第79話 妹はボクに甘えたい。
今、楓はボクの膝に座っている。
何でこうなったかって?
夕食が幼かったころに家族でよく爺やの店のメニューにした。
それも楓の好きなミックスグリル。
楓は常に目を潤ませながら、メインディッシュやデザートを楽しんでくれた。
ただ、そこで少し楓の気持ちに変化を生じさせてしまった。
今まで気を張って生きてきた分…なのか、急に幼児化してしまった…。
と、いうか甘えたくなってきたというのが正しいところだと思う。
妹はボクよりも身長が大きいから、知らない人から見たら、大きなお姉さんが抱かれているようにしか見えないだろう。
こういうのを幼児退行っていうんだな…。
(ま、原因はボクか…)
「お兄ちゃん、彼女がいるのに、妹に優しいんだよね…」
「それをいうなら、楓にだって、彼氏がいるのに甘えているじゃないか」
「ま、そういわれればそうか…」
そう言いながらも、楓はボクの胸のあたりに顔をコツンとぶつけてくる。
そのまま目を閉じて、ふふっと微笑む。
「いつも遊里先輩が独り占めしている場所よね」
「あはは…。遊里はあんまりボクの胸で寝ることはないよ」
「ちっ、騎乗位の方がお好きか…」p
「こらこら、中学生がそんなこと言わないの」
「だって、お兄ちゃん、遊里先輩と付き合いだしてからすっごく変わったんだもん」
「そ、そう?」
「うん、分かんないんだ?」
「う…。分かってないかも…どこが変わったのかな…」
「そうだなぁ…。まず、家に連れてくることが増えたよね…。遊里先輩の匂いのする回数が最近増えてきた」
「それは学校での問題も関係あるかな」
「あと、心の余裕が生まれてきたって感じがする」
「そんなに焦ってた?」
「焦っているっていうのとはちょっと違うんだけど、お兄ちゃんって遊里先輩のことが好きなのに、告白できないままで、ちょっと心の余裕のなさが見えてたと思う」
ボクは頬をポリポリと掻く。
それは否定できない。
遊里さんは可愛らしく学園の中でも1、2位を争うような人だった。
だから、狙っている人は多く、これまでも何人もの人に告白されたりもしてきた。
そのたびに彼女はふり続けていた。
ボクは遊里さんと一緒に、『日本史係』を担当しているだけで幸せだった。
遊里さんはボクと気兼ねなく話してくれていたし、それに一緒に仕事をしていると大変なことでも楽しくできる時間に感じていたから。
そんな彼女から屋上で告白されたときは、本当に心臓が止まるかと思った。
まさかの相思相愛――。
そ、それに身体の相性もばっちりだった…。
ボクは心身ともに遊里さんに奪われてしまったし、あっちはあっちで一緒にいないと気が狂うくらい好きでいてくれている。
「急に落ち着いた感じになったのが、告白された日だったんだろうねぇ~」
「あはは…。楓はその辺の感覚が鋭すぎるんだよ」
「そんなことないよ。お兄ちゃんが鈍すぎるんだって。きっと、遊里さんもお兄ちゃんに告白してもらいたくて、アピールしていたと思うんだよね」
「う~ん、気がつかなかったなぁ…」
「本当に鈍いよね…恋愛に関しては」
「うう…本当にごめんよ」
「まあ、私に謝る必要はないんだけど…。そもそも、遊里先輩に申し訳ないとちゃんと思っておいてほしいわよ」
「あ、はい…」
「もう、エッチもしてる仲なんだから、そろそろ遊里先輩のことも考えてあげてるの?」
「え…うん…ある程度一緒に考えているよ」
「大学進学のこと?」
「え、いや…。その家族計画のこと」
「…………」
楓が黙り込む。
そして、ボクの方に上目遣いで顔を見てくると、
「エッチ……」
「ええっ!? 何で!?」
「お兄ちゃんが子どもを作る計画まで彼女と話し合ってるなんてちょっと意外っていうか、遊里先輩好き過ぎって感じなんだけど…」
「ちゃ、ちゃんとダメなときは、ゴム使ってるよ…」
「当たり前でしょ! ダメな時でないときも付けときなさいよ!」
楓が憤慨している。
ただ、お互いゴムなしの方が気持ちよさが違うから好きなんだよな…とは口が裂けても言えない。
あ、そういえば、前にあげたゴム返ってきてなかったな…。
「そういえば、楓…。この間、あげたゴムって返してもらってないんだけど…」
「――――――!?」
「え…。まだあるんだよね…」
突如として目を逸らす楓。
まさか―――――。
「楓さん…もしかして、あの、ゴムの残りは……」
「いやぁ…、私と瑞希って相性抜群なのよね…。ナニとは言わないけど…」
「ナニって言ってる時点でバレバレなんだけど…」
「う…。うるさいわよ…」
「てか、中学生なんだから、回数とか気を付けないとだめだよ…。それに、君たち中等部の模範生として有名なんだから…」
「うう…。分かってるよ…。だけど、ほら…」
「何なの?」
「き、気持ちいいから…」
顔を赤らめながら言うんじゃありません。
それに遊里さんのことをエロ魔人のような言い方してるけど、絶対言えない立場だと思うけどなぁ…。
「で、全部使っちゃったの…?」
コクリと無言でうなずく妹。
絶対にあんたたち変態だよ…。世の中の中学生がそんなにしてたらダメでしょう。
「あのね…瑞希って凛華さんの前ではあんなだけど、私の前ではすごく話もしてくれるし、すごく積極的なの…。私の前だけは肉食系なの…。で、私ってそういう男の人すごく好きで、その…流れのまま押し倒されちゃうことが多くって…。あ、でも安心して! 最近は彼がちゃんとゴムは用意してくれてるから!」
うん。聞いていないからね。
それに瑞希くんが買うわけではないだろうから、使用人の人とかが買ってるのかな…。
何だかそれも申し訳ない気持ちになってしまう…。
「とにかく、やり過ぎはダメだよ」
「分かってるって…。そんなことよりも今は甘えさせてよ…」
楓は再びボクの胸に頭をくっつける。
ボクは楓の頭を優しく撫でてあげた。
「この後は一緒にお風呂入るんだからね!」
楓の一言にボクは無言で一筋の汗が垂れるのであった。
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