0-⑤
翌朝、俺は父につれられて最奥の洞窟にやってきた。今日の俺の武器は、元々家にあった鉄の剣と、昨日ユダさんからもらった短剣だ。
正直、昨日の父の発言について気になるところはあったが、まずは儀式を済ませてしまおうと気を取り直し、俺は準備が整うのを待った。
やがて昼になり村の人々が皆集まると、父は村長として開始を宣言し、重い扉にかかった鍵を外した。
そして、重い扉を開けて洞窟の中に入る俺に向けて、とても小さな声でこう言った。
「前だけみて進め。」
………
真っ暗な洞窟の中、俺は心許ない松明一つをもって奥へと進み始めた。道は単純な一本道で、これなら簡単に済みそうだなと思いながら歩を進めた。
出てくる魔物にしても、最弱といわれるスライム程度しか出てこず、昨日まで文句を言っていた自分が恥ずかしくなる程だった。
そうして30分ほど歩いた頃だろうか…?
突然これまで狭かった道がぱっと開け、大広間へと辿り着いた。
辺り一面にある水晶がどこからか入ってきている光を反射して、これまでの暗さが嘘のように明るくなっている。そして、壁一面には壁画が描かれていた。
そこには、古くからの言い伝えで伝わる、誰もが知る原初の時代に起きた出来事が書かれていた。
もともと四体の神がいたこと。三体の神が世界を創り、そして残りの一体の神が魂をつくることで生命がはじまったこと。最初は上手く回っていた世界に、徐々に争いが生み出されていたこと。ここまではよく知られる言い伝えと同じだった。
だが…
「あれ…?」
そこから先は、言い伝えとは異なることが記載されていた。
争いの続く世界に白神が思い悩むうちに、心に闇を抱えてしまったこと。そして、何とかこの闇を抑えようと、一部の動物に心の闇を植え付け魔物としたこと。だが、いくら分け与えても心の闇はなくならず、いつしか白神の心の大半を占めてしまうほど大きくなってしまったこと。心の闇により、白神は黒き神へと変貌を遂げ、世界に混沌をもたらしたこと。
そして…
いつしか世界の敵となったこの黒神を魔王と呼び、三神が戦争を仕掛けたこと。魔王のあまりの力には倒すことはできず、この洞窟に、すべての存在を懸けて封印を行ったこと。だがそれでも完全封印はできず、徐々に封印に綻びが発生することから、常に封印を修復し続けなければいけなくなってしまったこと。
………
そう、神が自身の存在をかけて作った封印を修復し続けなければならないのだ。ただの人間がなんの代償もなしに修復できるはずがない…
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