第29話 うつくしき庭






 と、いうわけです。(忘れちゃってたら前話を読んでね。)



 そんなわけで、あれからぶっ通しで一時間ほど人狼です。なのに勝てない。解せぬ。他にもやりたいことあるのに、あまりにも勝てないのでエンドレス人狼エンドレスワンナイトですよ!!


 傾向と分析ですが、坊ちゃんは基本、何考えてんのか分かりません。(白目)無表情。発言少ない。相手(この場合主に私)が勝手にいろいろ考えて自滅していくパターン。基本無表情なのに、たまに、にこ、と笑われたりすると余計意味がわからなくなって余計に自滅していくパターン。私が。憂は……憂は……狂人になると無双です。サイコパスとの相性がいいの?でも今回も狂人?って思うと普通に村人だったりするし意味わからん。サイコパスなのかな?



「すみません……あ、あの、とってもとっても楽しいのですけど、私、そろそろ休憩時間が終わるので……。」

「ん?あ、そっかあー!ごめんね?気づかないで。」

「い、いいえっ!あの、すっごくすっごく楽しかったです!!」



 憂はそう言って頬を薔薇色に染めた。うん。よっぽど娯楽が少なかったんだなあ……遊びたい盛りにこんなじめじめねちねちしてる奴ばっかのお屋敷で働くとか…………涙出てきそう。心の中の稀子ママが言ってる。よしよししてあげなさいと。



「ふ、ふああああ……」

「ふふふ、憂、また一緒に遊ぼうね!」

「ふ、ふあい…………」



 次の約束をしてから、憂は部屋を出ていった。状態異常:恍惚のままで心配だったが、まあ、うん、大丈夫デショウ……。

 …………。

 ……………………憂って…………



「憂って……変わってるね。」 

「……稀子ちゃんさあ、将来、刺されないようにね……。」





 …………えっ、何故に??と思って振り返ったけど、坊ちゃんは目を合わせてくれなかった。






■■■






「……よし!完璧!おばあちゃん、協力してくれてありがとう!」

「おや、出来上がったのかい?」

「うん!あ、ねえ?味見してくれない?」



 そう言って私は振り返った。雪のような白髪。優しげな笑い皺。芥子色のストールを肩にかけた可愛らしいおばあちゃんが、椅子に座って微笑んでいる。



「あら、わたしの舌でいいのかねえ?」

「うん。お願い!」



 だって、私じゃあ、味分からないし。


 小ぶりのホールケーキが二つ。スポンジは昨日焼いておいたので、今日はデコレーションのみだ。



「うん。美味しいよ。甘さは控えめで。」

「ん!良かった!あ、あの……良かったらこっちのケーキ、貰ってくれないかな……?」

「いいのかい?嬉しいねえ、私は甘党だからねえ。」



 合わせてくれているだけなのかもしれないけど、嬉しくなる。



「今度は、おばあちゃんのために、甘いもの作るからね!」

「ああ、楽しみにしているよ。」



 ホールケーキ(一人分)をお皿に乗せ、お盆に必要なものをのせていく。フォークと、ろうそくと……あとマッチに……などなど。



「ケーキには紅茶じゃないかい?」

「わ、ありがとう!」 



 差し出されたのは、こわけの袋に入った紅茶のティーパック二つ。



「カップはここに……。ほら、どうぞ。」

「うわあ、綺麗だねえ。」



 年代物のようだが、美しい装飾は色褪せていない。きっと、丁寧に、大切に使われてきたのだろう。



「気に入ったならあげるよ。」

「えっ、いやいや、こんな素敵なものもらえないよ。」

「物というのは、喜んで使ってくれる人のところにあってこそさ。分かるだろう?」

「わ、分かる。」

「じゃあ、貰っておくれ。」



 嬉しそうに微笑まれ、それ以上は断れなかった。



「おばあちゃん、ありがとう。大事にするね。」 

「ああ、そう言ってもらえると嬉しいよ。さ、お友達が待っているのだろう。」

「うん。じゃあ……ほんとにほんとにありがとうね!」



 ケーキがのったお盆を手に取る。この離れだけは洋館なので、キッチンから玄関まではいくつかのドアがある。おばあちゃんは、先にドアを開けて待っててくれた。玄関に着く。おばあちゃんを見る。



「稀子ちゃんは……飯綱の側仕えだったかね?」

「ううん。違うよ。」

「そうかい。なら司かい?」

「ううん。違うよ。おばあちゃん、私は、の側仕えだよ。」

「そうかい。」



 靴を履く。



「稀子ちゃんは……司の側仕えだったかね?」



 私は笑顔を向ける。



「違うよ。の側仕えだよ。。」



 おばあちゃんは、大奥様の美耶子様は、目尻の笑い皺を深く深く刻ませて、美しく笑った。



「そうかい。稀子は、夕子さんの側仕えだったかい。」

「………………。」



 私はにっこりと笑って、おばあちゃんに改めてお礼を伝えた。





 ――――――美耶子おばあちゃんとは、この離れの洋館の庭で出会った。いつの頃だったかな……冬椿が綺麗で、見惚れていたら迷い込んだのだ。美耶子おばあちゃんは、飯綱様の継母にあたる。つまり、飯綱様の前の当主の後妻さんだ。


 美耶子おばあちゃんは、一人、離れの洋館で暮らしている。美しきブリティッシュガーデンは長年、手間暇をかけて作り上げたもので、随所にこだわりと愛情が感じられる、素晴らしい作品だ。


 あんまりにも綺麗で、それに、母屋と違って重苦しい空気が薄いことにはしゃいで、おばあちゃんと庭を褒めちぎっていたら、仲良くなった。コミュ力高め()な機体としての性能を遺憾無く発揮したのだ。

 

 あとでおばあちゃんの正体を知ってぶっ倒れそうになった。けど、なんだか気に入ってもらえたようで、今では良い茶飲み友達である。





 …………美耶子おばあちゃんは、とても良い人だ。こんなところに何故いるの??と疑問に思うが、人はそれぞれ事情があるのだろう。私だって話づらいことはある。お互いにそのあたりを慮りつつ、年齢と身分とついでに種族(自分で言ってて悲しい)を越えた友情を育んでいるというわけだ。……アレ?初めての友達、憂じゃなくない?………………同年代、の、初めてということにしておこう。(同年代でもなくない?とは言わないで。)

   


 だけど、

 ひとつだけ

 気になるのは……


 美耶子おばあちゃんは、坊ちゃんのことをことだ。何度話しても伝わらない。すぐに真っ白に戻ってしまい。たぶん…………実際に坊ちゃんに会っても、おばあちゃんには見えない、のだと思う。   






 ……

 ………………

 ………………………………





 でも、ま!



 この家がオカシイことなんて今に始まったことじゃないしな!!!(クソデカボイス)




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