第15話 新しくなった機体はメテオ砲とか出るかもしれない(出ません)
「もーーー!毎日調整調整調整調整ばっかーーーり!私は!はやく戻りたいのに!!」
「ふうん、外の世界ってそんなに良かったのかい?」
お決まりの駄弁り場。道場裏で美哉姉に愚痴を聞いてもらう。
「というか……心配で……。」
「心配?まーたへんなこと考えてるんだね。」
「私、大事なところで倒れちゃったから……。」
「そんなこと、私たちが考えることじゃないよ。分かってるんだろ?」
「……分かってる。分かってるんだけど……。」
坊ちゃん、大丈夫だろうか。幼い坊ちゃんに後始末を押し付けてしまった……。大人の私がぶっ倒れて、子供に全て押し付けるなんて……。だいたい、坊ちゃんは何があったかなんて説明できない。なんか最後の方何やらおしゃべりしていたような気がするけど多分夢……夢??ううん……壊れかけてバグった??ああああそのあたりひっくるめて早く戻って確かめたい……!!
「まあ、そろそろじゃないかい?動作確認異常なし、だし。」
「はあ、そうだといいんだけど。」
「……そういえば、新しい機能、つけてもらったんだろ?見せてくれよ!」
あ、あれ?もしかして美哉姉……気遣ってくれてる!?美哉姉を見やると、にこにこと楽しそうな顔をしてこちらを見ていた。美哉姉は、私より機体も精神の設定年齢も高い。
私が少女型……つまり、14歳前後の外見に対し、美哉姉は16、7歳ぐらいだ。いやまあ、16、7歳だって少女だけれども。ん?じゃあなんだ?私は……幼女?ちがうか、カテゴリ違いで怒られるわ。あはははってそうじゃなく!
「み、見てくれる!?私の新機能!」
「お!いいねえいいねえ、それでこそ稀子!」
「え、えへえへ!じゃあ見ててね!新機能その一!」
「よっ!」
「口から針が出るようになりました。」
「おお!なるほど!それで敵に噴射するんだね!最大何本だい?!」
「一本です。」
「え?」
「お裁縫用なので。」
「あ、ああ……なるほど……。」
「新機能二!!」
「おおっ!」
「ご飯が食べられるようになりましたー!!すごくない!?ねえすごくない!!!」
「…………。」
「…………えっ。」
「…………いや、意味あるのかい?消化出来るのかい?」
「…………いや、あとで取り出さなきゃ駄目。腐っちゃう。」
「……………。」
「……………。」
「人形だとバレないためにはそういう機能必要だね!」
「そうそう!これで、ダイエットしてるので……なんて嘘つかなくても大丈夫になりました!そしてそして最後!!三つ目!!!」
「おおお〜真打登場かい?!」
「皮膚にあったか機能が搭載されました。これで冬に触られて冷んやり!?死んでる?!なんてことも防げます。」
「それは…………大切な機能だね…………。」
うん。出力の問題で、これ以上機体の性能を上げるのは無理みたい。つまり、強くなるには私がこの機体を使いこなして、120%の力で戦うしかないってことだ。
「あーあ、自信失くすなあ……。」
「いや、あんたはよくやってると思うよ?」
え、なんか……美哉姉優しくない?こんなに優しかったっけ??
「…………私もさ、来月出荷が決まったんだ。」
「え!そうなの?」
「ああ、出荷先はどこぞの祓い屋らしい。」
「そうなんだ……じゃあ、もう会えないね。」
「そうだね。」
美哉姉はそう言うと、静かに立ち上がる。逆光で、美哉姉の顔が見えない。
「あんたともこれで最後かと思うと、なんだか感慨深いよ。変な気分だ。」
「それはきっと、寂しいって言うんだよ。美哉姉。」
「さみしい、か。はは、アンタって不思議な子だよ。アンタは美哉姉美哉姉って呼んでくれてたけどさ、アンタの方が歳上みたいだった。」
ぎ、ぎくぅ……そりゃ、前世の延長線上を生きてる気分の私は、精神年齢はアラサーですから……。
「ま、お互いせいぜい長く稼働しようぜ。そしたら、何かの縁があるかもしれないしね。」
「ん!そうだね!」
にっこりと笑って拳を合わせる。
そうだ、これが今生の別とは限らない。またどこかで道が交差することもあるかもしれないのだから。
「じゃ、戻るか。今日のノルマはおしまいだろ?」
「うん。そろそろ荷造りもしとかないとね。」
「荷造りって…私物ないだろうに。」
「いや、スペアの腕とか二、三本持って行こうかなって。」
「……見つからないようにしろよ?」
などなど、美哉姉と喋りながら道場裏を後にし、表に回ると、工房の方から、三機ばかり機体が近づいてきた。
「ん?見覚えがないけど、新しい子たちかな?」
「……ああ。あいつらな。そうだよ。」
少し悩んだが、三機に話しかけてみることにする。なんたって私はコミュ力高めな以下略。
「こんにちはー!君たち新しい子たちだよね?私は稀子っていうの。少しお話ししない?」
「……。」
「…………。」
「……。」
えっ……ス、スルー!?三機ともスルーですか!?浮かべた笑顔が引き攣っていくような気がする。
「あー、稀子。こいつらほら、出来たばかりだから。……オマエら、大丈夫だ。行っていいぞ。」
美哉姉の一言で、無言のまま三機が去っていく。少女型二機と、少年型が一機の一行はそのまま道場に吸い込まれるように入っていった。
「出来立てってあんな感じなんだ……。」
「そうだな。言っとくけど、アンタはずっとあんな感じだったからな。」
「え、まじか。ごめん。」
「気にしてるわけないだろ?」
「まあ、そうだと思いますけども……。」
――ふうん。生まれたばかりってあんな感じなんだね。
――人間で言うと、赤ちゃんかあ……あの無反応も、刺激に対してどうしたらいいか分からないからなのかな?
「ねえねえ。美哉姉。」
「?なんだい?」
それは、本当に唐突に降ってきた疑問だった。むしろ今までどうして疑問に思わなかったのだろう。気がついたら、もう、知りたくて知りたくてたまらない。何だか、ドキドキしている。胸が熱い。胸の奥が熱い。
「あのね、あのねあのね、ちょっと疑問に思ったんだけど。」
「だからなんだいっていってるじゃあないか、まどろっこしい。」
「うん、うんうん、そうだよね?そうなんだけど。」
あれ?でも、聞いていいのかな?何か、聞いちゃいけないような気がする。でも知りたい知りたい知りたい知りたい知りたい知りたい知りたい知りたい知りたい知りたいどうしても知りたい……!
「あ、あのね……わ、わたしたちって……」
「うん。」
「わたしたちって……どうやって」
つ く ら れ て い る の ?
「どうやって……何?」
「……………………な、なんでもない!」
「は、はあ?」
「な、何でもない。忘れて!」
ごまかすことも出来ずに駆け出した。美哉姉が後ろから何か叫んでいるけど、取り繕うことができない。
あれ、なんだろう。胸が、胸が苦しい。でも、でもでもでも、多分、聞いちゃいけないこと。これは、疑問に思っちゃいけないこと、だ。だってだってだってそうじゃないと!!―――――――――ちゃう!!
「あれえ、何が?何が……――――ちゃうの?」
痛いよ、苦しいよ、訳わかんないくらい頭がぐらぐらしている。わたし、おかしくなっちゃったの?なんで?ただぎもんに思っただけなのに!
立っていられなくなってその場に座り込む。ここがどこなのかも私にはわからない。
「ぅあ………あう、だ、だれか……だれか、たすけ……」
ずりずりと床にうずくまる。
どうしよう、胸が……熱い熱い熱い治らない。どうしよう、やっぱり治ってなかった?このまま壊れちゃう……?
その時、だれかが近づいてくる気配を感じ、必死に顔を動かした……。
「あ……う……だ、誰……?」
「……。」
「ぅぅ…………ぅ。」
「…………。」
下駄の音を響かせ、その人物はどんどんと近づいてくる。
「ぁ………………ぉ、とう……様…………?」
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