0-④
家の前では父が仁王立ちして待っているのが見えた俺は、何となくユダさんからもらった短剣を懐に隠して、父の元に向かった。
「どこに行っていたんだ、アッシュ。」
「洞窟だよ。一応、明日の様子をみておこうと思ってね。」
そういうと、なぜか父はいつになく神妙な顔つきになって、「夕食後、私の部屋にきなさい」とだけいい、家の中に入っていった。
「?どうしたんだ…?いつもだったらここから長いお説教が始まるっていうのに…」
不思議には思ったものの、そんなことも時にはあるか…と思い直して、俺も家に入っていった。
………
夕食は俺の大好物がたっぷりと出てきた。
母が明日の成人の儀に備えて、スタミナがつくようにと色々と準備してくれていたらしい。
「ありがとう、母さん!こんなにいっぱい用意してくれたなんて!これで明日も頑張れるよ!」
…そんな俺が食べる姿を、父も母も何かいいたげな顔で見つめていた…
………
夕食後。
父の部屋に入ると、父は洞窟の鍵を握りしめながら、俺が来るのを待っていた。そして、徐に口を開いた。
「アッシュ…お前にとっては明日の成人の儀というものがどれだけ大事なことなのかわかっていないのかもしれん。だが、何があってもこの成人の儀は行わなければならないのだよ。」
「…逃げる気はないよ。」
「そうではない。お前はただコインを取りに行くだけの、古い慣習にとらわれた儀式だと思っているようだが、この成人の儀で大切なことは、三神の加護をお前が得ることなのだ。」
「?三神の加護?」
「そうだ。詳しいことを教えることはできないが…明日になれば、お前もこの儀式がなぜ大切か、きっとわかることだろう。」
「………。」
「さぁ、もう寝なさい。全ては明日だ。明日になればすべてわかる。」
………
……
…
自分の部屋に戻り、俺は先ほどの父の話を思い返していた。
「明日になれば、すべてがわかる…?この村には、そしてあの洞窟に俺が知らない何か…があるのか?」
ベッドに寝ころび、ユダさんに貰った短剣を眺めながら色々と考えてはみるものの、全く心当たりがないまま、気づいたときには眠りに落ちていた。
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