第45話 セリア救出作戦②
「確かに、アナスタシアのいうことは一理あるのかもしれない、だが皆さんは思ったことはありませんか、あなたが本当に困っているときに助けてほしい一心で教会に行き高いお金を払い、そして【ヒール】を受けたはいいが完治しなかった、そんな状況できっと教会の人はこういうでしょう!そういうこともあると!決して【ヒール】は万能ではないのだと、諭され自分もしょうがないのだと思いませんでしたか、でも実はそれがただのミスで【ヒール】を使う人の能力不足だとしたらどうですか!
あなたのその腕が、足が、体が実は完全に元に戻るのだとすればどうですか!それでも皆さんは教会のいうことが正しいと言えますか!」
民衆はざわめき始めた。
「言いがかりはよしなさい、できもしないことをペラペラといい皆さんと惑わそうとする、まさに異端者ですね」
「ここにいる冒険者は以前教会で【ヒール】を受けそして後遺症を残した人たちです、冒険者にとって体の異変は他の職業よりシビアな問題です、命に直結しますからね。だが、その後遺症を俺が治したとしたら?」
冒険者は自分の体を見せる。
「彼らは腕や足に後遺症がありました、だが今はない、なぜか俺のスキルで直したからです!アナスタシアは俺やセリアのことを異端者と言うが人の怪我を治すことが罪なのだろうか!ましてや教会が匙を投げて後遺症に苦しむ人を救うことの何が異端なのだろうか!いいや、何も問題がないはずだ!だから俺は声を大にしていう、今回の火あぶりと決めたことは間違いだ!」
さあ、言いたいことは言えた!
さっさとアマルフィたちがセリアを救ってくれよ!
一方アマルフィたちは
「アマルフィ作戦はあるんだよな?」
「君、私に話しかけるときは敬意をもって話してくれないかな」
「あ?俺は俺より弱いやつに敬意は払わない」
「私は君より弱くないし、それに賢聖には敬意を払っているように見えるが?」
「そりゃ、賢聖さんは恩人だしあの人は俺に優しかった、俺はそれだけで敬意を払う理由になるぜ、だがあんたにはそれはない、いきなり殴りかかってくる女には呼び捨てでいい、クソアマって呼ばないだけましだろ」
あくまでエレンは不遜な態度でアマルフィに接する
「ああ、そういえば君は賢聖に優しくされてボロ泣きしてたね。それに私は君より弱くないしあの時は手を怪我している君に配慮して手加減していたんだよ、そんなことも分からないなんてとんだ天狗野郎だね、勘違いも甚だしいものだね」
「おい、クソアマ、ここでやるか?」
「いいよ、といいたいところだけれど賢聖に私は託されているからね、その約束を果たすことにするよ。君と違って全体が見えているんだよ、馬鹿な君と違ってね」
なおもアマルフィはエレンを煽る
「言ってろクソアマ、賢聖さんが本当に期待してるのは俺だ。お前より先に絶対にセリアを救い出して賢聖さんに届けてやる」
「言ったな、クソガキ、勝負だ、負けても賢聖に泣きつきくなよ!」
「吠えずらかかしてやるぜ!」
ここでも新たな勝負が幕をあげる・・・?
―――――エレン視点
何食わぬ顔で二人は教会の中に入っていく。
「おい!今日は立ち入り禁止だぞ!」
「すまないねぇ、そういうわけには行かないんだよ」
「おっさんわりーが先を急ぐんだ」
素早く教会の関係者を黙らせる。
冒険者は魔物を倒すだけの仕事ではない、いわゆる何でも屋で報酬次第で何でもする、その中に対人戦闘を想定したものが含まれる、例えば盗賊討伐なんかもその一つだし懸賞金があるやつを捕まえるのもそうだ
だから、人間一人気絶させるなんて造作もないことだ
そこからエレンとアマルフィは二手に分かれた。
『勝負だ!』
「お前たち何してる!」
「何って、見りゃわかんだろ、今日火あぶりにある予定の女の人を探してんだよ」
「ッ!あの異端者の仲間か!おい!ジャッカルを呼べ!」
ジャッカルというのは聖人・アナスタシアの直属の戦闘部隊だ。賢聖たちを追っていたのがまさにそのジャッカルだ。
「ジャッカルだあ?あんな雑魚よこしても状況は変わんねーよ、死にたくなかったらさっさとセリアさんの場所はけ!」
「聞き捨てならないねえ、誰が雑魚だって?」
「あ?てめーらだよ、教会の連中で戦える奴なんていねーよ、本当の戦いを知らねー甘ちゃんばかりだぜ」
「ガキがよく吠える、キャンキャン吠えるのは怯えてる証拠だよ」
エレンの前に男が立ちふさがる。
「ん?君はよく見れば最近、ドラゴンを倒したエレン君じゃないかね。」
「てめぇ、俺のファンか何かか、だったら話がはえー、さっさと今日火あぶりに会う女の人の場所を教えろ、そーすれば痛い目見なくて済むぜ」
「ああ、勘違いさせてしまったならすまないね、私が知っていたのはね、君がパーティーメンバーと一緒にドラゴン討伐をして仲間を庇い怪我をして、そしてね、見捨てられたことだよ!!
実に傑作じゃないか!仲間のためにと君は庇い、そしてドラゴンを殺したなのに怪我をした君をみて仲間は君をこれ幸いにと見捨てた、その話を聞いたときには私も笑ったよ!ここ最近で一番いい気分だった、英雄だなんだとちやほやされるどころかどん底に落ちた気分を一度聞いてみたかったんだよ、どんな気持ちだったかい?」
ん?ん?と、その男はニヤニヤしながらエレンに聞く
「言いてえことはそれだけか?だったら死ね」
エレンは静かに槍を構え男に向かって突き刺す、が空を切る
「ハハハ、怒っているみたいだね、でも私はそこじゃないよ?そして敵は私ではない!」
「あ?」
「周りを見たまえよ」
そこにはエレンのパーティーメンバーだった仲間がいた。
「チッ!趣味のわりースキルだな」
かつての仲間たちがエレンに話しかける
「エレン!お前がいなくなって俺たちはやりやすいよ!」「トラブルがないからな!」「あんたが私を庇ってドラゴンに食われたときは最高の気分だったのよ、できればあのまま死んでくれればよかったのにね」
「ハハハハハ、かつての仲間にそこまで言われるなんて君は相当嫌われてたんだね!どうした、辛いかい?悲しいかい?笑いが止まらないよ」
「シュミット、リット、アリス・・・本人に言われるのはいい、がお前の作った幻想に言われるのは腹が立つな、もういいから死ねよ」
「何を言っているんだい、君は私の場所が分からないし、それに君のスキルは平凡な【槍術】だろ?そんなスキルで私を倒すことはできないよ、でもまあ、かつての仲間に殺されるのは悪いものじゃないだろ?」
エレンのスキルは平凡な【槍術】というスキルだ、効果は普通で槍を使うときの技量が上がるというものだ、○○術というスキルはこの世界では最もポピュラーなもので、だからこそスキルの力で活躍するのは難しいとされる。いわゆる外れスキルと呼ばれるものだ
「あんた、俺のスキル知っててよくケンカ売れたな」
「何を言ってるのかな、ああ、最後に遺言を言う時間がほしいのかな」
「【槍術】でドラゴンまで倒したんだぜ、そこら辺の雑魚とはわけが違うんだよ!」
そして見えないはずの男に真っすぐ走りそして槍を振りぬいた
「な、なぜ!」
「なぜって、そこら辺の連中と一緒にすんなよ、それにな、怪我をした腕はもう治ってんだ、だから俺は負けねーよ!」
エレンは間違いなく、この街の冒険者の中でも最高レベルの力を持っている。
スキルによる恩恵は大きいがそれですべてが決まるわけではない、たゆまぬ努力があればこそスキルも輝くものだと本気でエレンは信じ行動してきた、だからこその絶対的自信がある。
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