学校での過ごし方
私が通う
授業は1日6コマ。部活動や同好会、生徒会も
ある。
高校には2年生から3年生まで委員会に所属するという決まりがあり、私は図書委員会に所属していた。高校に入学した時から入ると決めていたのだ。
昼休みの活動が主で曜日ごとにカウンター当番が決まっている。私は毎日行っていた。司書の立花先生や委員会担当の相楽先生から許可はもらっているし、委員会の仕事は苦ではない。なにより教室は
騒がしくて肩身が狭いので都合がいい。
いつも通り準備をしていると、入口から黒縁メガネをかけたエアリーヘアーの男子が顔を覗かせた。
しかし、毎日来るにもかかわらず絶対に本を借りようとしない。そのような義務は無いので気にすることはないのだが、図書委員をやっているせいか
気になっている。
名札のおかげで名前を知ることができた。また、学章の色が私と同じ青であることから2年生なのは間違いない。
「こ、こんにちは……」
「……どうも」
挨拶を交わすと彼は窓際に向かって行った。
素っ気ない態度に少しだけ傷付くが、最初は見向きもされなかったので随分進歩したと思う。
何の本を読んでいるのかとても気になるが、
プライバシーに関わることなので我慢している。
(でも大体はわかる)
彼はいつも4類の棚から本を取ってくる。
司書の立花先生から聞いたことだが、本には十進法といって書かれている内容によって分類が決まっているそうだ。
棚の整理の時に意識して覚えて、2桁までなら
番号だけで何についての本なのかわかるようになった。そして4類は自然科学にあたる番号だ。
高校生だし、興味のある分野が絞られていてもおかしくないが、意外だった。
(宇宙とか科学?理系なのは間違いないけど)
挨拶は交わすようになったがそれだけだし、
クラスメートでもないので知っている情報があまりにも少ない。
それに加えて毎日姿を見るようになったせいで、彼のことが気になり始めていた。
(いけない、別の事考えよう。
今日は誰か来るかな……)
昨日は古筆君だけだった。昼休みも昼食時間を含めて30分と短いし、図書室に来る生徒も決まっているため、5人も来れば万々歳だ。
このようにカウンター当番はあるものの、先の理由でヒマなことのほうが多い。利用者が居ないときは本を読んでいいと
立花先生から言われているので、時々室内の様子を見ながら読書を始めることにした。
今読んでいるのは『クラウントラベル』という、一国の王女が世界を救うために旅に出るファンタジー小説だ。
王女は大人しく世間知らずなため、行き着いた街で商人に騙されそうになったり、立ち寄った酒場で酔っ払いに絡まれたりと世間の常識に翻弄される描写がおもしろい。
しかし、最近考え事が多くなって読書に集中できなくなってしまっていた。
最も頭を悩ませているのが他の図書委員に
ついてだ。
来る人が少ないためか図書委員はラクな委員会と思われて、やる気のない人が集まってしまっている。もちろん、私以外にも当番の日にちゃんと来ている人もいるようだが少数派だろう。
(高校生なんだから、せめて委員会の仕事ぐらいは責任持ってやってほしい)
遠回しに立花先生に伝えてはいるが、状況は変わっていない。おそらく先生は非常勤のため強くは言えないのだろう。
そうこうしている内にチャイムが鳴った。慌てて本をカウンターの下に置く。気にすることでもないのだが見られたくない。
2分ほどして古筆君がカウンターの前を
通り過ぎる。
「あ、ありがとうございました」
彼は小さく頭を下げると図書室を出ていった。
何か言うのかと思っていたら無言だったので軽く
ショックを受ける。
(やっぱりあまり話したくないんだろうな)
推測ではあるが、人付き合いが苦手なのだと思う。私が言えることではないが、もう少し喋ってもいいのではないだろうか。
「私も帰らないと。授業に遅れるわけには
いかないし」
後片付けをして鍵をかけると、職員室に
向かった。
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