第41話 二葉裁判官の事情聴取な社会見学ー奈良ー
「で、ユーリは清水くんに告白をしたのは間違いないのね?」
「あ、はい……」
「そして、清水くんはそれを了承してお付き合いを始めたってことでいいの?」
「え、ええ……」
重い…。重過ぎる!?
ボクと遊里さんの濃厚キス現場を見られてしまった後……。
「こ、これは食べさせあいっこをしてたの!」
「口移しで!? どこまでエロエロなんよ…。
遊里さんが墓穴を掘り、それをしっかりと二葉さんが刺し殺して、今喫茶店に入っています。
二葉さんの前には、ジャンボパフェ…。ボクらの前には水の入ったコップがそれぞれ置かれてある。注文票もボクらの方にあるのは、無言の圧力で、奢れってことなのだろう…。
二葉さんはジャンボパフェのパイナップルを一口で食べた後、
「で、付き合い始めたと同時に陰キャと陽キャの派閥闘争が起こってしまって、学校ではイチャラブできなくなったから、地元に帰ってイチャラブしてた…と?」
「「あ、はい……」」
力なく頷く容疑者二人(ボクも含む)。
「ま、不運って感じよね」
「でしょ~? 分かってくれるよね? 雪香?」
「ま、分かるけど…。だけど、さすがに公衆の面前にもかかわらず、ユーリが我慢できなくなって、ベロチューすんのはどうかと…。まあ、それを快く受け入れちゃう彼氏にも問題ありなんだけど…」
「……あ、はい……」
ガクッと
遊里さん、撃沈させられてるじゃないですか?
「遊里?」
「は、はい!?」
「あんた、今思うとバスでの怪しいリアクション、それに清水くんに対する微妙な受け答え…。ようやく理解できたわ」
「……ごめん…騙すつもりはなかったの……」
「あ、あとさぁ…。バスでの質問のことなんだけど…」
「「―――――――!?」」
ボクと遊里さんに戦慄が走る。
何、何の話をもう一度聞かれるの!?
「やっぱり、エッチはお互い気持ちよかったの?」
「「え!?」」
「ユーリから溢れる愛おしい蜜。それを舐めあげる彼氏。二人はお互いを慰め合い、ついには…ってそんな感じ?」
ボクらは顔を真っ赤にしてしまう。
きっと同時に赤くなったと思う。それだけで二葉さんにバレてしまいそうだ。
てか、二葉さんって官能小説か何かを読み漁ってる人なのかな? 表現エロくない?
「ふんっ! 二人揃って、顔を赤らめたら、お互い認め合ってるようなもんじゃないのよ…。見ているこっちの方が恥ずかしくなるわ…」
「「ごめんなさい…」」
「ま、いいわ。ユーリのエッチ事情は、また後々清水くんを拉致れば聞けることだし…」
「普通、訊かないものよ…。そういうことは」
「抗議の声を上げても無駄よ、ユーリ」
そういうと、二葉さんは目を細めて、こちらを値踏みするように見据える。
「私はこう見えて良き理解者よ…。まだクラスがゴタゴタしてるんだから、あんたたちの関係は黙っておいてあげる…」
「雪香…ありがとう…」
「でも、その状況を維持していくためにも、二人の関係を随時訊かせていただくわ…」
「…ず、随時…ですか…」
ボクもさすがに嫌だな…。遊里さんとの性事情を話さなきゃいけないのは。
「ま、ユーリがちょっぴりエッチなのはよく分かったけど、あんたたち、本当にタイミング悪い時に付き合い始めたわね…。ん? でも、待てよ…。ユーリが最近急に成績が上がってきたのって…」
「あはは…。隼に勉強を教えてもらえるようになっちゃって~」
「くっ!
「あ、はい…そうですね…えへへ」
緩みまくってる遊里さん。目の前の裁判官の方、すごい怖い顔してますけど、見えてます?
「ユーリ、私の前では緩みまくってるのは良いけど、他の子たちの前で緩んでたら、絶対にバレるから止めなさいよ」
「あ、はい…」
まあ、確かに今回二葉さんにバレたのも遊里さんがキスをしたいとお願いしてきたからな部分もある。まあ、ボクも受け入れちゃったからボクにも責任があるのかもしれないけど…。
遊里さんもその点は反省しているようで、
「隼、ゴメンね。私が今日イチャイチャしていないからって、ペロペロな熱いキスをせがんじゃったりして…」
「ユーリ…。あんた、わざとじゃないんだろうけど、あちこちの発言に
恋は盲目って言うけど、遊里さんの場合、盲目を超えて、『天然』だったりするからなぁ…。
二葉さんははぁ…とため息をつき、ボクの方を見据える。
「で、どうすんのよ?」
「え?」
「クラスが分断されている中で自由に付き合えないのをどうすんのか、って聞いてるの!」
「そりゃ、学校でも一緒に付き合えると助かるんですけどね…」
ボクの言葉にうんうんと頷きながら、頬を赤める遊里さん。
「私は見たくないけどね…」
二葉さんはなかなか
恋愛の自由を守ってくれよ!
ボクはあはは…と苦笑いをしながら続ける。
「とはいえ、今の状況が改善するまではどうしようもできませんから…。それに…」
ボクはテーブルの下で、遊里の手をギュッと握りしめる。
「今は地元でもイチャイチャしてるので、まあ、気長に待ちます」
「隼…」
遊里さんはボクに潤んだ瞳を向ける。
対して、二葉さんは頬を引きつらせながら、
「清水くんまでユーリに脳細胞侵されたんじゃない? だから、目の前で惚気るなって言っただろ…!?」
「ああ、ごめんなさい…。でも、今回、社会見学委員が橘花さんと翼だから、もしかすると化学反応が起こらないかなぁ…なんて思ってるんですけどね…」
「どんな化学反応よ?」
「ホラ、結構、翼って繊細な性格してるんですよ。橘花さんもいつもはキツメだけど、優しい面もあると思うんですよね。まあ、ボクらの言い方で言うなら、普段はツンツンしてるけど、きっとデレる瞬間はあるんじゃないかなって…」
「え!? 凜華がツンデレ!?」
「うーん。その路線は考えてなかった…」
二人でうーんうーんと唸る。
え、そんな橘花さんを見たことないのか…。
まあ、本当に好きな男の子の前でしか、デレたりはしないからなぁ…。
橘花さんが翼にデレてる姿を見てみたいなぁ…。
うーん。妄想が捗るなぁ…。
「ぉぃぉぃ…。ユーリ、お前の彼氏、何か妄想してるぞ…。きっと凜華のことじゃないか?」
「むむむっ! 隣に超絶可愛い彼女がいるにもかかわらず、他の女のことを妄想するなんて…! 許せないぞ!」
「お前、やっぱり付き合いだしてから、本性丸出しで生きてるんだな…。自分で言ってて、恥ずかしくないのか…?」
「え? 私、何かまた言ってた!?」
「はあ、これだから、リア充は……」
二葉さんは今日一番のため息を遊里さんに向かって吐き出し、現実逃避をするかのように目の前のパフェをバクバクと食べ始めたのであった。
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