第2話 好きが実った日。彼女の温かさに触れました。

 佐竹先生ってぜってーに「ど」が付くくらいのSだろ…。

 これだけの量をボクと神代さんに持たせるんだから…。

 まだ、5月だというのに、太陽が燦々さんさんと照り付けており、気温がグングンと上昇しているようだ。

 神代さんの額にも汗が一筋つたっている。


「ボク、もう少し持てますから、どうぞ! ここに載せてください」

「え? あ、いいよ…。別にこのくらいチョロイチョロイ……」


 神代さんは少し苦笑いしながら、「大丈夫、大丈夫」と自分に暗示をかけるように言っていた。


「本当に気にしないでください。こう見えて、ボクも男ですから!」

「そ、そう? じゃあ、この荷物お願いしてもいい?

 よっと…、こんな感じでいい?」

「ええ、大丈夫ですよ」

「さんきゅ。助かったわ」

「いえいえ、お互い様ですから」


 確かに今渡された荷物重いな…。

 これ、なに入っているんだ?

 パソコン関係か何かかな…。

 壊しちゃいけないものと意識して、ゆっくりと階段を上る。


「と、ところでさぁ…清水……」

「どうかしましたか? ボクもさすがに、もう持てませんよ…」

「ああ、荷物の心配はしないでもいいよ。自分で持てるから…

 そうじゃなくってさ、今日の放課後って予定空いてる……?」

「えらく、急な話ですね…。今日ですか? たぶん、大丈夫だと思いますよ。

 て、まあ、ボクは妹と二人暮らしなんで、夕食を作る時間までならば、いけますよ」

「あ……そ、そう…なんだ……」


 あれ? 神代さん、大丈夫ですか…?

 何だか、表情に若干の動揺が出てますけど。


「じゃあ、さ。放課後にちょっと時間貸してくんない?」

「いいですよ。じゃあ、放課後に…どこで待ち合わせします?」

「うーん、そうだなぁ…。

 じゃあ、屋上の入り口に続く階段の上ったところでもいいか?」

「なんか、不良がたむろしそうな定番の場所ですね…

 まあ、いいですよ。じゃあ、放課後に…」


 話し終わるころ、ちょうど教室前に着いた。

 やっとこの重たい荷物から解放される。

 あ~早くうちわで自分を仰ぎたい。




 放課後――――。

 あっという間に時間というものは過ぎ去り、若干、も傾き始めた。

 ボクは、翼と葵の放課後の「悪魔の誘い」を断り、昼に約束していた場所へと向かう。

 階段を昇って行ったが、神代さんはいなかった。

 でも、うっすらと屋上のドアが開いている。


「屋上にでも出てるのかな…」


 屋上のドアを開けて、覗いてみると神代さんが屋上の柵の下に腰かけて、スマホをいじっていた。スカートがめくれあがって、綺麗な太ももがあらわになっている。


「あ、神代さん、待たせてすみませんでした」

「あ、ああ!? ……もう、来たんだ……。そうだよな。約束の時間だもんな……」


 急に声をかけたからだろうか、神代さんはスマホを落としそうになる。

 あれ? 昼間の様子のおかしい神代さんそのままですね。


「んんっ…。こんなところに呼び出して済まない…

 どうしても話したい…いや、伝えたいことがあったんだよ……」


 神代さんは顔がほんのりと赤らんでいる。興奮というより、恥ずかしがっているといった感じがする。

 神代さんに似合わず、少しモジモジしていたが、ボクの目の前に立つと、ボクの手をぎゅっと握って、今にも顔から火が出そうなくらい真っ赤にしながら、


「あ、あのね…。…前からさ……、清水の…こと…が……好…き……だったの……。清水が良ければ、お…お付き合い……してもらえないかな……」


 ボクの脳細胞は完全に停止しました――。

 ピーッ。(エラー音)

 そのままボクは後ろに倒れそうになる。


「ああ! ちょっと!!!」


 ゴヂッ………


 ええ、しっかりと頭とコンクリートがヒットして、気絶しちゃいましたよ…。


 …………………。


 あれから何分くらい経ったのだろう…。

 ボクの視界に光が戻ってきた。

 そして、そこには、神代さんの覗き込んでいる顔とふくよかな二つの膨らみ。


「もう! 女の子の告白を聞いて、倒れるヤツがいるか!?」

「ええ、ここに…」


 あれ? この体勢って、膝枕されてる…。優しい温もりを感じる。

 てか、目の前にある犯罪的な二つの膨らみを視界かららしたい…。ああ…逸らせない…。これが悲しい男のさが――。


「神代さん」

「ん…? 何………???」


 ああ、だから覗き込まないで! 膨らみが当たる! 当たる!


「ボク、すごく嬉しいです。ボク、奥手だから神代さんのこと好きだったけど、告白できなかったし、してもフラれるんじゃないかと思って、全然言えなかったんです…」

「え? ホントに? 嬉しい! じゃあ、これで両想いってことね!

 じゃあさあ、誓いのキスしよ!」

「え!? それって結婚式でするもんでしょ? まだ告白にOKしただけでいきなりキスはしないでしょう!?」

「あれ? そうなの? キスなんて挨拶程度のものなんじゃないの!」


 いや、陽キャってそんな感覚でキスすんのかよ…。

 そんなにキスばかりしてたら、逆に怖ぇよっ!


「分かった分かったって…。じゃあ、今日はギュッてさせて…ね……」


 神代さんはギュッとボクを膝枕のまま、抱きしめる。

 頭の後ろの方がズキズキ痛むんだけど、それよりも彼女の柔らかい膨らみに包まれたことで精神的に痛みを和らいだ、ような気がした。

 ボクはこれまでずっと思っていた意中の人とついに「彼氏・彼女の関係」になったんだ…。

 でも、ボク、大丈夫かな…。陰キャで恋愛なんてのは全くの経験値がないダメ男なんだけど…。そんなボクが、神代さんの勇者こいびとになんかなれんのかな…。



※次は12月26日0時に更新します!


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作品をお読みいただきありがとうございます!

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