第48話 ボクは彼女の最適解な社会見学ー奈良ー

 2日目は奈良・飛鳥(明日香)地域の古墳群に関しての調査を行うというものだった。

 こちらも周辺マップが手渡され、各々の班で調査に乗り出すというものになっていた。

 ボクたちも周辺地域を歩きながら、写真を収めたり、レポートに必要な事柄をメモを取ったりする。

 その辺に関しては、一応、進学校なので真面目にはやる。

 レポートも高大提携の授業ということで、かなり面倒くさい。

 佐竹先生と仲のいい大学の先生も今回の社会見学にも絡んでいるということで、レポートは佐竹先生だけではなく、その大学の先生も見て評価を付けるよということで、大学の規定に合わせてレポートを書かなくてはならない。

 まあ、そんなに違いはないけれど、文献などもきちんと活用して、その文献の引用に関しても最後にまとめて書くなど色々と制約が掛けられる。


「今回のレポートってかなり面倒くさくない?」

「そうですよね…」


 遊里さんの疑問にボクがゲンナリとしながら頷く。

 現地学習で色々と収集したものにさらに図書館にある文献と照らし合わせて、まとめていかなければならないのだから、興味関心がなければ、正直、やる気が起こらない。

いや、起こらなくてもやらなきゃ進級できないので、やらざるを得ないのだが…。


「雪香、ちゃんと写真撮ってくれてる?」

「もちろんよ! いつまでも落ち込んでる私と思わないで!」


 あ、落ち込んでたんだ…。

 二葉さんにいい出会いがありますように――。

 ボクたちは古墳群の撮影など的確に行っていく。


「二葉さん、できれば、古墳の入り口にある説明文も写真に撮っておいてください」

「え? こんなものいるの?」

「分かりません。でも、必要になったときにもう一度ここに来ることはできないので、できうる限り情報を取り損ねるということだけは避けておきたいので、そういった説明文もメモを取る感覚で、写真に残しておいた方が後々助かるということもあるので…」

「あ~、そういう考え方か…。オッケー、それならバシバシ撮っておいてあげる。デジカメ様様だね!」


 かなりノリノリで写真を撮り始める二葉さん。

 だんだん二葉さんの性格がつかめて来たな…。

 取材活動はスムーズに進んでいき、予定していた取材活動は一通り終了した。

 女性陣がお疲れの様子だったので、


「あそこに甘味処がありますから、少し休憩しましょうか。集合時間まではまだ時間もありますから、休憩しても大丈夫だと思いますし…」

「え? ホント!? 嬉しい!!」


 遊里さんは喜び勇んで、ボクに抱きつく。

 それをジト目で見ると二葉さんと橘花さん。


「ユーリってこうやって清水くんを落としたんだろうねぇ…」

「まあ、そういう風に見えますわね。それとあの犯罪レベルなお胸をギューギュー押し付けられれば、温厚な清水くんでも野獣と化してしまうのかもしれませんわ。あれでいて、もう数回、のを経験済みのようですから…」


 うあ…。酷い言われようだよ。

 まあ、確かに遊里さんのおっぱいには魔力があるかのようにボクは弱いし、やりだしたらお互い激しいんだけどさ…。


「ちょ、ちょっと…そういう言い方はないと思うわ…。私たちが激しいのは否定しないけど、凜華も乱れたらすっごくエロそうだもん!」

「えっ!?」


 いや、そこで反応したらダメだろ、翼!

 赤面してる場合じゃないだろ、翼!

 てか、頑張って否定してよ、遊里さん!

 

「ど、どうして私がそういう女だと思われてるのか知りませんけど…。確証はありますの!?」

「ないけど、ほら、ギャップ…。キツい目の女のセックスは、メチャクチャ激しく破廉恥ってどこかのコラムに書いてあった」

「あ、それ、私も読んだことある!」


 遊里さんの返答に、二葉さんも乗っかる。

 あ、まあ、ボクもそのネット記事は見たけどね…。信憑性があんまりないから、疑ってみてはいたんだけど…。


「まだ、やったことすらないから、分かりませんわ…。そのようなこと…」


 そりゃそうだ。

 それを語るのは難しいでしょうよ。

 そんな話をしていると甘味処に到着。

 早速メニューを頼む。

 ボクと翼はクリームあんみつ。二葉さんはわらび餅と抹茶。遊里さんと橘花さんは抹茶パフェだ。

 それほど待たずして、頼んだものを持ってきてくれた。

 パクリと一口。


「あ~~~、疲れた体にこの甘さは最高~~~!」


 遊里さんがニコニコ顔でスプーンを咥えながら、ホッコリとする。

 ボクもクリームあんみつのクリームとあんこの甘さが身体に染み渡る。

 ボクはその時、視線を感じた。

 視線の主は、ボクの彼女である遊里さん…。

 そして、ボクへの視線ではなく、あくまでもその視線はボクのクリームあんみつに向いている。


「遊里、味見したいの?」


 コクコクと頭を縦に振る遊里さん。何だか犬みたいで可愛い。


「仕方ないなぁ…」


 と言いつつ、スプーンにあんことクリームとみつ豆を取り、口に運んであげる。

 パクリッ!


「ん~~~~~♪ これも美味しぃ~~~~~♪」

「そんな幸せそうな顔して…」

「美味しいものは美味しいの~~~! 逆に私の抹茶パフェもどうぞ~」

「んぐっ! 抹茶の渋みとあんこの甘さがマッチしててこれも美味しいですね! 甘さの秘密は砂糖ではなく、和三盆の甘さっぽいですね」


 もう、完全にボクらの世界―――。

 ああ、拘束されないってこんなに幸せな気持ちになれちゃうんだ!

 早く学校でもこんな感じになりたいなぁ~。

 て、二葉さん…、目線がメチャクチャ冷たいです。

 もう、雪女級の寒さを感じるくらい冷たい目線ですね…。

 その目線は嫉妬ですか? それとも憎悪ですか? それとも殺意ですか?

 翼と橘花さんはボクらのやり取りに唖然としている。


「翼…。さすがに私は人前ではなかなかあれは出来ないかもしれませんわ…」

「いや、多分、こればっかりはコイツらがおかしいと思う…」

「ええ…。これはどっちが問題なのかしら…。ユーリの頭のネジが緩すぎるの?」

「いや、隼が彼女に対して甘々というのも問題の要因かもしれねー」

「まあ、まとめてしまえば、これをイチャラブというんでしょうね…」


 最後にまとめてみせる二葉さん。

 口と目から血が出てるように見えるけど、大丈夫だろうか…。


「な、何よ!? これは私たちにとって普通よ! いつもやってるもん!」

「え!? あなたたち、いつもこんなことしてるの!? もし、クラスの闘争に歯止めしたら、クラスでいつもこんな事されちゃうの!?」

「それは男女問わずクラスのユーリファンが血を吐くでしょうね…」

「そんなに!?」


 冷静に分析されて抗議する遊里さん。


「さすがに教室ではしませんよ…。ボクもそこまでしたら、マズいという感覚は持ち合わせてますから…。ただ、教室内で今はお互い知らんぷりを決め込んでいて結構、心がお互い荒んでいるので、普通に会話をするくらいは認めてほしいですね」

「まあ、それは仕方ねーけど…。ただ、さっきからの行動を見てると、お前らの普通と俺らの普通があまりにもズレがあるように思えてならないんだけど…」

「そこは努力しますから…」

「そうですわね。私も雪香から話を聞くまで、ユーリと清水くんが付き合ってるって気づきませんでしたもの…。クラスではユーリも冷たい目線で、清水くんを見ているように思えましたわ」

「うぐ…。結構、あれはあれで辛かったよ…」


 遊里さんは今にも泣きそうだ…。

 まあ、お互いがつらい思いをしてきたのは間違いない。

 それももうすぐ終わり。

 翼と橘花さんがクラスで派閥闘争を撤回してくれれば、その思いもしなくても済む。

 ボクは遊里さんの頭を撫でてあげる。


「それ! それですわ!」

「え? 何??」

「ユーリが甘えてしまう原因は清水くんにあるんですわ!」

「ええ!? いきなり言われても!?」

「だって、常にユーリの気持ちとか行動の先読みをして、ユーリにとっての最適解を清水くんは即座に出しちゃってるのよ…」

「(ゴクリ)……これは、ある意味最強彼氏なんじゃないの…!?」


 二葉さんまで納得してしまっている。

 ボクはそんなことを考えてはいない。

 まあ、遊里さんにとって気持ちのいい場所にしてあげたいとは思ってるから、一緒なのかな…。


「えへへ…。最強彼氏だってさ…。嬉しいなぁ…私♪」


 あはは…。ニコニコしながら、ボクの胸に頭をすりすりしないでよ…。

 可愛すぎるだろ…、ウチの彼女は…。


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作品をお読みいただきありがとうございます!

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