0-⑥
「なんだ…これ…」
俺は知ってしまった。この村の真実を。
なぜ俺は今まで疑問に思わなかったのか?
なぜ、こんなにもこの村の住人が慣習を大切にしているのかを。
なぜこの村には行商人を除いて、自分と同世代の存在がいなかったのかを。
そう、この村は魔王を封印するためだけに存在する、生贄の村だったのだ。そして、成人の儀とは、魔王封印の修復の儀式であり、村の人間すべてを生贄として、綻びを直す儀式なのだ。
三神の加護とは、その際に封印の中心となる楔の役目を果たす存在に与えられるもの。コインを取ることが目的なのではない。ただ、この洞窟の中に居さえすれば、洞窟の外で儀式は完遂され、そして加護は自分に与えられてしまうのだ。
なぜ昨日気付かなかったのか。両親の様子がいつもと違うことに。永遠の別れを覚悟していたことに。
「くそ!!」
急いで引き返そうとした俺は、しかし周囲の水晶がさらに輝きを増し、儀式が完了間近であることを悟った。
「なぜだ!なんでこんなことが許されているんだ!!こんな悪しき慣習などあっちゃいけないのに!!!」
憤る俺は懐にあった、ユダさんからもらった短剣を、腹立ち紛れに横の壁に突き刺した。
その時だった。
パキン…と小さな音がした。
そして………
洞窟内にあれだけ眩く輝いていたはずの光がすべて消え…
その声は誰もいないはずの洞窟に突如響いた。
「く…くくく…くはははは。」
「誰だ!!?」
俺は叫び、鉄の剣を構えた。
だが、そんな俺の様子など意に介さぬように、その声の主は笑った。
「くはははは。なんと無礼なやつだ。神に向かって、誰だなどというやつは。だが、今日の我は気分がいい。無礼を許そう。」
警戒を続けながら、俺はその言葉に引っかかりを感じて、尋ねた。
「神…だと?」
嫌な予感が身体中を駆け巡る。この洞窟に封印されているものはなんだったか?
まさか…そんなはずはない…
最悪の想像を必死に振り払おうとするが、
「くはははは。お前もわかっているだろう。我が魔王ハデスであることを。」
そいつはそう口にした。
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