第82話 貴族さん、追い詰められる

「ふざけるなァッッ!!」


 明け方の領主城にヒステリックな怒号が轟く。やや裏返ったその声には、執務室の前を通りがかったメイドが思わず足を止めてしまうほど感情的な響きがあった。

 

「私は減税の件を却下してこいと命じたんだ! それが、食料支援だと!? 出来損ないの分際で余計な真似をしてるんじゃない!!」


「────繰り返しになりますが、それとこれとは話が別です」


 本来なら、朝食の準備に追われる使用人を除く誰もが寝静まっているべき時間帯。部屋の中には二人の青年貴族と、それぞれの従者が睨み合うように相対している。


「こちらの報告書はお読みにならなかったのですか? ボレロ卿は嘆願の取り下げに応じられました。アンギラの危機をうれい、ナバルだけが我儘を言うつもりはないと」


 床に撒き散らされた書類を一枚一枚拾いながら、レナルドは毅然とした態度で立ち向かう。これまでのオドオドした雰囲気から一変、兄の目をまっすぐに見据えて。


「しかしながら、ジェイド兄様。今回の島亀アスピドケロンがそうであるように、代官の力量ではどうにもならない事態があります。そんな窮地を救うことこそ、彼らを率いる主家の責務ではないでしょうか」


「言うにことかいて"主家の責務"だと? はっ、笑わせる! 雑用ばかりしてきたお前に大局が見えているとでも!?」


 口を挟む余地のない喧嘩腰の討論。室内の空気が重みを持っていて、四方から圧し縮まってくるような息苦しさがある。そんな中でもラウルはあるじを勇気づけるため、半歩後ろからレナルドの背中にそっと手を当て支えていた。対して、ジェイドの側近は難しい顔で押し黙ったまま、唇を噛んだり、腕組みをして天井を見上げてたりしているだけだ。


「現地の声を聞いたから見える局面もあります。ナバルは単なる海路の中継地点ではなく、漁獲量も領内随一。もし水夫や漁民がよその町へ逃げ出しでもすれば、失った損害は二度と取り戻せないのですよ? 事実、冒険者たちの流出はもう始まっている様子でした」


「馬鹿が! そんなものは移住を禁止すれば済む話だ!!」


「帝国の恐怖政治にならうおつもりですか? 移住制限は領主自治権の範囲外でしょう。圧政に繋がりかねないと、王国法で明確に禁じられているはずです」


「………………っ!」


 筋の通った正論をぶつけられ、ぐっと形勢が傾く。レナルドの指摘に狼狽うろたえたことを誤魔化したかったのか、ジェイドは執務机に強く拳を叩きつけた。


「そもそもッ!! 私の了解を得ず勝手な提案をしたこと自体が問題行動だと言っているんだ! いつ誰がお前にそんな権限を与えた!」


「ジェイド兄様はナバルへ赴くようお命じになりました。僕は父様に代わり、必要な判断をしたまでです」


 レナルドがそう言った瞬間。ふいに会話が途切れ、奇妙な間が空いた。二人は向かい合ったまま、しばらく互いの顔を凝視する。

 

「…………なるほど。よくできた言い訳だな」


 苦々しげな表情でドサリと椅子の背に身体を預け、尊大に足を組む。一見ふんぞり返るような姿勢だが、ジェイドはやや驚いた様子だった。弟の発した、そのいかにも貴族らしい詭弁こじつけに。


 交渉事では口を滑らした方の負け。言わずもがな、これが権門勢家けんもんせいか常識しきたりだ。相手に言質げんちを取られるな。その場しのぎで安請け合いはするな。証文なしに契約を交わすな。慎重に言葉を選び、常に警戒して発言せよ──────……

 殴られそうになったら咄嗟に身構えるのに近い、反射的な心の動き。油断ならない敵と認めた、あるいは、臨戦態勢に入ったと言うべきだろうか。幼い頃から叩き込まれたそれらの教養が、二人の間にある空気を急速に冷やしたようだった。


 腹の読み合い探り合い。ある種の飛躍ひやくや言外の意味を推し量り、含みのある表現を咀嚼そしゃくするために生まれた数秒。先ほどの沈黙はまさしく、貴族特有の駆け引きだったから。


「その屁理屈、ナバルからの帰路で一生懸命考えたのか? それとも、身の程知らずの誰かに入れ知恵でもされたか」


 ギロリと、矛先がラウルに向く。

 が、レナルドはその身で視線を遮るように忠臣の前へ出た。


「僕が、そう判断したと申し上げております!」


「なあ、弟よ。ここには口やかましい父上も、クソ真面目なトーマスもいないんだ。お前の本音を聞かせてくれ」


 慈愛をこめた柔らかい眼差し。ジェイドは突然態度を軟化させ、猫なで声で理解ある兄を演じ始める。人を手懐け、飼い馴らす。懐柔を誘うその微笑みは実に堂に入っていて、しっくりと彼自身に馴染んでいた。


「どうしてあんな片田舎の港町に肩入れする? だって、不思議じゃないか。この歳までダラダラ穀潰しをやってたお前が、急にやる気を出すなんて。あの蜥蜴人リザードマンに金でも握らされたのか?」


「この支援策はナバルに限定した応急処置ではありません。アンギラ全土の困窮地域を対象として、新たにご提案させていただく永続的な公共事業です。もちろん父様のご意向を伺ってから、、お話しようと思っておりました」


 レナルドは日程の部分を強調しつつ、丁寧ながらも鋭い声で言い放つ。

 誰が聞いても分かるくらいに、非難を含んだ語勢でもって。


「ジェイド兄様。本当に今、この件について議論する必要があるのでしょうか。領主代行として、他に優先すべきことがおありでは?」

 

 兄を見つめる弟の瞳には、はっきりと怒りの色が浮かんでいた。

 いや、レナルドよりむしろ、横に並び立つラウルの方が凄まじい。隠しきれない苛立ちがにじみ出ているのか、ギリギリと歯を食いしばり、ひたすらに平静を装う憤怒の表情。口出しする立場にないという騎士の分別から生じたその忍耐は、かえって大きな迫力となり、そのまま顔に表れていた。ジェイドの側近が直視を避け、ずっと天井を眺めていなければならないほどに。


 二人がここまでいきどおっている理由。

 それは、当主宛に書いた提案書てがみを盗み見されたことでも、積み重なった恨み辛みが爆発した結果でもない。大量発生スタンピードという危機的状況の中、最も尽力すべき領主代行がを耳にしていたからだった。



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 遡ること、およそ一時間半。

 レナルドたちは例によって何も指示を受けていなかったが、せめて地下避難所の慰問に出向こうと私室で準備を進めていた。そこへ、一人の使用人から密告があったのだ。


 いわく、戦地から指示を求める伝令が列をなしているのに、誰も対応してくれないと。長々と待ちぼうけを食らった冒険者たちが怒り狂い、自分たちだけでは収拾できない状態になりつつあると。催促にたまりかね、泣きつくような告発だった。


 見習いとピナに対処を任せ、レナルドはラウルを伴い兄のもとへ。

 真意を問うため、慌てる側近の静止を振り切り執務室に乗り込んだ。


 ところが──────……


 大量発生の件を口にした途端、ジェイドはいきなり激高し、まるで関係のない支援策についてわめき始めた。独断専行だの、賄賂わいろをもらっただの、一方的にまくしたて、話題を戻す隙を与えない。


 ただ、レナルドにとってその鼻息の荒さは『都合が悪いから聞くな』と告げられているに等しかった。棘のある会話ばかりしてきた兄弟だからこそ分かる。ちょっとした足の置き方や、椅子のもたれ方。物を投げたり、机を叩いたり。これは兄が言い逃れや責任転嫁を考えているときの癖だ。あれやこれやといくつも理由を張り付けているが、野菜の皮を剥くように一枚一枚引っぺがしていけば、最後に残るのは保身だけ。いつだってそうだったから。


 となれば当然、関心は別のところへ移行する。ジェイドが見せまいと必死に隠している部分。そこに、があるはずだと。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



「ジェイド兄様。本当に今、この件について議論する必要があるのでしょうか。領主代行として、他に優先すべきことがおありでは?」 


「何を優先するかは、私がっ、領主代行が決めるんだ! お前にそこまで干渉される筋合いはない!!」


 疑っているぞと言わんばかりの詰問口調に、せっかく落ち着いていた神経がたちまち張り裂けそうになる。しつこく責め逆らってくる末弟から心理的に追い詰められ、ジェイドはとうに自制心を失ってしまっていた。


「しかし、兄様。事は急を要しま──────」


「黙れ黙れ黙れッッ!! お前は聞かれたことにだけ答えていればいいんだ! 話を逸らすな!」


 何かを投げつけたい衝動に駆られたが、適当なものがないので仕方なく言葉をぶつける。ぱっと思いついた単語をかき集めるようにして。貴族に求められる思慮深い会話からかけ離れている自覚はあるが、もう、自分で自分の気持ちの振り幅についていけない。


 返り討ちだ…………。私は今、レナルドに返り討ちにされかけている。


 こう考えると、たまらなく忌々いまいましかった。顔を見るだけでむかむかした。胸の奥底にある熱くて濃い液体が、ぼこぼこと音を立てて膨らんでいく。


 取り澄ました物腰と噛みつくような追求。何があったのかは知らないが、ナバルから戻った弟はまるで別人だった。人の顔色ばかり気にして、何事にも欲望を見せず、自分で判断することを放棄し、怒鳴られれば萎縮いしゅくする。子供の頃からずっと、ずっとそうなるようしつけてきたのに。いつの日か邪魔にならないよう。毛ほども当主の座に興味を示さなくなるよう。何度も何度も自尊心を踏みにじり、徹底的に痛めつけてやったはずなのに。


 わずらわしい。わずらわしい。わずらわしい。


 行き場のない悔しさが全身を押し包んでくるのが分かり、ふたたび机を殴りつける。ティーカップに残った紅茶が浮き上がってこぼれるほどの強さで。それでも一向に気は晴れなかった。焦燥と、緊張と、屈辱と、不安と、恐怖と…………喜怒哀楽のどれか一つでは言い表せない感情が合併症を引き起こし、心の中をめちゃめちゃに荒らし回っている。


 ジェイドはレナルドが乗り込んでくるまで、北の戦争も、大量発生スタンピードも、自分の身を焼かれる心配のない火事場見物の立ち位置から見ていた。城内の兵や街の民衆が右往左往する様を楽しむ、野次馬の一人として。しかし、このままでは当事者にされてしまう。とても無関係ではいられなくなる。


 こいつ一体、何をどこまで知っている…………!?


 不審の眉を寄せる弟の顔を睨みながら、頭脳をありったけ回転させる。いまだ核心を突く発言はないものの、この臆病者がここまで威勢よく詰め寄ってくるなら、確実にそれなりの根拠を持っているはず。問題は、自分が命取りになるような秘密をいくつも────いちいち数えるのも面倒になるくらい抱えすぎていて、どれを掴まれたのかが全く予想できないという点だ。


 横領の件か。密輸の件か。水増し徴税の件か。

 北部砦の警備情報を流し、帝国軍を手引したことか。

 戦地で父上を後ろから刺せと、トーマスに命じてあることか。

 当主の座を簒奪さんだつしたあと、一時的に亡命するつもりでいることか。


 無数の可能性が次から次へと脳裏に浮かび、一気に冷や汗が吹き出す。濡れたシャツが背中や首元にへばりつき、鬱陶しいことこの上ない。苛立ちで胃が焼けてしまいそうだ。


 情報が漏れたとすれば、ナバルへの道中、ガレナ荒野で撃退されたクズどもからに違いない。まさか老いぼれ騎士に十人もの刺客を退しりぞけられるとは思わず、かなり近しい者に手配をさせてしまった。全員あっさり死んでくれていればいいが、訓練すら受けていないような盗賊崩れの犯罪奴隷だ。厳しく尋問された場合、あることないこと喋りまくり、回り回って自分の名前にたどり着くことも十分にあり得る。


 レナルドに対する暗殺計画が露見しただけか…………?


 その程度なら、まだ取り返しはつく。人はそう簡単に変われない。涙を流し、謝罪する演技フリでもしてやれば、少なくともこの場は逃れられるだろう。こんな出来損ない、態勢さえ整え直せばいつだって始末できる。護衛が離れた隙を狙ってもいいし、なんなら、こいつが大切にしているメイドを買収して毒殺させたっていい。


 むしろ、厄介なのは横にいる古狸ふるだぬきの方だ。救国の英雄、バレステロス。この骨董品は前線を離れて十年以上経つくせに、依然やたらと顔が広い。貴族社会の表と裏に精通し、王都近辺に限定すれば、知名度は父上すら凌駕する。国王が演説でその名を引用したこともあるくらいだ。中央政府の高官どころか、王族に伝手を持っていたとしてもなんら驚きはない。


「兄様、黙っていては分かりません。どうかご説明を」


「…………………………」


 これ以上の時間稼ぎは難しそうだと、ジェイドは片手で前髪を鷲掴みにするようにして頭を抱えた。前にも進めないし、後ろにも下がれない。会話の中で探りを入れようにも、単なるこちらの思い違いであった場合、酷く面倒な立場に置かれる。


 いや、大人しく断罪されるのを待つくらいなら────……いっそ、賭けに出てみるか。


 追い詰められた虚勢が、開き直った大胆さへと変わっていく。長年かけて綿密に立てた計画を達成直前で潰されてたまるかと。前向きな姿勢が好機チャンスを生み出すきっかけを作るのだと。諦める者に勝利はない。勝者は決して諦めない。これまでの悪行どりょくを無駄にしないためにも。


 暗かった心の中に一条の活路を得たような気がした。股ぐらの辺りがワクワクして、激しく脈打っているのを感じる。


 仮に王族まで情報が届いていたとすれば、完全にお手上げ。万事休すだ。どうあがいても絞首台へ向かう道しかない。そう結論づける一方、頭の片隅にはまだ一縷いちるの望みが残されていた。この二人が底抜けの大間抜けで、入手した秘密を秘密のまま、誰にも伝えずこの場にいるという極小の可能性。何が何でも当主になってやるという夢が、いつか必ず王座に座ってやるという野望が、僅かな希望にすがりつきたくなる気持ちをどうしようもなく強くする。


 小さな咳払いを一つ。ジェイドは静かに机の引き出しを開け、官杖バトンを取り出す。合図に気づいた側近は目を剥き、ふるふると素早く首を横に振った。『自殺行為だ!』と、今にも叫び出しそうな焦り顔で。


 …………役立たずめ。堕ちた英雄ごときの威圧に怖気づいたか。


 机の下で杖を構え、ゆっくりと魔力を練り込んでいく。魔術を使えない者に察知されることはないだろうが、用心深く、念には念を入れて。


 次だ。次にもう一度老いぼれがまばたきをしたら、その瞬間に最大火力をお見舞いしてやる。官杖の発動速度であれば反応できたとしても無傷では済まない。本命はバレステロスだが、標的はレナルド。騎士という連中は必ず主を守るために動く。邪魔な番犬を先に片付けて、そこからは憂さ晴らし、おたのしみの時間だ。私に逆らったことをあの世で後悔ような、極上の苦痛を味わわせ、なぶり殺しにして────────


「ジェイド様!! ジェイド様、ご在室でしょうか!? 衛兵より急報です!!」


 ドア越しの呼び声にハッと意識を取り戻す。極限まで集中するあまり、ノックの音にも気づかなかったらしい。周囲の状況に目を走らせると、あろうことか、側近が足早にドアへ向かっていた。自分の主から許可も取らず、まるで前触れなくやってきた助け舟へ駆け寄るように。制止する間もなく従士が部屋に転がり込んでくる。


「お取り込み中申し訳ございません! 北区住宅街に吸血鬼が侵入しました!!」


 息を切らせた若い従士は取り乱した口調でそう報告した。

 何の因果か、踏んだり蹴ったり、不運続きにもほどがある。何か一つがうまくいかないと、何もかもが連鎖的に悪い方向へ流れていくという典型的な一日だ。


「次から次へと……ッ! 状況は!?」


「警邏任務にあたっていた二部隊によって、すでに包囲は完了しております! た、ただ…………」


 思わず出た大きな舌打ちでこちらの不機嫌を察したのか、従士は急に口ごもり、言いかけた言葉を飲み込んだ。膝をついたまま視線を泳がせ、言おうかどうかを迷っているように見える。


「ただ、何だ!? 報告もまともにできんのか貴様!」


「失礼しましたっ! ぼ、冒険者とおぼしき男が討伐を妨害しているとのこと! それにより、現場が混乱しております!」


 想定外の内容に、報告の意味を図りかねる。色々なことが立て続けに起きすぎていて、もう訳が分からない。


「冒険者が邪魔を……? 何だその馬鹿は!? 二部隊もいてなぜ制圧できない!?」


「素性は現在冒険者ギルドへ照会中! 風変わりな黒髪黒目の外見からして特定は早いと思われます! 道理の通らない外国人らしく、説得が難航している模様!」


「流民による執行権の妨害は重罪だろうが! 説得などする暇があったら、さっさと殺してしま────」


「その男の身なりについて詳細を!!」


 窓ガラスが割れるのではと思うくらいの甲高い声が、ジェイドの言葉を途中で奪う。レナルドは突如として血相を変え、掴みかからんばかりの勢いで従士に詰め寄った。気取った仮面をすっかり脱ぎ捨て、見るからに切羽詰まった表情。年齢、種族、服装、武器。あれこれ問いただす調子にも、酷く差し迫った雰囲気がある。


「僕が向かいます! 案内してくださいっ!!」


 何やらバレステロスと意味ありげな視線を交わしたかと思えば、二人は急き立てられるような速さで部屋を飛び出していった。事情を説明するどころか、こちらに一瞥いちべつもくれることなく。


「「…………………………」」


 急に静かになった執務室には、ポカンとした顔のジェイドと側近だけが残された。何がなんだか分からないが────これは、助かったと考えるべきなのだろうか。


「あ、あの……。ジェイド様? 先ほどは申し訳ありませんでした。じ、実は、私の杖に不具合が起きてしまったようでして────」


 沈黙が気まずくなったのか、側近が会談中の振る舞いについてしどろもどろの弁解を始める。しかし、ジェイドはあやふやな相槌を打ち、その自己弁護を右から左へ聞き流していた。捨てることに決めた味方よりも、敵の言動の方に興味があって。


 あの慌て方は誰がどう見ても異常だ。レナルドだけならまだしも、バレステロスまで動揺していた。発端は明らかに従士が口にした報告内容。吸血鬼ではなく、冒険者に関する部分に反応していたように思う。


「他国出身の冒険者…………?」


 頭のどこかに似たような単語が引っかかっている。なかなか思い出せないが、そう古い記憶ではない。つい最近見聞きした何かだ。


 頬杖をついて考え込むジェイドのかたわらには、レナルドが拾って整頓した報告書の束が置かれていた。




﹏﹏﹏﹏﹏﹏﹏﹏﹏﹏﹏﹏﹏﹏﹏﹏﹏﹏﹏﹏


すみません、また長くなったので二話に分けます!!



 

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