幽霊?
どうやら男は不審者ではなく幽霊だったらしい。
1人でパニックになっていたので少しそっとしておいてやった。ずっとブツブツ言ったり、自分の身体をベタベタ触ったりしていたが、暫くすると大人しくなった。
「それで、あなた誰?」
直接的な危害を与えられることはないと気づいたので敬語はやめた。あ、待って。幽霊って言葉遣い気にする以前に見えてるって知られたら
「俺は…というかあんたこそ」
幽霊が近づいてきた。さっきから私の顔を確認するためか知らないけどやたら近づいてくる。顔を覚えて本当に呪う気だろうか?そんなことを考えているなら早急にやめてほしい。
「やっぱり!か…か……」
「か?」
「か…ヘイ彼女、カワイイね!!!名前何て言うの?!」
「テンション大丈夫?」
よくわからないけど、この幽霊には呪われない気がした。なんかアホっぽいし。いかにも大学生のノリというか…いや高校生か?どちらにしろまだ若い子みたいだけど。
「私は
幽霊相手に堂々としている態度に驚いたのか、男…いや少年の幽霊は目を見開いて一瞬フリーズしていた。でもすぐにハッとしたのか、
「地縛霊じゃない、はず。俺は……ヒイラギだよ」
と答えた。どうやらまだ自分が死んだことを受け入れられてないみたいで、記憶も曖昧らしい。それにしてもヒイラギって本名なのかな?でも良い名前だ。親御さんはとてもセンスがあると思う。
「冬生まれなの?」
「そうだよ」
「えっとヒイラギ君はずっとここにいるつもりなのかな?」
正直に言うと幽霊ならどこかへ行って欲しい。怖いし。クリスマスにワンホールケーキを1人で食べる姿を見られたくないし。というか早く化粧を落として、ちょっとお高めのパックをつけて、録りためたドラマを見ながらケーキ食べたいから出て行ってくれ頼む。
「薫さん、ちょっと携帯見せて」
了承を得る前に、ヒイラギ君は私の手にあるスマホを
「…そんなに見る必要ある?」
「いや、ありがとう」
スマホを見てみるともう1時になるところだった。時計以外ロック画面には何も表示されていないし、設定している写真も多分、そんなに興味をそそるようなものではないと思う…おもう。
「俺、もうちょっとここにいたら何か思い出せそう!」
だからここに居させて?ととても眩しい笑顔を向けてくる幽霊をどうしてやろうか。ヒイラギ君、絶対私が出て行ってほしいのわかっててお願いしてきている気がする。わかってて言ってるならいっそ清々しいな。
「思い出したら出て行ってね?」
それに朝になったら居なくなるだろ、と思って仕方なくこの幽霊を受け入れることにした。
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