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「バカな!魔王が復活などするはずがない!今この洞窟の外では、村の皆の命を生贄にして、封印を修復する儀式が行われていたはずだ!」
俺は、いまだ信じられない現実を受け止め、流れようとする涙を必死に我慢しつつ、叫んだ。
だが、魔王は信じられないことを口にした。
「くく、そうだったな。確かに先ほどまで儀式が行われていたぞ。何十人の人間の命を使った封印術が発動しておったな。もし、あの封印術が成功しておったら、あと数十年はこのままだったわ。」
「なら、何故!?」
「くく、お前は自分がやったことを覚えておらんのか?お前がそれを封印術式に差し込んでくれたおかげで、我は復活することが出来たのだ。村人全ての命を無駄にする、すばらしい活躍だったぞ。くはははは!」
そう言って、魔王は水晶にささる黒い短剣を指差した。
「この短剣の名前は『エアレーシェン』。あらゆるものに『死』をもたらす、呪われた短剣よ。これを使えば、例えいかなる封印であろうとも破壊するだろうな。お前たち人間にとっては、最悪の短剣ということだ。我にとっては、復活を祝福する最高の短剣だが。くはははは!」
「俺が…俺が儀式を…皆の命を無駄にさせた…?父さん、母さんの命を無駄にさせたっていうのか…?」
あまりの衝撃に、視界が歪む。今まで真っ直ぐ立ったはずの地面が、波打つような感覚を覚え、まともにたっていることも出来ない。
「嘘だ…嘘だ…」
譫言のようにつぶやく俺に、魔王は
「くはははは。真実だ。神が嘘をつくはずがなかろう。」
そう言った。
………
……
…
その後のことは覚えていない…恐らくあまりのショックに気を失ってしまったのだろう。目が覚めたときには、大広間の中心で倒れており、あたりには誰も存在していなかった。
夢だったのではないか?そんな淡い期待を抱えて、洞窟から出た俺を待っていたのは、絶望だった。
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