第12話 魅せ方

さて、まず開業をするって言ってもいきなり店を構えるのはリスクがある。家賃とかの固定資金がかかるしなじみの無い文化だと行こうはしない、おそらく胡散臭いと思われて終わるだけだろうな


「となると、パフォーマンス含めて野外でやってみるか

セリアさんもう一度確認だが、本当に教会とかぶってないんだろうな?」

「ええ、私は教育は受けてないですけど回復スキルの範囲は知ってますよ、両親がやってましたからね

回復スキルでは病気や怪我を治すスキルなので疲れとかは治せないんです、だから大丈夫です!」


この国の病気の範囲が分からないのがここで困るところだな。例えば肩こりがあったとしよう、個人的に病気かどうかというのは日常生活に支障があるかどうかだと思う。同じ肩こりでも日常生活に支障がある場合は病名が付くかどうかは置いておいて病気と判断してもいいだろうし、逆に言えば肩こりでも日常生活に支障がなければ問題にならない

回復スキルの範囲は生活動作の向上・回復をメインであれば俺がやろうとしていることとかぶらない。俺は日常生活の質を高めるためってのが一応名目だからな

いわゆるADL(日常生活動作)ではなくQOL(生活の質)を高めるってことだな、肩こりの例に出せば生活には支障がないけど肩が痛い、それを治すと肩が楽になって生活しやすくなるってわけだ


「じゃあ、やってみるか」


俺たちは人通りが多い場所の一角に来ていた


「私たちは体に無理をさせすぎだ、そうは思いませんか?!ここにいる女の子は若くして両親を亡くし自分でお金を稼いで生活しなければなりませんでした。当然、こんな若い女の子でお金を稼ごうと思うと大変です、そんな彼女、怪我はなかったのですか肩が凝って腕が上がらないのです」


セリアさんには思いっきりサクラをやってもらってる、こんな演説、詐欺みたいだけど背に腹は代えられない!

反応は当然、街中でこんなことを言えば胡散臭がられる、が、足は止まった。

中には同情の目もある、なんかこの国人をさげすむことないけど憐れむ視線が多いな


「そんな彼女を見て私は、どうしても役に立ちたい!そう思ったのです

それで手をかざしてみました、するとどう出でしょ」


俺の言葉に合わせてセリアさんが肩を挙げる


「見てください、こんなに肩が上がりました。

あれ、信じてませんか?では、試しにそこのあなた、ええあなたですよ」


近くにいた買い物をしていた女性を指した


「え?私ですか?」

「ええ、そうですよ。まっすぐ立ってみてください、ああ、荷物は置いて」


ここからパフォーマンスの始まりだ

現役の理学療法士で普通に勉強してて見せ方を知っていれば誰でもできるもの一つ。


「あなたもしかして右利きですか?」

「ええ、そうですけど」

「やはり、そうでしたか。左に比べて右肩が少し下がってますね、右肩凝ったりしてませんか?」

「そうですけど、どうしてわかったんですか」

「プロですから、見ればわかりますよ」


ここまで当然、相手には触れてない。まあ、正直ここまで大したこと言ってないんだけどすごいことを言っているように見せるのも魅せ方の一つだ


「ちなみに肩が痛くて腕が上がらないことあります?」

「自分じゃわからないですね」

「では、両手を挙げてみてください」


お、案の定右肩が左肩に比べて上がらなかった、ここまでくればもう成功したもんだな


「左手が右手に比べて上がってませんね」

「ほんとだ、でもこれ以上上がらないんです!」


最終的に左肩は耳の横まで上がっていたのに対して右肩は肩より少し上までしか上がっていない


「ええ、大丈夫ですよ。もしかしてですけど高いものとかとるの左手が多くないですか?」

「言われてみるとそうかも」

「その右肩治るって言ったら治したいですか?」

「【ヒール】なんて高額な寄付私できませんよ」

「もちろん、分かっていますとも。そもそも【ヒール】は怪我を治すものでしょ?」

「そ、そうですけど」


そういって俺はそっと触れる。

本来はここで評価してストレッチや関節運動とかの治療して見せるんだけど、今の俺には便利スキルがある、正直スキルのほうが見栄えはいいからな、有効活用しないとな


そうして、触れた瞬間にスキルが発動したのが分かる、問診みたいなのでも行けるかどうか不安だったけど何とかなったな


「どうですか?」

「え、あれ!肩が軽くなってる気がする」

「そうですか、ではもう一度腕を挙げてみてください」


そうして、両肩が耳の横まで上がった


「挙がる!挙がります!すごい!嘘みたい、なんでできたんですか」

「それはプロだからですよ、いかがです皆さん!私には皆さんが生活に困っていることを治すことができます。

諦めてませんか?年だからと、肩こりは仕方ないのだと、我慢してませんか?膝の痛みを、気持ちよくに歩いてみましょうよ!

私には【ヒール】のような大それた力はありませんが、ですが私には皆さんの生活をよくする手伝いができます、嘘だと思いますか?なら、今回協力してくださった女性に聞くといいです。

どうですか、試しに一度やってみませんか?もちろん、今日限り、この場にいた人は無料で治療させてもらいます!」

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