「あなたを守る」

何故いきなりタイムリープしたのかはわからないが、3歳の時の願いが叶ったのだと思うことにした。


「あなた誰?」


どうやら母は俺を幽霊だと思っているらしい。


「俺は……ヒイラギだよ」


名前を聞かれたとき本名を教えてもいいのではないかと思ったけれど、そういえばこの時俺はすでに生まれていたので名前の読み方を変えてとっさにごまかした。


「薫さん薫さん!今日あのドラマの再放送があるって!!一挙放送らしいよ」


とりあえずクリスマスだからと出かけようとする母を止めて家から外出させないようにする。


〈ここで臨時ニュースです。〉


案の定通り魔事件は起きたが、母の代わりに誰かが犠牲ぎせいになったらどうしようという俺の不安は杞憂きゆうに終わったので安心した。


「薫さん、ありがとう。もう大丈夫だ。安心して帰れそうだよ」


はあ、と大きく息を吐いた。母が死ななくて良かった。誰よりも優しく、勇敢ゆうかんで、素敵な人だったと父が言っていたけれど、それよりももっと人間味にあふれた面白い人だった。


「………もう大丈夫」


1人で安心していると隣にいる母が眠そうにしていて、まぶたが重そうだった。


「眠い?もう大丈夫だからゆっくり寝ていいよ……………母さん」


母の頭にそっと手を添える。れることはできないけれど、隣に確かな温もりがあることに安心して俺もそっと目を閉じた。

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