第13話 輝く【リハビリ】スキル
まさか、あの演説の後歓声が起きて長蛇の列になるとは思わなかった。
これにはスキルにほんと助けられた、実際にスキルなしであの数の人を捌こうと思ったら朝から晩までかかるレベルだったけど、スキルなら一人当たりものの一分で解決できるのがすごい
「お疲れ様でした」
「ああ、セリアさんも手伝ってくれてありがとう」
「いえ私は列の整理とかしただけですから」
セリアさんはあのパフォーマンス後には受付、誘導など治療以外のことすべて手伝ってもらった
「それにしても、初日は儲けがないと考えてましたけどお金、手に入りましたね」
「ああ、それに関しては俺もうれしい誤算だな」
治療した人の中にはどうしてもお礼がしたいとお金を渡してくれた人もいた。
どんな人がいたかというと、最初の人みたいに肩が上がらない程度の人もいれば、膝が悪くて歩くたびに激痛が走ってもう座って生活するような人がきたり、その人は複数人に抱えられてきたけど
あとは筋肉痛のひとや寝違えた人、高齢者だと腰の骨が曲がってる人、いわゆる円背と呼ばれる姿勢の人なんかもいてさすがに治せないかと思ったけど普通にスキルが発動して治療してる俺も驚いた
「でも、本当に加賀さんのスキルはすごいですね」
「それは俺も驚いてる、正直セリアさんのスキルに比べて俺のはポンコツなのかと思ったけどそんなことなかったな」
「私のスキルなんて森意外だと使えませんよ」
「でも、俺たちの旅には必須だろ?」
そうして俺たちは笑った。
何せ初日から大成功だったんだ、これが笑顔にならない理由がない。人から感謝され、恩としてお金がもらえた。もちろん、みんなからもらえたわけじゃないし、今日のところは儲ける気がなかったのであてにはしてなかったけどそれでももらえるのはうれしい。
明日からは格安でやるつもりだ、回転率がいいし少額でも結構な儲けになる
「本当に明日からその値段でやるんですか?」
俺が値段設定したのは一食分と同じ値段だ、ちなみに【ヒール】は一年分の食事代の値段らしい
「回転率はやいしそれなりに設けると思うし、それにきれいごとかもしれないがこの街の人に少しでも多く治療して生活を豊かにしてほしいんだ。俺はそのためにこの仕事に就いたんだからな」
「?仕事って今日からじゃないですか」
「そうだな」
そう笑って俺は返した。
俺たちは陽気にご飯を食べて宿に戻った
宿に来た俺たちだが
「セリアさん、部屋が一つというのはどうして」
「お金もったいないので」
「お金より大切なものがあるんじゃなかろうか」
この世界の女の子は危機感というか貞操観念というのが低いのか?とはいえお金がないのも事実か
「お金を使わないようにするというのは分かったけど、セリアさんはいいの?来たときはお金なかったけど今日臨時収入あったしそれ使ってもいいけど」
「加賀さん、私に何かするんですか?」
そういって、セリアさんは自分の体を抱きしめるようにしてこっちを見てくる
「しないけど!しないけれどだよ!」
「それに、もうかれこれ旅をしてきた仲じゃないですか。今更気にしませんよ、加賀さんが悪さしようとしたなら私に見る目がなかったということで、対価は高いですけど勉強させてもらったと思いますよ」
いや、俺にこれっぽちも下心はないけどそんな風に言われると普通に何か起こそうなんて思わないわな
それに俺精神年齢は一応30だし、セリアさん16歳でしょ、うん普通に犯罪だよ倫理観的にアウトだな
「じゃ、気にせず休ましてもらうわ」
「はい、ではおやすみなさい」
全くしっかりしてるというか、肝が据わってるというか。俺が気にしすぎなのかな
―翌日―
さて、今日からが本番だ。SNSもテレビ、ラジオもない中で口コミが一番の宣伝になる、初期投資として昨日無料でやってみたからできれば効果があってほしいところだけど
「セリアさん、起きて」
ちなみにセリアさんは朝が弱い。しっかりしているのに朝が弱点なんて年相応だよな
「おばあちゃん・・・」
そういったセリアさんの目には涙があった。
「何が年相応だよ」
16歳にして天涯孤独の身になったんだ、頼れる大人もいない、当然守ってくれる人もいない、しかも家族はみんな教会に殺されてる
そんな子の心理状態はギリギリに決まってる、でも俺に気を遣っていつも元気に振る舞って俺は自分のことばっかりか
これじゃ大人が聞いてあきれるな
本人もベッドで寝たいって言ってたしもう少し寝かせておいてあげよう、まあ、俺一人でも大丈夫だろ、普段の仕事こなすようなもんだからな
「よし、じゃあ行くか」
「どこに行くんですか?私を置いて」
そういって目をこすりながら俺をにらんでいるセリアさんがいた
「おはよう、セリアさん」
「おはようございます。それで私を置いてどこに行こうとしたんですか」
「ぐっすり寝ているので先に向かおうかなと」
そういうとセリアさんが悲しそうな顔をして
「もし、私に気を使っているのであればやめてください、私を一人にしないでください!おばあちゃんも両親もいない、私には加賀さんしかいないんです!置いていかないでください!」
なんとも、ここまでとった行動が裏目にでるのもなかなかないな・・・俺が思っている以上に彼女の中での俺の存在はしっかりとしたものだったんだな
「セリアさん」
「す、すみません、取り乱しました」
「何か怖い夢でもみましたか?」
「・・・おばあちゃんの夢を見ました。おばあちゃんが私を置いて行って先に進んでいくのに私は追いかけても追いつけない、そんな夢でした」
「それで起きたときに俺の言葉が聞こえたのか」
「はい、すごく不安になって取り乱してしまいました」
「そっか、誤解させてごめんな、そんな意図はなかったんだ。」
「分かってます、朝が弱い私に加賀さんが気を使っていたんですよね」
すいません、とセリアさんは言った。
「俺はここのこと何も知らないんだ」
え?とセリアさんが俺を見上げる
「国も文化も、お金も何もかも知らないんだ、そんなときセリアさんが助けてくれたんだ、俺にとっては命の恩人といってもいいぐらいなんだ、その恩人が一人にしないでというならもう絶対にしないよ、約束だ」
「それってもしかして・・・」
「これで安心するかな?」
「はい!約束ですよ!」
あれ、これなんかプロポーズみたいな・・・まあいいか、どうせセリアさんなら誤解することないだろうし一緒にいてほしいって、家族の代わり的なことだと思うからな
セリアさんの心も落ち着いたみたいだし問題解決だな
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