第14話 お焚き上げってつまり…火炙り…?
「ぬあ…………?」
「む、起きたか。」
「間抜けヅラだねえ。」
「み、美哉姉?槐兄??」
がばり、と起き上がる。固い机の上に寝かされていたようだ。懐かしい、作業台だ、ここ。壊れちゃった時、修理するためによく乗っていた……修理……?
「あ、わ、私!坊ちゃん!!坊ちゃんは無事!?」
「そりゃ無事でしょう。」
「無事じゃなかったらオマエは既にスクラップだ!」
「アッハイ……ソウデスネ……。」
うう、このドライな感じ、懐かしい……!!でもなんか今ならこのくそドライだと思ってた対応にも愛を感じてしまう……!あれ?おかしいな?私、人間の皆さんと暮らしてたのにね!?人形の方が感情感じるってなんぞ?
「わあ、ボディぴかぴかだあ!綺麗になおってる〜!」
「治ってるというか、ほぼ交換だからな。」
「なかなかにぐちゃぐちゃでボロボロだったねえ。アンタがあんなになるなんて、よほど強い相手だったんだね。ま、それでも壊れなかったんだから、アンタの勝ちさ。」
うん……。強かったよ。大吾郎さんは……でも、大吾郎さんを倒したのは……殺したのは、私じゃない。
「……私、すぐに戻れるかな。」
「気が早いねえ。動作確認終わってからじゃないかい?」
「オマエが運ばれてきたのが五ヶ月前。もうすでにすぐに、ではないな。」
「そ、そんなに経ってるの……!?」
「まあ、あんたほぼほぼ壊れてるようなもんだったからねえ。」
「スクラップにして、新しい機体を納品した方が早いのではないか?と波稲にも伝えたそうだ。」
げ、ま、まじか。知らないうちに廃棄処分……そして新しい子が納品されていたかも知れないなんて……これがリアルな、私のかわりはたくさんいるからって奴ですか?つらたん……。
「でも、アンタがいいって言われたそうだよ。良かったねえ。愛されてるじゃないか。道具冥利に尽きるねえ。」
「……そうだったんだ……。」
え、誰だろう。そんなこと言ってくれたの……藤田氏?いや、まさかな……。でも、嬉しいな。私がいいって言ってくれる人、いたんだな。
胸がぽかぽかするような、幸せな気分の私に余計な一言が投げつけられる。
「ああ、あとせっかくならもうちょい美少女にして欲しいってオーダーも入ったそうだぞ。」
「藤田ァァァ」
「ってあれ?暁音は?」
動作確認に付き合ってもらってひと段落。訓練場である道場裏で休憩をしていたとき、ふと気がついた。ごめん、暁音……いろいろあって忘れてたよ。
「ああ。」
「暁音か。」
「あいつはなあ、またこの前の任務でやらかしてなあ。」
「右腕がもげて帰ってきたよ。」
「あは、また?そっか、それでなおしてる最中なんだ。」
懐かしい。暁音はちょっとそそっかしいというか、爪が甘いと言うか……敵を倒して油断したり、よそ見をしていて破壊されたりなどをよくしていた。その度に美哉姉と槐兄に小言を言われてたっけ。一年も前のことじゃないのに、すでにセピア色がかかってきている。
「いや。違うぞ。」
「え?じゃあほかの任務?」
「何を言ってるんだい?確かアンタもあの時いたはずだろう?」
「あの時??」
「まあ、覚えてないのだろう。稀子もいろいろあったようだからな。」
え?ちょっと本当に何のことか分からない……。けど人形ってのはこういうとき便利なもので、キーワード暁音、で記憶の検索をかける。ええと、ええと……暁音暁音暁音暁音……。
――――――――と、悶々としている私を尻目に、本人は「ボディ新品になった〜」と能天気に喜んでいた。おまけに、「俺、次失敗したら廃棄だって言われた〜ご主人腕悪すぎじゃね?」だなんて言ってけらけら笑っている始末――――――――
え、まさか…………まさかまさかまさかそんな……………………。
「あいつもなあ、稀子の一年点検までは頑張ると言ってたのだがなあ。」
「まあ、頑張った方じゃないかい?あいつの制作者、ろくでなしだし。暁音以外稼働してる機体残ってなかったろう?」
「仕方ない。これも道具の定めだ。」
「ちょうど新しい機体も何体か完成するしね。」
……………………そん…………な…………。
……………………暁音………………………………。
「なーんちゃって!!!稀子!久しぶり!!」
「うわあああ!!」
ひょい、と空から降ってきた暁音に仰天してのけぞる。
「あっはは〜ひっかかってやーんの!」
「ふむ。これがドッキリというやつだな。」
「人間たちは何が楽しいのやらと思ってたけど、ちょっと……癖になりそうだねぇ。」
え、ええ……。ちょっと待って……私のシリアス返して……。もう既にヘビー級のシリアスのバーゲンセールに参加してきたところなのに!!
「あはははは……うわっなんだよ!やめろよ!いでででででで」
「…………っ…………っっっ!!!」
「無言でぼこぼこか。」
「ふむ。ドッキリというのはやられた側は嫌なようだな。」
「稀子だからじゃないかい?変わってるし。」
「そうかもな。」
「えっちょっとごめんってやめ……やめい!オマエの力強いんだよ!壊れる!」
「………怒怒怒怒怒」
「口で言うな!」
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