第42話 スキルの力

騒ぐエレン、エレンの言いぐさが気に食わずにキレるアマルフィ、そんな二人をいさめようとして机をぶっ壊したグラム、そして怯えを通り越して悟りの境地まで来た私こと加賀賢聖。

修羅場というやつなのだろうか、話の中心にいるはずなのにどうも話が俺を置いて進んでいく


今はどうなってるかって?怒声とものが壊れる音、時折耳元を過ぎる空を切る音、この世の地獄がそこにあった。


「さて、出されたお茶でも飲むか」


ああ、やっぱり紅茶はおいしいな。

後ろで「ぶっ殺す」「やれるものならやってみろ」「二度と私にそんな口きけないようにしてやる」とか言いあってるけどどうも収まる気配がない。


瞬間、アマルフィが吹っ飛んできて俺の紅茶のティーカップを壊した。


「・・・」


ワナワナと震える。

何かが切れた音がした。

大きく息を吸い込み


「お前ら、いい加減にしろ!!!!」


まさか、俺からそんな大きなこれが出るとは思っていなかったのだろう、三人ともぎょっとした顔で俺を見た。


「よし、動きが止まったな!そのままでいろよ!」


まずエレンに近づいて


「あ、ああ?な、なにしようってんだよ!」


声を震わして俺に行ってきたが聞いてやらない


「黙ってろ!」

「ッ――――!!」

「ほら、右手出せ」


エレンは多分右手が悪い、アマルフィやグラムと喧嘩しているときに左手を軸に武器である槍を持っていた、最初は左利きなのかと思ったが右手を庇うしぐさや両手で槍を持った時に右手が踏ん張れていなかった。多分、力が入りずいた何かがあるんだろうな

しぐさを見る限り痛いタイプではないと考えてる、もし仮に痛いのであれば表情やからの反応でわかるからな


「いいか、これからいうことに素直に答えろ!」

「なんで俺がッ!」

「黙ってろ!俺が言うことだけ答えろ!」

「そんな、理不尽な・・・」


理不尽?馬鹿言うな、俺はまともに会話することなく勝手に周りが暴走して割りを食ったのは俺の方だ!多少の理不尽ぐらいあってもむしろおつりがくるレベルだ

それから、エレンに右手の状態について聞き出した。

結論からすると神経麻痺だった、神経麻痺と聞くと全く動かない印象があるがそうじゃないほうが多い、神経が完全に断裂してる場合は当然動かないが圧迫や一部の損傷だとしびれや動きにくさ、力の入りにくさなどがある、まさにその症状だ


どうも、スキルが発動しそうだ


「い、いったいそんなこと聞いてどうするんだよ!」

「—————これまで辛かっただろう、でも、もう大丈夫だ。これで元通りだ」

「はぁ!?何言って・・・う、腕が、治ってる!」


エレンは膝から崩れ落ちて涙を流していた。

背中をさすってやる、俺は別にエレンに対して腹は立たない、病気になった人っていうのは攻撃的になることもある、病気であることに不安や受け入れができていないからだ

今までできたことができなくなる、そのことを受け入れるにはエレンは若すぎた。いや、きっと誰も病気や怪我を受け入れるのに年齢は関係ないんだろう


「エレンもう大丈夫だ」

「ありがとう、俺、不安で!怪我してからこれからどうしようって、もうどうしていいか分からなく、前みたいにできなく、みんなにつらくあったって、でもみんな優しくて、お、おれっ!!」


エレンは泣いていた、半分も聞き取れない、でも俺はうん、うん、とうなずく。


「エレン、大丈夫、もう大丈夫だよ。これで元通りだ」

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