第26話 腹パン女
ガサガサ
音が聞こえる
「何の音だ」
目を開ける、そこには少なくても俺より大きい化け物、魔物がそこにいた
「グゥゥゥ」
すぐに襲ってこないところを見ると警戒してんのか、確か熊とかに会った時には背中を見せてはいけないと聞いたぞ
ゆっくり、ゆっくりだ、後ろに下がってここから逃げる
「あっ」
足元に何か引っかかった
尻餅をつき見上げるようにして魔物を見る
「はぁはぁ」
心拍数が上がり息ができない
もしかしてこのまま死ぬのか、何もなさずにセリアも探せずここでこの化け物に殺されるのか
「すまないねー、君大丈夫だったかい?」
あまりの場違いの声が聞こえたが全く耳に入らない、なぜならこのままじゃ死ぬからだ、膝が笑って力が入らない
「おーい、聞こえるかー」
「聞こえねーよ!」
「聞こえてるじゃないか!」
腹に一発パンチが入った。
「グフッ」
どうもこの腹パン女がさっきの化け物を倒してくれたらしい、確かに魔物は死んでいるもう、パニックで状況が見えてなかったそれは間違いない、だけどいきなり腹パンはないだろ
「ありがとう、といった方がいいですか」
「先に言っておけば私に敬語は不要だよ、それに礼も不要だから、この魔物逃がしたの私だしね。」
「あんたのせいかよ!」
迷惑この上ない、とどめを刺し忘れて魔物を逃がしたらしいだから出会った直後あの魔物は人間の俺をみて警戒していたということらしい
確かによく見ると手負いで怪我がない状態だと出会った瞬間に死んでいてもおかしくないような魔物らしい、あまりに恐ろしすぎる
「いやー大変だったね」
「あんたのせいだろ!」
「お兄さんいい反応してるね」
キャッキャッと笑う。どうも腹パン女と話すと口調が荒くなる、落ち着け俺、俺は精神年齢は三十歳なんだ、こんな子供にからかわれてどうする!大人の対応だ!
息を整えて笑顔を作り、患者と接するようにキャラクターを作り上げる。リハビリ職は役者のようなものだと俺の先輩が言っていた、もともとリハビリは医療職の中で患者と一対一で過ごす時間が長い、患者とのコミュニケーションを円滑にするために患者が求めるキャラクターを演じることがしばしばある、少なくても俺はそうやってきた、今こそその培ってきたスキルを出して大人の対応だ
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