初めてのクリスマス②(神代遊里side)
出してくれたのは、おかゆに和風だしを少し入れて鶏肉と溶き卵をとじたものだった。
それを隼は器に取り分け、レンゲにすくい、ふぅふぅと冷ましてくれる。
私はそのレンゲを「どうぞ」とこちらに運んでくれる彼氏に合わせるように口を開けて、食べる。
少し熱いけど、優しい味で本当に美味しい。
まさか、クリスマスチキンを照り焼きだったりフライドチキンだったりではなく、クリスマスの日にこういう和風だしのおかゆの具材として食べるとは思ってもなかった。
「もう、自分で食べれるよ…。熱も36度台まで下がって来てたんだ」
「そうなの?」
そういうと、向かい側に座っている隼がダイニングテーブルに乗り出すようにして、私のおでこと彼のおでこを触れ合わせる。
彼のおでこの程よい温かさが伝わってくる。
て、これ、メチャクチャ恥ずかしいんだけど―――!?
「うーん。確かに少し温かいくらいかな?」
「うぇっ!? うぇっ!?」
私は言葉になっていない驚きの声を挙げる。
ちょ、ちょっと待って!? 今日の隼って何だか、積極的にあれこれしてきてくれるんだけれど、何だろう…。
これはもしかして夢なのでは!?
私は再度体温が急上昇してしまいそうなくらい火照りそうになってしまう。
それを隠すように用意された食事を幾度と口に運ぶ。
鶏肉と卵って本当に凄い。体に栄養が染み渡っていくような感じだ。
あと、一緒に入ってあるネギが風邪に本当に良さそう。
私にとって彼との初めてのクリスマスディナーは豪華ではないけれど、身も心も温まる食事だった。
食事を終えると、隼が洗い物をしてくれている間に、私は身体を温かいお湯で湿らせたタオルで拭く。風邪をぶり返さないように浴室暖房まで付けておいてくれるなんて、どこまでウチの彼氏は面倒見がいいんだろう。
私は身体をふき取るとパジャマを着て、温かい格好をする。
リビングを覗くが彼はすでにおらず、私の部屋の灯りが廊下にこぼれている。
てか、レディの部屋に勝手に侵入は良くないと思うんだけれど…。
まあ、別に隼に隠すものなんて何もないから良いんだけれどさ…。
私が部屋に入ると、ベッドに促される。私は横になると、
「そんなに立派じゃないものだけど、一緒の時間を堪能しようね」
最初は彼の言っていることが分からなかった。
彼は部屋の中心に置かれた機械の電源を入れ、そして、部屋の電気を消してくれる。
すると、天井にありったけの星座が映し出される。
「うわあ……。すごい……」
「あはは。ありがとう。子どもの頃に父が買ってくれた機械なんだけれど、使う機会が大きくなるにつれて無くなって、倉庫に片付けられていたんだ。まさか、今日みたいな日に役に立つなんて思ってなかったよ」
そう。隼が持ってきてくれたのは家庭用のプラネタリウムマシンだ。
それほど立派なものじゃないのは分かっている。でも、大好きな彼と一緒に横になりながら、プラネタリウムを堪能できるなんて最高かもしれない。
だって、周りの何者にも邪魔されないんだから。
「う……ちょっと寒いかな…」
「じゃあ、ボクが一緒に入っていい?」
「ええ!? 本当に風邪うつっちゃうよ!?」
私が抗議すると、隼は私の方に顔を近づけて、
「じゃあ、本当にうつしていいよ……」
そういって、唇を重ねてきた。
私は突然のことに反応できなくなってしまい、その温かい彼氏の唇に
チュチュ……クチュクチュ……
あんっ♡ もう、本当に甘い! 何か分からないけれど、普段しているキスよりも甘く感じちゃう!?
私の心が隼を求めてしまう。
好き! 好き! 好き! だ~~~~~~い好き!!!
私は無意識のうちに、隼を抱きしめていた。
本当に温かい。温かくて、優しくて、気持ちを持っていかれちゃう♡
「メリークリスマス…だね?」
「何だか嬉しいな……私」
もう、完全に敗北宣言でも出した方が良いのだろうか。
隼は私をギュッと優しく抱きしめてくれる。
メッチャ体温が熱い! 何これ!? いつも以上に熱いんだけれど…!?
本当に隼、熱出てない!? 風邪うつってない!?
でも、そんな抗議が出来るはずもなく、私の中から嬉しさがこみ上げてくる。
熱い……。身体が本当に熱い……。
私と隼の二人は荒い息を整えながら、再び唇を重ね合わせた。
最低な朝から始まったクリスマスは何だか最終的には最高のクリスマスになった。
私たちの恋の神様はいつもそう。必ず私たちを幸せにしてくれようとしない。
でも、今日は良いわ。
プラネタリウムが光り輝く部屋で、大好きな彼氏と「夜」を迎えられたんだから…。
本当に大好きだよ、隼!!
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