくないのか? って聞かれたらそれは見たくなる!
「ねえ…。どうする? 遊里?」
「貸し切りでプールかぁ…。それもいいなぁ~。あのぉ…日焼け止めとかもあります?」
「もちろん、お貸しすることは可能です」
「じゃあ、泳いじゃおうかなぁ~。午前中に泳いで、ランチ食べたら、シアター系のを見て回りたいのよ…。シアター系とかってお昼からが多いですよね?」
遊里さんが女性に訊くと、女性は腰のポシェットから小さめのタブレット端末を取り出すと、ササッと調べてくれる。
「そうですね…。本日は午後からシアター型アミューズメントが立て続けに3本ございますね。あれでしたら、今、ここでご予約をお取りしておきましょうか?」
「ええっ!? そんなこともできるんですか?」
「もちろんですよ。他の方々が見る場所とは異なり、最前列の演者に近いところになりますが、どういたしますか?」
「じゃあ、お願いします!」
遊里さんは目をキラキラと輝かせている。
確かにボクもここのアミューズメントランドに何度か来ているけど、シアター系にはいったことがない。
理由は簡単だ。
人気がありすぎて、予約の段階で負けてしまうからだ。
だから、興味は物凄くある。きっとこの話をしたら、楓が怒ってくるだろうなと予想すらできる。
「で、夕方はホテルの高級ディナーをいただいて、お部屋でゆったりしない?」
「そうだね…。明日から学校だもんね」
「夜はこちらから夜景が見渡せますので、そのほうが良いかと思います。遊里様は計画を立てるのがお上手ですね」
「え? そうですか~?」
「では、水着ですが、お部屋にご用意させていただいているものでもかなりの数がありますので、そちらから選んでいただけると宜しいかと思います」
女性はボクらを水着などの服が収納されているウォークインクローゼットに案内してくれた。
「水着を着られましたら、その上から、こちらのスポーツウェアを着ていただいて、そのままプールにお入りください。あと、そちらのブレスレットは水に入っても壊れたりしませんので、そのままつけたままで結構です。では、ごゆっくりとお楽しみください」
女性はニコリと会釈すると、部屋から出て行った。
「まあ、朝の隼の『口撃』のせいで疼いているところを一日中慰めても良かったんだけど、それは夜にしちゃおっか」
遊里さんは悪戯好きのサキュバスのような悪魔の微笑みをボクに投げかけてくる。
でも、さっきお部屋でゆっくりするって言ってたよね…。
それだと、お部屋で激しくヤるになっちゃうけど…!?
「じゃあ、水着を選んでここに集合ね。お披露目はプールってことで!」
「あはは、楽しみにしてるよ。まあ、男物はそんなになさそうだから、すぐ選び終わりそうだけどね…」
「うふふ…。隼を悩殺させちゃうからね! バンッ!」
遊里さんはボクに銃を撃つような仕草をする。
ボクらはそれぞれの用意された水着をそれぞれの部屋で物色するのであった。
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