第44話 セリア救出作戦①
今日が火あぶりの日だ。
広場には多くの人が集まっている、見世物として嬉々として集まっている人や敬虔な信者らしき人、当然教会関連の人、そして冒険者。
段取りは準備した、後は今日の大一番でやってのけるだけだ。俺の周囲には護衛として怪我を治した冒険者数名が控えている
「アマルフィ、エレンそっちは頼んだ」
「ああ、任せたまえよ。賢聖の方こそうまく気を引いてくれよ」
「賢聖さん、必ず助けて見せるぜ。どうか無事で」
「エレン、別人みたいだぞ?」
「そ、そんなことねえよ!でも、まあ、俺にとっては恩人だからな感謝してんだよ」
アマルフィ、エレンはここから別行動、火あぶりになるまでの間、この時間に救出に向かう。普段の警備だととてもじゃないが救出は難しいらしいが、今日はこれだけの人数が来ている当然仕切っているのは教会の連中で相当の人手が外に出ている。そしてここはあの聖人、アナスタシアのおひざ元だ、こういうイベントの時には顔を出すらしい
「皆様、今日はよく集まってくださいました。」
ッ!始まったな
「今日は皆さんに知っておいてほしい話があります。一人の少女がいました、その少女の両親はあろうことか自分たちの私腹を肥やすために【ヒール】のスキルを教会ではなく個人で使っていたのです、当然私たちもそのような私腹を肥やすためだけにスキルを使うものを許すことはできません、相当の報いを受けてもらいました。
ですが、その少女には罪があると思いますか?子供は生まれてくるのに両親を選べません、子供は自分が生きる環境を選べません、私はそんな子供に罪があると言えません、むしろ子供こそ一番の被害者だとそう思いました。
私たち教会はその少女に援助をしました、孤独を感じないように、両親の犯してしまった罪を繰り返さないように
しかし、私は甘かったようです、いえ、私の導き方が招いた罪なのかもしれません。なぜならその症状は自分の両親と同じように【ヒール】のスキルを使いお金を稼いでいました。
どうか、この場でこの罪を裁いていただきたい、私の力が至らないばかりに一人の少女を罪びととしてしましました」
アナスタシアは深々と頭を下げる。
民衆からは「聖人様は悪くない!」「その少女が悪い!」「【ヒール】を金稼ぎに使うなんて信じれない!」はじめは数人から発した言葉が今や民衆全員が言っているかのような大きさになった
アナスタシアは頭を上げ続ける
「私はこの場でその少女の罪を許してあげたいとそう思ってます。ここで、この場で火にかけ罪を燃やして天界に行くことで救いたいのです。」
「なんとお優しい」「慈悲深い」「さすが聖人様」どの声もアナスタシアを絶賛する声だ。おそらくスキルによる誘導があるんだろうな、この人数だ、全員に強力な洗脳はむりにしろ大衆の意識を誘導しやすくするぐらいの効果があるはずだ、だから拒絶する心があるやつは対抗できる。現に俺の近くにいる冒険者は問題ない
さあ、ここから俺の出番だな。ここでいい勝つ必要はない、目的は時間稼ぎだからな。だが、セリアのことをあんな風に言われて黙っていられるほどお人よしでもないからな
「あんたの言うことは出鱈目だ!」
アナスタシアのスキルは民衆を誘導するものであり、その効果は範囲が広ければ弱くなることは明白だ
出なければ今頃みんなうつろな目をしながら何も考えてないだろうからな、少なくても近くの冒険者は正気だ、これはアナスタシアのスキルに対して対抗するという気持ちがあるからだと考えるのがたぶん答えだ
つまり、この程度の効果であれば俺は覆せるチャンスがある!
本当は時間を稼げればいいが一番いいのは民意を味方につけることだ、だめで元々、今回は俺がでしゃばることで勝利しているんだ、行くぜ!!
自分を奮い立たせ、息を吸い、相手を見定めて、吠える!
「あんたの言うことは出鱈目だ!」
大衆は俺の方に向く、そしてアナスタシアも
「あなたはッ!」
「そうだ!俺が今回の騒動の原因、【リハビリ】のスキルを持つ加賀賢聖だ!」
「まさか、生きていたとは驚きです」
「いいか、よく聞け!今回のことは間違っている!聖人、アナスタシアは今回火あぶりに会う少女が【ヒール】を使いお金を稼いでいるといったがそれは違う、彼女と俺は食事一回分の値段で引き受けていたんだ、それがどうだ!皆も知っている通り教会は【ヒール】を独占しお金をもらっている、その一回の金は一年分の食事と同じ金額だ!これのどこが金稼ぎだ!本当に私腹を肥やしているのは教会だろ、それは皆、薄々気が付いていることだろう?!」
アナスタシアのそばに控えている人間が武器を持とうとしたがこっちは冒険者の見方がいる、アナスタシアの直属の部隊と冒険者のどちらが強いか聞いてみたが真っ向勝負なら冒険者は負けないとのことだ、身の安全は大丈夫!これから好きかっていうぜ!
「あなたは何を言っているのです!いいですか、【ヒール】は何度も使えることができるものではないのですよ、だから本当に必要な人に使っているのです。あなたは私たちに言いがかりをつけ無暗に教会の評判を落とそうとしているだけです」
「なるほど、つまりあなたの言う本当に必要な人にというのであれば、それは確かにそうだ!だがそれは決してお金を基準に決めるものではない!もし仮に命の順番をつけるのであれば病気や怪我によって分けるはずだ!」
「つまりお金で物事を決めるなと?詭弁ですね、人はお金なしでは生きていけない、もし仮にお金がなくても生きていけるというものがいるなら私の前に出てきてください!いないでしょう、それは皆さん分かっているからです、お金が絶対ではない、でも生きていくには必要なものだと。それに教会に集まったお金の一部は皆さんに還元しています、本当に貧しい人への施しとしてね」
まずい、論点をずらされている。ここでは正しいことを言う場ではないんだ、いかに耳障りのいいことをいい民衆を味方につけるかという勝負なんだ
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