神様は絶対にスケベ
最近はスマホの普及に合わせて色んなアプリが開発されている。
テレビゲーム並みのクオリティを実現させたものであったり、反対になんでそんなレベルでリリースしたんだと酷評されるものと様々だ。
「何やってるの?」
ベッドで横になり、スマホを手にゲームをやっていた俺に霞が話しかけてきた。
俺と同じような姿勢で体を横にし、肩をくっ付けるようにして彼女は俺のスマホ画面を見つめていた。
「麻雀だよ」
そう、今俺はスマホのアプリで麻雀をやっていた。
パチンコや競馬なんていう賭け事には興味はないが、麻雀なんてものは最近だとスマホでお手軽に出来る。麻雀で戦う高校生の漫画であったりを読んだことがきっかけで俺も少しハマった。
「なるほど、脱衣麻雀だね」
「違います」
まあ確かに勝つごとに女の子の服を脱がす麻雀ゲームも……あるのかな。とはいえ麻雀自体がやりたいのであってそういったことには興味はない。
「そういうのには興味ないの?」
「ないなぁ。つうか、少し前までは二次元の女の子とか可愛いって……それは今も思ってるけど、それ以上に可愛い子が傍に居るからな」
「っ……~~~~~!!」
一瞬で頬を赤くした霞は毛布に顔を押し付け、足元をバタバタとさせていた。隣で自分の彼女がそんな仕草をすると当然可愛い、もっと攻めてみるかと悪戯心が芽生えるがそれ以上の逆襲をされる可能性があるので……でもいっか。
「霞は前にグイグイ来た方がちょうどいいって言ってたじゃん?」
「……うん」
「もう少し防御にステータス振った方がいいんじゃないか?」
そう言うと霞はムッとしたように起き上がった。
何をするのかと思えばそのまま俺の背中に乗るようにして体を倒したのである。グッと背中を重くなったがそれ以上に感じてしまう柔らかい感触、肩からにょきっと顔を出すようにしてるので髪の毛が触れて少しくすぐったい。
「私を揶揄うなんていい度胸。しばらくこうやって体を鍛えるといい」
「胸の感触もいい香りもするからご褒美じゃないの?」
「っ……和希が強い」
そりゃあ俺だってまだまだヘタレだよ。けどあんな風にボディタッチも多いしキスまで済ませたんだから少しは強くなったっていいじゃないか。
ポンポンと霞の頭を撫でて俺はゲームに集中した。霞は何も言わずに俺の肩に顎を置いてゲーム画面を眺めている。何も言わないのはただ見ているのもあるし単純に麻雀が分からないのもあるだろう。
「よし終わり」
「勝ったの?」
「あぁ。ほら、他の三人より点が高いだろ」
「うん」
今日はかなり引きが良かったので高得点で終えることが出来た。
もしかしたら霞っていう勝利の女神のおかげかな? なんてことを思ったけどこれ以上揶揄うと本当にやり返されそうだ。
「ねえねえ」
「なんだ?」
「和希が一回勝つごとに私が一枚ずつ脱いでいくってのはどう?」
「……うん?」
「燃えてこない?」
……だってそのシャツの下はブラだし……えぇ?
「本気?」
「うん」
「……………」
……いやいいかなぁ。
だって一枚ずつ脱いでいくとはいっても霞の下着姿は何度も見てるようなもんだし裸にしても風呂に突撃してくることがあるから……まあでも、麻雀なんてもんは勝てないことの方が多い。
「よし分かった。それじゃあやるか」
「うん……ドキドキする♪」
「安心しろ。麻雀なんて勝てないことの方が多い」
実力もある程度は必要だろうけどそれ以上に必要なのが運だ。霞の服を賭けての勝負、これでもし運が偏るのなら神様は相当なスケベってことだ。
「和希、勝って私をひん剝いて」
「……早速逆襲か?」
「ふふ♪ ほらほら、始まるよ」
マズい、完全に霞が攻勢に出てきたみたいだ。
まあでも何度も言うが勝たないと意味がないのだから霞が服を脱ぐ確率はあまりにも低い。深く考えずにやればいいかと俺は配牌を見て……おや?
一二四1白白白發發發中中中 2
「……えぇ」
「なんだか漢字がいっぱいだね。これは強いの?」
鬼強いんですけど……なあ神様、アンタはそんなにスケベな絵が見たいのか?
何も分かっていない霞は漢字が多いねと呑気なことを言っている。ちなみに、この配牌は麻雀をやったことのある人からするとおそらく驚きの後にニヤニヤが止まらなくなるものだ。
「……取り敢えず2を切って」
2は不要なので捨てていく。
「いやぁマジかぁ」
「よくわかんない……」
ちなみにマジかと言ったのは霞の食いつきが弱いことに対するものではなく、この時点で役満が確定したことの対する呟きだった。
麻雀において一番高い点数のアガリを役満と言い、色んな種類の並びがあるが今回の俺の場合は大三元という役満になる。白と發と中が三枚ずつ揃ったことで確定する役だ。
正直なことを言えばこの時点で霞の脱衣よりも、役満が上がれるんじゃないかという期待感に全てが塗り替えられてしまった。ドキドキする心臓の音がこれでもかと聞こえてくるようだ。
一二四1白白白發發發中中中 三
次にツモったのが三なので……おぉ。
俺は一を切って形は二三四1白白白發發發中中中となった。
後は筒子、つまり丸いやつの1が来た段階で俺はアガリとなる。もしもこれでアガレたら対戦している三人はスマホをぶん投げるんじゃないかな。俺の左に位置する相手が初手に切ったのは……1だった。
無情にもロンかスキップをするかの選択が現れ、当然俺はロンをした。
「勝ったぞ」
「え?」
対戦した人、特に役満を直撃させた人はごめんなさい。
最初から持っている点数は二万五千点だ。これに役満が直撃したことで持っている点数は全て吐き出された。
「マイナスになると飛びになって強制的に終わるんだよ」
「へぇ……」
「……いやでもマジかぁ役満かすげえ!」
いやこんなの俺の方が興奮するって。
霞にとっては今の役の凄さは当然分からないので単純に点が高いものとしか理解していない。
「まあでも和希が勝ったんだよね?」
「あぁ……あ」
「じゃあ脱ぐよ」
一切の戸惑いを見せずに霞はシャツを脱ぎ捨てた。
今日は一日家に居るということでラフな格好だったが、思った通りその下は黒のレース下着という……なんとも色っぽい下着だった。
「よいしょっと」
そしてまた同じように俺の背中に寝るようにして体を密着させた。
……これ、傍から見たら凄まじい光景なんだろうな。まあ霞の下着姿を他の人に見せるつもりは一切ないが。
「……本当にやるの?」
「うん。あ、和希が負けてもペナルティはないよ。負け続けてもどこかで勝てば私はこのブラを取ることになる。ほら、続きをしよう」
「……しません」
俺はスマホを置いて起き上がった。
脱がされたシャツを手に取り霞に手渡す。
「誤解がないように言えば嫌じゃないんだぞ。凄くエッチだし……そういう気分にならないわけじゃない。でもやっぱり順序がだなぁ……」
「……ふふ、分かってるよ。揶揄いすぎたかな」
「やっぱり揶揄ってたのか!?」
「当然、和希の反応凄く可愛かった」
……くぅ!!
俺は霞の髪の毛を思いっきりわしゃわしゃした。それでも霞は嫌がったりせずにずっと俺の行為を受け入れていたのだった。
「……神様はスケベだなって俺は思うよ」
「違うよ。結局運を引き寄せたのは和希だもん。和希がエッチな豪運を引き寄せただけなんだよ」
「……霞と付き合うことになって運は尽きたと思ったけどな」
「そう?」
「あぁ……まあでも疲れたよ。癒してくれ霞ぃ」
「分かった。おいで、甘えさせてあげる♪」
やっぱり休みの日は霞とこうやって過ごすに限る。
……あぁ、霞の香りが落ち着く。
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