柊の花言葉は

2036年12月24日23時58分



「ぼく、サンタさんにお願いしたんだ。お母さんを守ってくださいって!」


うちは母がキャリアウーマンで父が専業主夫だった。ある年の冬、母は転勤が決まり、当時幼かった俺と父を残して単身赴任をすることになった。


寂しかった俺は母が早く帰って来てくれるようにと、母を守って欲しいとサンタクロースに願った。


2021年12月25日。

その日はパラパラと雪が降っていた。父と一緒にクリスマスツリーの飾り付けをしていたときだったと思う。



___母が亡くなったと警察から電話が来たのは。



俺はまだ3歳だったから当時のことはあまり覚えていない。正直母の顔も朧気おぼろげにしか思い出せないくらいだった。

後から聞いた話によると、母は街へ出かけた際に通り魔に刺されたらしい。狙われていた子供を庇おうとしていたようだと警察は言った。彼女が庇ったのは当時の俺と同じような歳の子供だったという。



そんなことをふと思い出したのは年末の大掃除をしていたときに若い母の写真を見つけたからだ。写真には"2021.12.01"と印字されていた。 3歳の俺を抱きしめて、その人は嬉しそうにこちらを向いていた。


ああ、サンタクロースは嘘つきだ。


子供の本当の願いなんて全然叶えてくれないじゃないか。そう思って瞼を一瞬、閉じただけだった。


0:00


「……え」


父と俺しか住んでないはずの家で女の人の声がした。目を開けると知らない女が俺を見て固まっていた。


「え?」


よく見るとさっきまでいたはずの自分の部屋じゃないし、その女性を俺は知っていた。掃除中に見つけた母の写真にそっくりだった。


「か…」


母さん。そう呼んでしまいそうになる声をギュッと抑えてなんとか誤魔化ごまかす。


でもそんなはずはない。何かの間違い、他人の空似そらにだと思い名前を聞いてみた。


「私はかおる


驚きが隠せない。薫は確かに母の名前だった。


有り得ないはずだが、目の前に居るのは確かに15年前に亡くなったはずの母だった。どうやらタイムリープしてしまったらしい。


しかも日付を確認すると、ちょうど母が亡くなる日だった。

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